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オピニオン記事:歴史は繰り返すーエナジードリンクはタバコ問題の再現

しばらく前に宣言したので訳します。ちなみにこれをネタに「私はどうやって翻訳してるのか:パート2」もやろうかと思ってますが、先に訳しちゃえ。というわけでMotomatters.comより。
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カタルニアGPの正式名称は「モンスターエナジー・カタルニア・グランプリ」である。その名の通り冠スポンサーのモンスターエナジーはここで「ザ・ドクター」というヴァレンティーノ・ロッシをフィーチャーした新製品を発表する。MotoGPが開催される週末ではお馴染みの光景だ。ほとんどすべてのレースで新製品が発表される。チームにちなんだものもあればレースにちなんだものもあるし、メーカーにちなんだものもある。それがなんであれ、モンスターエナジーの今回の発表はいつもとはちょっと違うもになるだろう。なにしろマーケティングには強力な味方となるヴァレンティーノ・ロッシがプロモーションに加わるのである。エナジードリンク業界は今ではバイクレース界の屋台骨となっているということだ。

しかしこれは同時にバイクレースが根本的な問題を抱えることにもなる。エナジードリンク業界は徐々にタバコ業界と同じ地位を占めるようになっており、チームやライダー、そしてレース自体に資金を提供しているのだ。レース界を支えていると言ってもいいだろう。レッドブルはMotoGPで3レースの冠スポンサーとなっており、Moto3チームを抱え、さらにMotoGPやワールドスーパーバイクで何人ものライダーに資金を提供している。モンスターエナジーは2レースの冠スポンサーであり、MotoGPクラスではテック3のメインスポンサーでもある。さらにワークスヤマハの主要スポンサーのひとつでもあり、やはりMotoGPやWSBKで多くのライダーを支えている。他にもたくさんのエナジードリンクメーカーが参入している。グレシーニには奇妙な名前のGo & Funがついているし、ドライブM7はアスパーに、ロックスターはスペイン人ライダーについている。強大なバーンもいれば、他にも数え切れないほどのメーカーがいるのだ。

その何が問題なのだろうか?エナジードリンクは、かつてのタバコメーカーと同様に販売・マーケティングを減らすよう、容赦ない圧力にさらされているのだ。フランスでは既に2008年からレッドブル(不思議なことにレッドブルだけなのだが)の販売は禁止されている。18歳以下へのエナジードリンクの販売はリトアニアでは禁止されている。アメリカ医師会は未成年に対する広告を禁止を要請している。これは米国上院議会の商業・科学・運輸委員会で業界トップの面々が証人として召致されたのを受けてのことだ。

好むと好まざるとにかかわらず、ついでに言えばそれが正しいか間違っているかにかかわらず、近い将来エナジードリンクの販促活動はバイク業界でも一定の層を対象とするだけのものとなるだろう。現時点では完全に禁止とはならないだろうが、18歳以下へのマーケティングは禁止されることになるものと思われる。そしてこれはモータースポーツ全般に影響を及ぼすだろうし、エナジードリンクメーカーはマーケティング戦略を再考することになるだろう。モータースポーツ業界への資金供給が最初に犠牲になるのではないか。メーカーはもっと影を薄くして関与するようになるのではないかということである。フェリックス・バウムガートナーによる成層圏からのパラシュートジャンプへのレッドブルの資金提供が今後の方向性を示している。こうした派手なイベントのイベントの方がコントロールしやすいし、投資に対する見返りも大きいのだ。

MotoGPやWSBKとエナジードリンク業界の関係が終わりに近づいているということだろうか?断言するのは難しい。しかし政府の規制が強化されれば、モータースポーツのような伝統的なスポーツへの関与は少なくなるだろうし、彼らは他の道を探すことになるだろう。エナジードリンクメーカーは若くそして頭のいい人々で構成されている。つまり次の一手を常に考えているということだ。タバコメーカーと同様に、彼らは別にモータースポーツに忠誠心があるわけではないのだ。若くてセンスが良くて流行(意味なく高価でカフェイン過多の砂糖水であるエナジードリンクもその流行のひとつに違いない)に金を使うという、彼らが取り込みたい層がモータースポーツの観客と重なっているというだけなのである。

ではバイクレース業界、そしてドルナはこの問題を解決するために何をしているだろうか?何もしていないというのが実情だ。現時点では現実から目をそむけて、立法府が性急に動きすぎないのを祈るばかりである。それどころかエナジードリンク業界への依存を強めようとしている。モンスターとレッドブルで合わせて5戦の冠スポンサーとなっているが、3年前は3戦だけだったのだ。目先の利益に囚われすぎてはいないだろうか。もっと広い業界からスポンサーを募ることでより健全な体制を作ることはできないのか。確かに既存のスポンサーにより多くの存在感を示してもらう方が、新たな業界から新たなスポンサーをみつけるより楽ではあるのだが。

