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私はどんな風に翻訳しているのか

2005年からだからもう10年近く海外サイトの翻訳をやっていて、そういえば自分ってどういう風に翻訳してるんだろうと興味がわいてきました。というわけで解説付き実況翻訳というのをやってみます。お時間とご興味のある方はどうぞご笑覧くださいませ。

ネタはこちらのMotomatters.comの記事。ちなみにMotomatters.comはオランダ人のDavid Emmetさんが書いているのですが、ネイティブの記事と比べて英文法がちゃんとしてるので参考にしやすいかと思います。

まず用意するものですが、
(1)英語翻訳サイトのブックマーク
 私はWeblioを基本に、俗語はUrban Dictionaryを組み合わせています。

(2)電子辞書
 これは何でもいいですが、一応英和と英英を使うことが多いですね。

(3)英文法に関する基本的な理解
 英語は「主語+動詞」が基本で、これに「目的語」がくっつくとかいった中学3年生くらいの英文法は理解していないとつらいです。基本5文型はわかっていることが前提。別にSとかVとかが何かわかっていなくてもOKですが一応列挙しておきます。懐かしい・・・。


  • SV(主語+動詞:I sing.とか)

  • SVC(主語+動詞+補語:主にbe動詞なやつです。I am a man.とか)

  • SVO(主語+動詞+目的語:一番普通の文章ですね。I read a book.とか)

  • SVOO(主語+動詞+間接目的語+直接目的語:○○に▲▲した、なたいなやつ。I give her a ring.とか)

  • SVOC(主語+動詞+目的語+補語:○○を▲▲の状態にした、みたいな感じ。I kept her waiting.とか)


(4)基本的な単語に関する理解
 前置詞(at、on、in・・・)、接続詞(and、but、or、for、so)、関係代名詞(that、what、where、when・・・)は頻出します。これは文の構造を理解するのに超重要!
 こつは

  • 接続詞の前と後は基本的に同じ構文なので、例えばandが何と何をつないでいるかをみつけるには、同じ構文になっている2つの組みを探すのが近道

  • 関係代名詞は例えば「▲▲+which+○○」だったら「○○であるところの▲▲」と読むのが基本ですが、「,」が前についている(▲▲+,which+○○)場合は接続詞を補って読みます。これはどっかに例が出てきたらまた説明しますね。

(5)日本語力
 当たり前のようですが、日本語になっていない(意味がつたわらない)翻訳は、要するに間違っているということです。英語で理解しても伝わる日本語にならなければ翻訳ではないということでもあります。そういう意味では訳している文章の分野(この場合はバイクレース)についての知識もなんとなくあるといいですね。340mm discというフレーズを見て、フロントのブレーキディスクだということがわかっていないと、文章があっているかどうかもわからないですから。

(6)酒とつまみ
 つまみは手がべたべたしないものが吉。

前置きがながくなりましたが、準備ができたところで始めますか。


私はこんな感じで左に翻訳対象、右にテキストエディタを開いてやってます。
Screen


ではタイトルから。
The Great Weight Debate: Minimum Weights To Be Reduced Soon In MotoGP
重量制限に関する議論、と読んで、それがGreatなんだけど、どうGreatかは本文を読んでから判断することにしましょう。「偉大なる」って感じじゃなさそうですしね。「:」以下はそのまま「最低重量が引き下げられる」と読むわけですが、これがsoon(すぐに)かつin MotoGP(MotoGPで)なので、日本語にするときはとりあえず「Greatな重量制限関連議論:近々MotoGPで最低重量が引き下げに」とまで訳しておきます。タイトルって省略が多いので、結局本文を読んで最後に日本語を整えた方がいいことが多いです。

では本文に入りましょう。以下、本当に訳しながら打っているので、超冗長、試行錯誤の様子まで書いていきます。すいませんがおつきあいください。って、この記事、全文の翻訳を解説するわけじゃないのでご安心を。最初の2段落だけの予定です。

The news that 340mm carbon brake discs are to be allowed once again in MotoGP has rekindled a debate that has been going on behind the scenes for some time.

