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MotoGP:より速く、ますます速く PART1

ブレーキディスクの大径化を受けてCycleWorldに御大デニス・ノイス氏がブレンボのエンジニアとドヴィツィオーゾにブレーキに関するインタビューを寄せているので訳出します。
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FIMの決定によりすべてのサーキットで340mmフロントディスクがMotoGPで使えることになった。これはイタリアGPの前日に発効されたルールだが、大本はライダー、ブレーキメーカー、レースオフィシャルにより組織される安全委員会の提言である。アルヴァロ・バウティスタが乗るLCR以外の全チームにブレーキシステムを供給するブレンボから提供されたトップスピードとブレーキングに関するデータが根拠となったものだ。

ここで提供されたデータはレースオフィシャルやチーム、ライダーにとっては見慣れたものだが、メディア関係者とファンは最速のワークスマシンが高速サーキットにおけるロングストレートの終端で出すトップスピードに驚くことになった。シーズンの1/3を終わった時点での高速トップ3サーキット(カタールのロサイル、テキサスのCOTA、イタリアのムジェロ)では350km/h~360km/hという恐るべきスピードに達していたのだ。

大型ディスクに関する議論がMSAMA(ホンダ、ヤマハ、ドゥカティからなるメーカー協会)で議論された際にはヤマハとドゥカティが賛成し、ホンダは反対したとのことだ(MSMAの会議は密室で行われ、会議が合意に達しなかった場合にはそれが公式発表となることはほとんどない)。MSMAは技術規定を新たに決定したり却下したりする権限はあるが、それは満場一致の場合のみで、多数決の場ではないのだ。

ホンダの拒否権行使を受けて、議論叔母は安全委員会に移されることとなった。そして320mm以上のディスク禁止の先頭にに立っていたドルナはやや乗挙に流され気味に後退し、ムジェロ直前に340mmディスクを許可したのである。

イタリアGPに先だって私はブレンボのエンジニアであるロレンソ・ボルトロッツォから1000cc、160kg、260馬力(か、それ以上)のワークスマシンのブレーキについて話を聞くことにした。そしてブレンボのすすめに従ってドゥカティワークスのアンドレア・ドヴィツィオーゾにもインタビューを行った。彼は現在のMotoGPライダーの中でも最もブレーキングに長けていて、ライダーとしての意見を聞くのに最適だったからだ。

Bremboitalyinfographics

Cycle World:2001年を最後に500cc2ストロークマシンがなくなったわけですけど、その頃のことを考えると、当時の重量は130kgで馬力は最高でも200馬力くらい、最高速は40km/hくらい今より遅かったですよね。今は160kgで260馬力以上出ています。500cc時代と比べてブレンボの挑戦というのはどう変化してきたんですか?
ボルトロッツォ:近年のGPマシンは非常に重くしかも速いので、すべてを変える必要がありました。キャリパーの材質やマスターシリンダーの設計まで変更しています。一番大きな変化はディスクがスチールからカーボンに変わったことですね。それとパッドにもカーボンを使用しています。あとはディスク径が大きくなって、パッドの表面の形も変わりました。最大の問題はマシンが重く速くなってきたんで、温度のコントロールが難しくなってきたということです。ディスクの温度が1000℃に達するとカーボンが酸化して摩耗が促進されるんです。つまりパフォーマンスの面でも安全面でも問題があるってことですね。

Cycle World:もう1000℃に達しているんですか?
ボルトロッツォ:はい。時々測定しているんですが、2012年のもてぎではベン・スピースのブレーキングがすごくハードで、その時は1000℃を超えました。それで酸化がすごくすすんでマシンが止められなくなったんです。ベンのブレーキングは本当にハードで、当時最高でしたね。ブレンボのデータによれば今はカル・クラッチローが一番ハードですが。カーボンディスクの適正温度範囲は300〜800℃なんです。温度をその範囲内にするために、マスターシリンダーからの圧を減らしたり、ブレーキディスクを大きくしてディスクとパッドの接触面積を増やしたりしています。全ライダーにこれが必要というわけではありませんが、大部分のライダーには必要ですし、340mmディスクでないとだめなサーキットもあります。温度上昇の理由は個々のコーナーへの進入スピードではないんです。もしそういうことならムジェロでも問題が起きるはずです。実際にはもてぎで問題が起こってるんですが、これはコーナー間の距離が短くて、ライダーが短い間に何度もブレーキをかけなければならないからなんです。

