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カラーリングデザイナー、アルド・ドルディへのインタビュー

設計ではなく、色柄の方のデザイナー、アルド・ドルディ。初めて聞く名前なんですが、彼のデザインは誰もが見たことあるはず。普段は陽の当たらない仕事ですがCycle Worldがインタビューをしていますので訳出。
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あなたもきっと彼の作品を見たことがあるだろう。しかも何十年も前からの話だ。世界中のサーキットですばらしいバトルが繰り広げられている。その思い出と共に彼の作品は我々の脳裏に刻み込まれている。彼はライダーと同じように伝説となっている。でも彼の腰は驚くほど低い。彼は威厳に満ちあふれ、しかも魅力的だ。考え深く、クリエイティブで、働き者。そしてレースに華を添える仕事をしている。ライダーをヘルメットやつなぎで見分けるとき、裏にはかなりの確率でアルド・ドルディがいる。

1990年にレース界で大胆な色使いが流行ったが、これはドルディが始めたことだ。彼の親友で彼の作品を使っていた1993年500ccチャンピオンのケヴィン・シュワンツはドルディに初めて会ったときのことを思い出してこう言う。「彼のデザインはちょっと違っていたね」。ドルディノ自作のTシャツは実にクールだった。そしてシュワンツは思ったという。「でもそれを着るかどうかは別問題だったね」。二人は一緒に作品を作り始める前から友人になったのだ。

ドルディはシュワンツにヴァレンティーノ・ロッシを紹介した本人でもある。シュワンツは語る。「彼はあの子供のところに僕を連れて行って、『この子は偉大なレーサーになるよ』って言ったんだ」。ロッシは当時ポケバイでレースをしており、シュワンツのレプリカヘルメットを被っていた。それから年々も経つが、ドルディは相変わらずレースと友人と地元と海を愛している。

1.レースとデザインのどっちが先なんですか?
「レースですよ。それからデザインを始めたんです。当時はこれほどまでにデザインの仕事が自分にとって大事になるなんて思ってもいませんでした。レースがしたかったんですけど、うちはレースバイクを買えなくて、高かったですからね、だからレースはできなかったんです。だからレース体験はウェットバイクだけですね。ウェットバイクってのはジェットスキーの前の時代にあったスズキのエンジンのやつです。すごくたのしかったですよ。あれは本当に水の上のバイクですね。
 でも本当のことを言うとレースへの情熱とデザインへの情熱の両方を持ち続けていたんです。小さい頃に父がリッチョーネとかリミニとかにレースを観に連れて行ってくれました。マイク・ヘイルウッドやジャコモ・アゴスチーニやレンツォ・パソリーニが走るのを観たこともあります。幼かった頃ですね。その頃から夜はうちで絵を描いていました。まあこどもならみんなやることですが。で、その二つが一緒になったんです」

2.AGV/ダイネーゼで働き始めたのはいつからですか?
「もう何年も経ちますね。正直に告白すると、大会社で私を信じてくれたのはAGV/ダイネーゼが最初なんです。まだ二十歳を過ぎたばかりの若造で、その頃カットリカ出身でダイネーゼを着ていたライダーにデザインを送ったんです。そしたら理の・ダイネーゼの目に留まって、彼が作者が誰か聞いてくれたんです。で秘書から私に電話がきて、最初はボローニャのモーターショーで彼に会いました。その後モルヴェナでも彼に会って、それから一緒に働き始めたんです。
 リノやダイネーゼの人たちには本当にいろんなことを教わりました、かわりに、僕は若かったんでいろんな新しいアイディアをレースに持ち込みました。そういう情報交換は本当に大事なことでしたね」

