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ペドロサが800万ユーロをスズキに要求:これって「茶色いM&M's」かも

ハードロック好きなら知ってるかもな「茶色いM&M's」にペドロサのスズキへの法外とも言える要求をなぞらえている記事。Motomatters.comより。ちなみに最初にこちらのイタたわGPさんの記事をお読みになるとより味わい深いかもです。
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既にマルク・マルケスがホンダと2015、16の2年契約を結び、ヴァレンティーノ・ロッシもヤマハとの2年契約にサインする直前であると言われる今、興味の対象はダニ・ペドロサとホルヘ・ロレンソに移ってきている。ロレンソはヤマハに残りたいのか、それともホンダに移籍するのか?ペドロサは契約金の減額に応じるのか、それとも他のワークスに行くのか?いずれもこの数週の内にははっきりしてくるだろう。

ペドロサの事情の方が興味深いだろう。情報通が彼の去就について情報を流し始めている。スペインのモトチクリッシモ誌(有料)によれば、ペドロサはホンダから基本給の減額をオファーされているとのことだ。基本給を600万ユーロ(8億4千万円)から150万ユーロ(2億1千万円)に減額する代わりに、勝利給とチャンピオン獲得のボーナスをはずむということらしい。

一方、スズキもペドロサに興味を持っている。スズキは復帰するマシンで勝てるライダーを望んでいるのだ。今のところランディ・ドゥ・ピュニエが出しているタイムはワークスホンダ、ヤマハから1秒以上遅いのだ。現時点で契約が決まっていないライダーの中で勝てる可能性のあるのは4人だけである。実際2008年以降で勝っているのは6人だけで、その内ケイシー・ストーナー、ダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンソ、そしてヴァレンティーノ・ロッシが複数回の勝利を挙げている。あとはベン・スピーズがアッセンで1勝しただけだ。もしスズキが実績のあるライダーを狙うならダニ・ペドロサしかいないのが実情なのだ。

ペドロサはまだMotoGPのチャンピオンを獲得していないとは言え、史上最も成功したライダーの一人で、勝利数ではMotoGPクラスでも全クラスでも8番手につけていることも思い出すべきだろう。そして下位クラスでは3回のチャンピオンを獲得している。彼の勝利数はウェイン・レイニーを上回り、マルケス、ロレンソ、ロッシといったライダーにも勝つことができる。チームメイトのストーナーにだって勝ったことがあるのだ。日曜日に彼の名前が優勝候補として挙がらないことはない。

ペドロサもそのことを知っている。彼がスズキに行きたい以上にスズキが彼を必要としていることも知っている。ドイツ語サイトのSpeedweekによればペドロサはスズキに800万ユーロ(11億円)を要求しているという。これが実現するなら大した契約となる。ペドロサがチームメイトに大きく差をつけられていることや、彼がMotoGPクラスのタイトルを獲っていないことを考えればなおさらだ。ペドロサとの契約は勝利を約束するものではないのだ。

これはペドロサがとんでもなく傲慢だということだろうか?実はそうではなさそうである。ペドロサはいつだって驚くほど謙虚である。少なくともエリートアスリートの標準から考えればそういうことになる。となればこれはスズキがそこまで払うことはないだろうと知った上でのペドロサ流の丁寧な断り方なのだろうか。それはあり得るだろう。他のトップライダーたちと同様にペドロサも自分が何をすべきで何をすべきでないか明確にわかっているからだ。そしてもう一つ考えられる理由がある。別の分野の話から始めることにしよう。

1980年台はじめのころ、多くのロックバンドがとんでもない要求をするようになり、それが契約書の添付書類に記された。バックステージに置いておくべき食べ物や飲み物やその他諸々についてだ。最もとっぴだったのがヴァン・ヘイレンが要求していたというM&M'sチョコレートである。ただし茶色のM&M'sだけはすべて抜くように書かれていたのだ。さらに、もし茶色のM&M'sが一個でも入っていたらコンサートをキャンセルし、しかも全額要求できるとの添え書きまであった。

当時この話はロックバンドがいかに傲慢かを表すエピソードとして語られていたが、ヴァン・ヘイレンにはこの条項を契約書に入れるそれなりの理由があったのだ。彼らは巨大なライティングシステムや花火一式をコンサートに持ち込んでいた。そしてこれらのステージセットが正常に機能するには特殊な電源と安全装置が必要で、分厚い契約書にはそのための詳細な技術仕様が書かれていた。もし会場でなにかがうまくいかなかったりしたら、ミュージシャンもスタッフも観客も命の危険にさらされかねない。つまりM&M'sをチェックすれば契約書がどこまで確かに履行されているかがわかるということだ。もしメンバーが茶色いM&M'sをみつけたら彼らは会場すべてをチェックしなければならないということだ。どこかに危険な契約違反が潜んでいないとも限らないからである。

これがペドロサとスズキの契約にどう関係するのか?スズキはGPで素晴らしい成績を挙げ続けているわけではない。この21年間でチャンピオンを獲ったのは1993年のケヴィン・シュワンツと2000年のケニー・ロバーツJrだけである。真の意味でマシンに競争力があったことはなく、スズキで走ったライダーのだれもが口をそろえて、うまくいかないのは予算が少ないからだとこぼしていた。頑固なまでに我が道を行くこの会社は、決してホンダやヤマハに追いつくために予算を増額したりはしなかったのだ。

もしスズキと契約するならこのことをよくわかっている必要がある。今回は違うというスズキの主張にも用心深くなるべきだろう。スズキは競争力を獲得するために十分な投資をするだろうとチームマネジャーのダヴィデ・ブリヴィオが心から思っているのは間違いない。しかしブリヴィオが予算を決めるわけではないのも事実である。スズキの役員室でスズキの役員が決める話なのだ。

ではスズキが本気で勝つためにお金を使うつもりでいることはどうやったらわかるだろうか。もし自分が賢いライダーなら簡単な方法がある。巨額の契約金を要求するのだ。例えば800万ユーロくらいならどうだろう。それに応えられるかどうかでスズキの本気がわかるというものだ。もしトップライダーを獲得するための何百万ユーロだ出せなければ、どうして競争力のあるMotoGPマシンのために何千万ユーロをつぎこむことなどできようか。

つまり私はダニ・ペドロサの800万ユーロというのが、彼なりのM&M'sだと密かに思っているのである。
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ちなみに筆者のDavid Emmetさんは現在ムジェロに向けてバイクで旅をしている途中なので、しばらく長文はなし・・・かな?

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コメント

初めて投稿します。
いつも楽しく拝見しています。

今回もm&mのくだり、大変興味深く読ませて頂きました。
また面白い記事を期待しています。

ペドロサもスズキもそれぞれ頑張れ!

投稿: Naoya Fukuda | 2014/05/28 10:29

>2008年以降で勝っている
ド、ドヴィが…忘れられてる?

投稿: へっぽこ | 2014/05/28 20:26

>Naoya Fukudaさん
 ご愛読ありがとうございます!今回の記事は私も訳していてとても楽しかったです。Motomatters.comはすごいですね。

>へっぽこさん
 はっ!あわてて原文を確認しましたが、やはりドヴィは忘れられてますね・・・。ちょっとツイッターで著者のDavid Emmetさんに突っ込んでみます。

投稿: とみなが | 2014/05/28 21:04

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