Cycle World:フロントタイヤの構造やグリップの向上も関係してるんですか?MotoGPのタイヤサプライヤーがブリヂストンからミシュランに替わると何が起こるでしょうか?
ボルトロッツォ:ブレーキはタイヤを介して路面に接しているので、タイヤの特性はとても大事です。ミシュランになって何が変わるかはわかりませんね。現時点ではブリヂストンのフロントタイヤはとても硬くて、だからタイヤ温度を上げるためにはレバーをきつく握らないといけないんです。でもスーパーバイクではタイヤはピレリで、もっと柔らかいんですね。ですからライダーはそれほど努力しなくてもタイヤの温度を上げられます。新型ミシュランがもっと硬かったりしたらブレーキ力を強化する何らかの対策が必要となりますね。新型タイヤがもっと柔らかければいまのままいくことになるでしょう。でもシーズン中もレースごとにブレーキの開発は続きます。

Cycle World:雨の中ではカーボンディスクは性能を発揮できませんよね。MotoGPではドライからウェットになったらマシン交換ということになるんですが、ドライの状態でスチールディスクではレースができないんですか?
ボルトロッツォ:現時点では無理ですね。MotoGPではブレーキ温度は900℃に達するんですけど、スチールには高すぎる温度なんです。パフォーマンスとバネ下重量を考えたらカーボンがベストですね。

Cycle World:スーパーバイクはMotoGPマシンより思いですが、MotoGPと同じくらいの速度に達するコースもありますよね。なぜスーパーバイクでは金属製ディスクでいけるんですか?
ボルトロッツォ:確かにそうですね。でもブレーキングゾーンが長くて、つまりブレーキングポイントがスーパーバイクではもっと手前にあるんです。スーパーバイクのライダーがMotoGPマシンに乗ると言うのは大きい違いが2点あるということですね。タイヤとブレーキングシステムです。この2つが市販車改造シリーズとプロトタイプシリーズを分けているんです。スーパーバイクはストリートマシンに応用できるような開発に専念すべきだという意見に賛成ですね。でもMotoGPはプロトタイプで特別なマシンです。まあカーボンディスクを作るのにはお金も時間もかかるんですけどね。

Cycle World:時間はどれくらいかかるんですか?
ボルトロッツォ:カーボンディスクを作るには9か月かかります。赤ん坊が生まれちゃいますね。まずはディスクを6か月オーブンで焼成します。その後超音波検査装置で慎重にチェックして、ディスクを削ります。その過程でも常に表面が正しい状態にあるかチェックします。表面が完璧でなければすごい振動が出て、それがレバーを通じてライダーの手に伝わることになります。

Cycle World:2016年からヨーロッパではバイクのABSが義務化されます。ABSはF1でもMotoGPでも禁止されていますが、レースにABSを持ち込むことについてはどう思われますか?
ボルトロッツォ:ABSはストリートでは最高の装備だと思いますが、レースではそうではないですね。そこはライダーがコントロールすべきです。ABSで安全性は高まるでしょうけど、レースはライダーのものでもあるんです。それに興業でもありますしね。ですからABSの導入はいいこととは思いません。

Cycle World:2015年からブレーキシステムに関するレギュレーションが変わると聞いたんですが、これはどんなものなんですか?
ボルトロッツォ:2015年からアルミリチウム合金が禁止されるんです。ですからキャリパーの材質を変えなければなりません。普通のアルミを使った新型キャリパーを設計しなければならないんです。そのままだと重くなるんで、重量を増やさないで剛性を確保する方法を生み出さないといけません。メーカーは同じ重量、同じパフォーマンスを期待しているので、かなりな挑戦ですね。

Cycle World:MotoGPの将来に向けてどんなことをやっているんですか?次のステップはどういったものになるんでしょう?
ボルトロッツォ:MotoGPにおけるブレンボの最大の挑戦はカーボンーカーボンより安価な新素材を見つけることですね。もちろんパフォーマンスはそのままでなければいけませんが
カーボンーセラミックがひとつの解決策になるかもしれません。これならカーボンーカーボンのディスクより対応温度範囲が広いんで、雨でもドライでも使えるんです。
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ドゥカティワークスのアンドレア・ドヴィツィオーゾ