「The news that」まで読んで「なんとかというニュースは」とまで解釈できます。その後、どんなニュースかというと、と思いながら「that」以降を読んでいくと(ここでthatは関係代名詞だとわかって読んでいるんですが、それは名詞のすぐ後にきているから、というのとthat以降が文章になっているからです)「340mm carbon brake discs are to be allowed」ときて「340mmカーボンディスクが許可されたというニュース」とまで読んでいきます。その後に続く「onece again...」というのは付け足しなので、軽く流しましょう。そしてちょっと不安になりつつ「The news」という主語に対する動詞を探しますが、この場合は「has rekindled」がすぐにみつかります。そこでほっとしつつ、「ニュースが何かを再燃させた」とまで理解。で、何を再燃させたかというと「a debate」なわけです。この文章は要するに、主語S:The news、動詞V:has rekindled、目的語O:a debateのSVO構文ということですので「ニュースが議論を再燃させた」となります。

 このあたりで私はタイプを始めます。「340mmカーボンディスクがMotoGPで再び許可されるというニュースが」までは確定。で次はどんな議論を再燃させたか読んでいきましょう。「that has been going on」ですから「このところ続いている(議論)」となります。で、「behind the scene」は「表舞台の裏で」ととりあえず理解しておきます。そんな日本語はないので、後から整えますが。「for some time」は「ここしばらく」とくるわけです。つなげると、このところ続いている(議論)」「表舞台の裏で」「ここしばらく」 日本語として整えると「水面下でここしばらく続いてきた議論」とでもなりますか。でさっき訳した主語部分とつなげると「340mmカーボンディスクがMotoGPで再び許可されるというニュースが水面下でここしばらく続いてきた議論を再燃させた」となります。これで最初の文は完成。


次の文にいきましょう。

The move to allow the discs at all tracks, and not just Motegi where they are already compulsory, has come as both power and weight of the MotoGP machines has grown over the past three years.

ぱっとみで「The move to allow the discs at all tracks, 」までを「そのディスクを全コースで使用できることを許可するように変更されるという事実は」と読むんですが、瞬時に「340mmディスクを全コースで使用できるよようになったことで」と変換しています。これは日本語が長い文章を主語にするようにできていいないので、不定動詞やThatで始まる(「・・・ということは」みたいな訳になる)文章は「・・・を理由に」と訳すと収まりがいいからです。次の「 and not just Motegi where they are already compulsory,」は「もてぎ、ここでは既に340mmディスクが義務となっている」みたいにとりあえず英語の語順の通りに訳します。んでここまでの文章を整えてタイプを始めます。「340mmディスクが既に義務となっているもてぎに加えて、全てのサーキットで大型ディスクが使えるようになったことで」とくるわけです。で、「それで何が起こったんだろう」と思いながら読んでいくと(←ここ重要!文章の流れにそって「ふむふむ、それで?」となりながら読まないと文脈をとらえきれないことがあるんですよ)、「has come as both power and weight of the MotoGP machines has grown over the past three years. 」とくる。

あ、さっきの偉そうに書いた「○○なことで」という文末は間違い(><)と気付きました。なぜそれがわかるか。この文章、「,」があるところ以外のどこで切れるかというと、ちょっとわかりにくいのですが、「has come」の後ろなんです。つまり飾りをとっぱらうと「The move has come」「as」「power and weight has grown」なんです。だから訳すなら「ついにmoveがやってきた。パワーと重量が増してきたからだ」となるんですね。すみません。ほんとに冗長で。

で、moveですねえ、とりあえず「ルール改正」とでも解釈しておきますか。

じゃあもといして、「ついに既に義務になっているもてぎに加えて全てのサーキットで340mmディスクが使えるようになったのだ。これは過去3年にわたってMotoGPマシンのパワーと重量が増してきたためである」としましょう。

「ルール改正」はどこいったかって?「ようになった」ってところにそんな感じを入れてるつもり。最終的に逐語訳にはならないってこともよくあります。

さて、ここで解説です。この文章、接続詞が3つ出てきます。andが2つとasがひとつ。それぞれが何と何をつないでいるかを考えることも構文の解釈には重要です。まず最初のand。これはall tracksとMotegiをつないでいるのはMotegiがサーキットのひとつであることから自明ですね。where以下はもてぎを解説するための文章なので気にしなくて構いません。では次のandは?これも簡単。powerとweightですね。問題はasです。これはasの後ろがまるごと文章になっているので、これとつなぐ前の部分も文章のはずと思いながら読むと、上記の通り「The move has come」と「power and weight has grown」をつないでいることがわかります。とりあえずandが何と何をつないでいるかを()でくくると、こんな感じになりますね。

The move to allow the discs at (all tracks, and not just Motegi where they are already compulsory),has come as both (power and weight) of the MotoGP machines has grown over the past three years.