3.デザインするときにヒントになるようなことはありますか?
「今でも、まあ昔からですがレース自体がヒントですね。あと世界選手権のライダーとの交流からもアイディアを思いつきます。私たちがしている仕事はチームカラーやスポンサーと切っても切れない関係にあります。それから、ライダーにはそれぞれ自分のイメージとかカラーがあって、そういうのも考慮しなければなりません。最終的なデザインはそういった諸々を総合してできるものなんです。
 レースは一番大事なことですが、バイクへの情熱も大事ですね。私はエンデューロをやったり、自分のバイクで旅に出たり、サーキットを走ったりします、知らないライダーがヘルメットに面白い絵を描いていたり、そのライダーのバイクのカスタムっぷりからヒントを得ることもあります。あとデザイナーというものは常に周りの世界に目を配っていることもだじですね。いい仕事がしたければ常に次のステップのことを考えなければなりません。進化のステップを上がっていかなければ遅れをとることになるのです」

4.どうして派手な色を使うんですか?
「レース界に入った時はまだ色使いということに気が遣われていませんでした。それでいろんな色を使うことにしたんです。そしたらみんなもたくさん色を使うようになったんで、私はデザインをもっとシンプルなものにするようになったんです。70年代みたいにね。あの頃は誰が乗っているのか一目でわかりました。で最近はそれ以上のことをしようとしているんです。シンプルな色分けで混乱しないようにね。
 ここ何年もスターティンググリッドのライダーを見分けるのが難しい時代が続きました。いろんな色が使われすぎていたんです。今僕がライダーと仕事をするときには原色を使うようにしています。例えばヴァレンティーノは黄色、マルク・マルケスは赤、という具合にね。みんな自分が好きな色があるんですよ。もちろん原色は限られた色しかありませんから、同じようなデザインを作らないためには複数の色を使うことになりますが。
 ライダーは戦士です。そして昔、戦士というものは色使いとデザインで飾り立てていました。アメリカではインディアンがウォーペイントとかしてましたよね。人類の歴史で昔から続くことなんです。戦闘やレースの前には心臓がどきどきする。野蛮な行為ですからね。でもそこで色で飾ると恐れを克服して敵を恐れさせることができる。ヘルメットのカラーリングやデザインというのは、ちゃんとやろうとすると思ったより難しいことなんですよ」

5.実に美しい場所でご家族に囲まれて育ったわけですが、それは影響がありましたか?
「ものすごく影響していますね。私を形作った一番のものです。イタリアはルネッサンス発祥の地で、地中海世界の中心です。つまり文明、アート、音楽の中心ということです。ここまで質の高い芸術に囲まれていたのは本当に良かったと想いますね。イタリア美術の歴史は私の根本に流れています。いろんな画家の仕事も観てきました。レドナルド・ダ・ヴィンチはデザイナーの始祖ですし。
 ファンタジーに満ちあふれた土地で、文化には限界がありません。私はリッチョーネに住んでいるんですが、海が近くて、サーキットも近くに二つあります。ここではエンジンが伝統を作っているんです。フェラーリが150km先に、ドゥカティが100km先にあります。ここで生まれたライダーも、技術者もたくさんいます。でもイタリア史でもここがとりあげられることはありませんね、ローマ帝国からここを通ってヨーロッパに進出していったんですが。美術史やイタリア史にすごく貢献しているんですよ。

6.ご自分のことはアーティストとデザイナーのどちらだと思われます?それとも何か別の職業だと思ってらっしゃいますか?
「アーティストじゃないですね。商売を抜きにしたら大事な単語ですけども。世界の歴史を遡ってみても、私の考え出刃本当のアーティストというのは数人ですね。私は自分のことを職人だと思っています。アーティストとは違いますね。自分の仕事がわかっていて、バイクの世界が大好きです。確かにアートな要素はありますけど、アーティストというのは言い過ぎですね。ですから職人とかデザイナーとかの方がふさわしいと思います。もっと年取ったら絵を描いたり、とにかく何か制限なくやってみることになるかもしれませんが、そうしたら自分がアーティストかどうかわかるかもしれませんね」