Cycle World:ブレーキ温度が上がりすぎるとレース中に下がることはまれだと思うんですが、ライダーの視点からブレーキのオーバーヒートをどう避けているか教えていただけますか?
ドヴィツィオーゾ:すごくコントロールしにくい部分ですね。確かにライダーはブレーキをオーバーヒートさせないようにしなければなりません。もしオーバーヒートしてもそれは自分のせいですね。そこまで温度を上げる必要はないんですから。でもそうなっちゃたらスピードを緩めるしかありませんし、どんどん遅れてしまうということですね。

Cycle World:レースに向けたブレーキのセッティングはどうやっているんですか?
ドヴィツィオーゾ:ブレーキについては神経を遣っていますね。すぐに反応してがつっと聞くのが好みなんです。メカにもブレンボにもそう言っています。僕がわかってるのは自分が何をしたいかで、それを実現する方法を理解しているのはメカさんなんです。僕のブレーキングはすごくハードで、それにブレーキングが僕の走りの鍵なんです。コーナリングスピードを稼ぐタイプのライダーと比べるとなおさらですね。

Cycle World:ムジェロのストレートを360km/hで走ってきてブレーキをかけるってどんな感じなんですか。
ドヴィツィオーゾ:ああああああ!あそこは世界でも一番難しいブレーキングポイントなんですよ。最悪!と言ってもいいですかね。うまくいくと最高なんですが、でもとても難しい。まずは体勢を整えないといけないんです。ストレートからまっすぐ入ってきて、次はブレーキをかけながら右に倒していくんです。スピードがすごく速いんで、なにもかも素早くおこなわなければだめですね。でレバーを思いっきり握るんです。そこでパッシングのこととか考えて、理想とは違うライン取りをしなきゃならないこともある。すごいスピードなんでブレーキングゾーンもすごく長いんですよ。

Cycle World:フロントをロックさせることはどれくらいあるんですか?
ドヴィツィオーゾ:もちろんロックさせないように気を付けていますよ。危ないですからね
フロントのグリップを失うだけじゃなくて、ブレーキをリリースしてまたかけ直さなきゃならなくなるんです。それに深く突っ込みすぎることになる。アルゼンチンでは何度かロックさせて、それでパフォーマンスがすごく落ちてしまったんです。グリップが落ちて、僕の突っ込み重視のハードブレーキングができないとラップタイムが出せなくなるんですね。ブレーキは限界ぎりぎりまでかけるんですけど、どこが限界かはライダーの感覚で判断するしかありません、ですから簡単にフロントがロックしてリアが浮いちゃうんです。

Cycle World:リアブレーキについてはいかがですか?どれくらいの頻度で、それとどれくらいの強さでかけているんですか?あとリアブレーキは何のために使うんですか?
ドヴィツィオーゾ:リアブレーキは多用してますyお、MotoGPでは脱出時のホイールスピンを制御するためにリアブレーキを使うんです。うまく使えればトラクションコントロールの介入を減らすことができるんです。トラコンだとホイールスピンを止めちゃうんですが、自分でやればうまい具合にスピンさせることができますからね。それにブレーキングでもリアはよく使いますよ。4ストではエンジンブレーキも利くんでリアブレーキを使わないライダーもたくさんいますけどね。でも僕のライディングスタイルではいつもリアブレーキを使ってます。

Cycle World:ライバルについてですが、誰のブレーキングが一番だと思いますか?
ドヴィツィオーゾ:まあ大まかに言うとブレーキングはマシンによるんですよね。みんなハードにブレーキングしてますけど、やり方は違います。マシンの重量配分やバランスが自分のブレーキングスタイルに合っていないと、ブレーキングがうまくできないんです。そうなるとコーナリングスピードを稼ぐとか、脱出加速でなんとかするとか、別の手を考えなければならなくなる。それってきついですよね。現時点ではマルク・マルケスのブレーキングが一番アグレッシブですかね。ヴァレンティーノ・ロッシは本当にブレーキングがうまい。でも見ているとマシンのせいで思うようなブレーキングができてないようにも思えますね。

Cycle World:マルケスみたいにブレーキングの最後の部分でリアホイールが浮くことってよくあるんですか?
ドヴィツィオーゾ:ええ。ぼくのスタイルではコーナー進入でのブレーキングがハードなんでリアホイールはよく浮きますね。でもそれもバイクの特性によるんです。例えばヤマハではリアが浮きにくいんですよ。そういう走り方だと速く走れないんです。ヤマハだとリアが接地したときに突っ込みすぎになってはらんでタイムを落としてしまう。ドゥカティでも似たような感じですけど、ホンダはマルクみたいに突っ込んで、リアが接地したらスライドコントロールができるんです。
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1000℃!

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