みなさーん、ついてきていただけてますかー?


次の文章は簡単です。もう文章の順番で訳すだけ。

But the real solution lies in reducing minimum weight.

「しかし真の解決策は最低重量を下げることにある。」

でもこの記事の一番言いたいことなので、とても重要です。ってこの3つめの文章の段階でなんとなくわかりますね。英語というのは基本的に結論が先に来るので、今回もそういうことでしょう。


次の段落にいきましょう。


There was a certain irony in the moment chosen by the Grand Prix Commission to ban carbon discs larger than 320mm.

There was a certain irony はとりあえず「皮肉なものだ」とでもしておきましょう。何が皮肉かというと「グランプリコミッションが320mmより大きいディスクを禁止したタイミング」って感じですかね。「the moment chosen by GPC to ban」を「GPCが禁止したタイミング」と訳していますがちょっと自信がないので、次の文章を読んでからこの文章は確定することにします。


The move – made for reason of cost savings and rationalization – came just as MotoGP was to return to 1000cc, meaning the bikes were about to reach higher top speeds.

ちょっとめんどくさそうな構文のときは主語と動詞を確認します。この場合は主語が「The move」、動詞が「came」ですね。as以降は○○の時、を表す前置詞ですので、「このルール改正は行われた。それはMotoGPが1000ccに戻ったときに」という文章になります。
次に飾りをつけていきます。まず飾り1。「– made for reason of cost savings and rationalization – 」→「コストカットと合理化のために導入された」と読みます。なので主語は「コストカットと合理化のために導入されたこのルールが」という感じですね。
飾り2は「meaning the bikes were about to reach higher top speeds」。meaningは意味する、なのですが、何を意味しているかというと「the bikes were about to reach higher top speeds」つまり「マシンがより速くなること」です。

さてパーツができました。
「コストカットと合理化のために導入されたこのルールが導入されたのはMotoGPが1000ccに戻ったとき」
「これ(1000ccに戻ること)はマシンがより速くなることを意味していた」

そこで前の文章を思い出してください。「グランプリコミッションが320mmより大きいディスクを禁止したのは皮肉なタイミングだった」とすれば、次の文章を「コストカットと合理化のためにこのルールが導入されたのはMotoGPが1000ccに戻ったときなのだが、これは同時にマシンがより速くなることを意味していたのだ」とすれば皮肉な感じが出ますよね。マシンは速くなったのに止める力(ディスクのサイズ)は制限されたってあたりが皮肉だってことです。こんな風に文章の意味を考えながら訳していくのも重要でございますのよ。いま気付いたんだけど。


次いきましょう。

Compounding the problem, the minimum weight was also increased.

「Compaunding the problem」はその通りに「さらに問題を悪化させたことに」と読めばOK。で、「何が起こったんだっけ」と思いながら次を読むと「the minimum weight was also increased」→「最低重量が引き上げられた」とくるので、ここはそのままいきましょうか。

The initial proposal was to raise the minimum from 150kg, the weight of the old 800cc machines, to 153kg.

英語の場合は文章の飾りを「,」〜「,」で区切ることがあるんですが、これが典型ですね。だからとりあえず「The initial proposal was to raise the minimum from 150kg to 153kg.」と読みましょう。というか、「from 150kg」(150kgから)とくれば「to」(〜まで)を探したくなりますので、探してみて「to 153kg」(153kgまで)とあるとほっとしてタイプにかかれるわけです。間の「the weight of the old 800cc machines」はさっき書いた通りの飾りで、150kgというのは800ccマシンの最低重量だったということです。なので日本語は「最初の提案では800ccの最低重量150kgが153kgに引き上げられた」としておきます。


次もこの流れですね。

「However, to make life easier for the CRT machines, the weight limit was raised even further, in two steps, to 157kg in 2012 and 160kg in 2013」