レース界はタバコ業界が撤退したときのことを思い出すべきだ。あの時、チームも主催者もタバコマネーが失われる準備などしていなかった。代わりのスポンサーをみつける時間が充分あったにもかかわらずだ。当時チームはスポンサーをみつけるのにほとんど苦労することはなかった。特に最高峰クラスでは、多くのタバコメーカーの提案の中から、もっとも要求に合致したものを受け入れるだけで良かったのだ。タバコメーカーがいなくなった後、チームはどうやってスポンサーを獲得し、そしてつなぎとめるか、全くアイディアがなく途方に暮れることとなってしまう。マーケティングの専門知識などなかったために、チームはドルナに援助してくれるよう頭を下げることになったのである。ドルナがタバコマネーのアナを埋めることができたのはテレビの放映権料が大幅に上がったためだ。こういうことが21世紀初頭に起こっていたのを忘れるべきではない。

もちろんエナジードリンクがタバコほど簡単にいなくなるとは思わないが、彼らだけがバイク業界外のスポンサーというわけではないのだ。仮に(たぶんその可能性は高いが)彼らが撤退したらチームもドルナも再び次のスポンサーを探すのにまごつくことになるだろう。バイク業界以外にモーターサイクルスポーツをアピールして資金を獲得する算段もほとんどなさそうな様子である。そもそも何を魅力にするのかすらさだかではないのだ。

バイクレースのファンはドルナに文句を言うのが大好きだ。レースというスポーツの問題はすべてドルナに押しつける。しかしそのほとんどはドルナのせいではない。技術規定のほとんどはワークスが決めて,ドルナは事後にしぶしぶ承諾するだけなのだ。しかもドルナがMotoGPのテレビ放映という他にはない素晴らしい商品を作り出していることもほとんど顧みられることはない。

ドルナへの非難のほとんどは不当なものだ。しかしこのスペインの会社がレース業界でやっていないことがあるのも確かだ。ドルナはプライベートファンドと年金ファンドが所有する会社なのだが、莫大が負債を抱えていて、日々の資金繰りに追われている。しかもオーナーに出資に見合ったリターンを渡しているわけでもない。彼らに足りないのは長期的視点からバイクレースを発展させることで利益を増やすという考え方である。例えばペイ・パー・ビューは短期的には富をもたらすだろうが、そのせいで視聴者が減ったことで離れていったスポンサーの穴埋めができるほどではないだろう。ドルナにはより幅広い業界からより強力なスポンサーを獲得しレース界を発展させていこうという意志もなければ、その必要性もないのだ。

これがバイクレース界の直面している危機である。収益源がないのだ。ごく限られた業界、そして限られた地域からの少数のスポンサーに依存しすぎているということだ。エナジードリンク、そしてスペイン市場とイタリア市場に興味のあるスポンサーがすbて撤退してしまったら、その損失は計り知れない。ドルナはこれまでMotoGPとWSBKに対して大きなスポンサーを獲得できていない。レース業界は2つの重要な層を抱えているにもかかわらず、この体たらくとはどうしたことだろう。重要な層のひとつは18歳から45歳までのそれなりの可処分所得をもっている男性、そしてもうひとつは東南アジアのファンである。どちらもマッケッターや広告業界がのどからほしがっている層である。MotoGPやWSBKに資金を提供したい会社が列をなしても良いはずなのに、そうはなっていない。

広告業界やスポンサーにバイクレースを売るのはたやすいことではない。それはわかっている。もし簡単だったら私もこんなかつかつではなく、楽に生活できたろう。しかしドルナにはコンテンツがあり、しかもマーケティングの才能を持つ人材も抱えているのだから、スポンサー獲得がもう少しできてもいいのではないか。エナジードリンク業界が撤退せざるをえなくなるまで座して待つのでは遅すぎるのである。そして今回はテレビ放映権もその穴を埋めてはくれないだろう。
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ひとつの業界に頼りすぎるのが危ないということですね。生き残りには多様性が大事なのです。

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コメント

歴史は繰り返す。しかし日本においては重要な年齢層はもうちょっと上かも。

投稿: ひさすえ | 2014/06/19 13:42

>ひさすえさん
 それも困ったものですねえ・・・>年齢層が上。

投稿: とみなが | 2014/06/19 20:12

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