7.ムジェロでヴァレンティーノロッシが使ったヘルメット(訳注:パスタ柄のやつ)のデザインの過程を教えていただけますか?
「いつもと同じですね。まずはヴァレンティーノがイタリアGPモードになるのを待つんです。たいてい前のレースが終わるまで待たなければならないんですが。レースで何が起こったかにもよりますね。何か普通でないことが起こったら、それがヒントになる。そういうことがなければ、その時点でのヴァレンティーノの気持ちを表現することになります。つまりGPウィーク中の気持ちですね。
 例えば今年はヴァレンティーノはもうベテランですよね。私の考え出刃彼の最高のシーズンなんですが。だってもう何年もやっていて、9回もタイトルを獲っているのに、まだ闘えて、次のレースに向けて新しいやり方にトライできる。自分よりはるかに若いライダーから吸収することができるんです。彼は他のライダーを尊敬しているし、一番若いライダーからでも何かを学ぼうとしている。若いライダーは新しいものを持ち込みますからね。これまでの年月でライディングスタイルを変え続け、しかも何か新しいものを吸収しようとしているライダーなんて彼だけですよ。
 ドゥカティで苦労したり、去年のマシンに適応しようとしていたりしたとき、みんな彼は終わったと思った。イタリアでは「ゆですぎ」とまで言われていたんです。だからムジェロのイタリアGPではイタリアを象徴するパスタを使ったんです。イタリアで、茹ですぎても柔らかくなりすぎない良いパスタに出会うと「Non scuoce mal」と言います。「絶対ゆですぎることはない」という意味です。そんな感じでヴァレンティーノもゆですぎではない、彼はまだできる。良いパスタみたいなものだということを言いたかったんです。
 最終決定は月曜か火曜にして、ムジェロの金曜の夜にはヘルメットはできていないといけない。金曜深夜にヴァレンティーノとウーチョと、あとヴァレンティーノと働く2人とAGVのペインターのマウリッツィオ・ヴィターニがヴァレンティーノのモーターホームに集まって仕上がりを確認します」

8.いつも裏方に徹していますが、それは意識してのことですか?
「ええ。私たちの仕事のすべてはライダー次第なんです。デザイナーがライダー以上の何かができるなんて間違った考えですよ。ヘルメットをデザインするのはデザイナーですが、それもライダーのためにやる仕事なんです。ライダーが気持ちよくレースで走るために仕事をしてるんです。私の仕事はライダーの下に位置するってことです。ヴァレンティーノとも、他の偉大なライダーとも友達関係で、他にもMotoGPに出られるといいと思っているライダーとも友達ですが、それはあくまでプライベートの話です。
 私はライダーのスポーツ人生と、人間としての人生の両方にかかわらせてもらっています。それはカメラの前に出るような仕事じゃないんです。MotoGPにかかわって働くということはライダーを一番に立てるということなんです。MotoGP以外でも仕事はしていて、今は新型バイクのプロジェクトにかかわっています。自分が責任者なんですよ。この仕事に関してはスポットライトを浴びるのもやぶさかじゃないですけど、自分が重要な仕事をしたからこそですね。誰もが人生で15分間だけ有名になれる、っていう言葉(訳注:byアンディ・ウォーホール)がありますけど、そういうのには興味がないですね。仕事をする方が性に合ってます」

9.次のステップはなんですか?プロジェクトの完遂ですか?それとも長期的な目標があるんですか?
「近い話をすれば、さっき言った通り新型バイクのプロジェクトがあります。11月のミラノショーではお披露目したいと思っていますよ。長期的な話では、毎年違うバイクをやりたいですね。今かかわっているのはパワフルな1000cc超えのビッグバイクなんですけど、来年はもっと使い易い、街乗り用の、例えばスクーターなんかがやりたいと思ってます。
 夢を形にする仕事ができるのはうれしいことですね。今年はMotoGPで5チームと仕事をしています。他のクラスでも、それからワールドスーパーバイクでも多くのライダーをサポートしています。それでライダーの服やグッズのデザインもする。これは毎年続く仕事ですけど、毎年変わるしごとでもある。ルーティンワークじゃ全然ないんです」

10.仕事をしていないときには何をいちばんしたいですか?
「旅行ですね。で生まれた場所、海の近くに帰ってくるのが楽しいんです」
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1週間であのヘルメットを作っちゃうんですねえ。すごいすごい。しかしこの腰の低さはなに!

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