「However」→「しかし」ときて、「to make life easier for the CRT machines」は「CRTマシンが生き延びられるように」とでも訳します。「the weight limit was raised even further」→「最低重量はさらに引き上げられた」。「in two steps」→「2段階で」。「to 157kg in 2012 and 160kg in 2013」→「2012年には157kgへ、そして2013年には160kgへと」と読む順番にパーツを作っていきます。で、これを組み合わせて「しかしCRTマシンが生き延びられるように2012年には157kgへ、そして2013年には160kgへと2段階で最低重量が引き上げられることになった」とすればこの文章自体は完成です。


ではここまで訳した文章を並べてみましょう。

「340mmカーボンディスクがMotoGPで再び許可されるというニュースが水面下でここしばらく続いてきた議論を再燃させた。ついに既に義務になっているもてぎに加えて全てのサーキットで340mmディスクが使えるようになったのだ。これは過去3年にわたってMotoGPマシンのパワーと重量が増してきたためである。しかし真の解決策は最低重量を下げることにある。
グランプリコミッションが320mmより大きいディスクを禁止したのは皮肉なタイミングだった。コストカットと合理化のために導入されたこのルールが導入されたのはMotoGPが1000ccに戻ったときなのだが、これは同時にマシンがより速くなることを意味していたのだ。さらに問題を悪化させたことに最低重量が引き上げられた。最初の提案では800ccの最低重量150kgが153kgに引き上げられた。しかしCRTマシンが生き延びられるように2012年には157kgへ、そして2013年には160kgへと2段階で最低重量が引き上げられることになった。」

うーん、ちょっと気持ち悪いので、文意を保持しながら整えます。

「340mmカーボンディスクがMotoGPで再び許可されるというニュースのせいで水面下でここしばらく続いてきた議論が再燃している。既に義務になっているもてぎに加えて全てのサーキットで340mmディスクがやっと使えるようになったのだ。これは過去3年にわたってMotoGPマシンのパワーと重量が増してきたためである。しかし真の解決策は最低重量を下げることにあるはずだ。
グランプリコミッションが320mmより大きいディスクを禁止したのは皮肉なタイミングだった。コストカットと合理化のためにこのルールが導入されたのはMotoGPが1000ccに戻ったときなのだが、これは同時にマシンがより速くなることを意味していたのだ。さらに問題を悪化させたのは最低重量の引き上げだった。当初は800cc時代の最低重量150kgが153kgに引き上げられたのだが、しかし話はここで終わりではなかった。CRTマシンが生き延びられるように2012年には157kgへ、そして2013年には160kgへと2段階で最低重量が引き上げられることになったのだ。」

えー、ここまでで9段落中2段落まで訳せました。残りはこれからまとめて訳してアップします。お楽しみに!

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コメント

力作、拝読いたしました。
非常にわかりやすくて、英文を読む基本のコツが凝縮されていると思います。
学生時代にこれを読んでいれば、論文読むのがもっと楽だったろうなぁ(^^)
これ、受験生にもお勧めだと思います!

とみながさんレベルになると、たぶん英語は英語のまま理解されていると思うのですが、そうなると翻訳が面倒になりませんか?

投稿: Tako_chan | 2014/06/07 08:50

>Tako_chanさん
 英文翻訳のコツって、要するに前から読んで前から訳すってとこかなあと思ってます。
 んで、今別の英文を試しに読んでみたのですが、確かに英文のまま理解してるみたいです。でも読むスピードがそれほどでもないので、実は翻訳はそれほど苦になってないかなあ。翻訳するときは読みながらどんどん日本語に変換して、どんどんタイプしちゃってるので、真面目に読むのと手間はあまり変わらない感じ。使ってる頭の部分が読むだけの時とは違うのかもしれませんね。翻訳の時は英語で理解するというステップを飛ばしてるのかも。
 ここらへんも解析してみたいです!

投稿: とみなが | 2014/06/07 10:12

めんどくさいので無視しちゃいましたが、タイトルの「Great Weight Debate」は「グレイト・ウェイト・ディベイト」と韻を踏んでいます。これを活かした訳にこだわり始めると終わらなくなりますね。ダジャレの才能が必要とされるところです。ラップの才能でもいいけど。「重量制限・負担軽減」とかかなあ・・・。

投稿: とみなが | 2014/06/07 14:37

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