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2014 フランスGP日曜まとめ:ロッシの復活、ロレンソのスランプ、ドゥカティの低迷、ミラーの逆襲、そして奇妙なフロントフォーク


Motomatters.com
による長文まとめ。
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今頃ロッシはマックス・ビアッジと同じ思いを噛みしめていることだろう。「27周でミスをしたのは一回だけなんですけどね」とロッシはレース後のプレスカンファレンスで語っている。「でもそこが決定的だったんです」 ロッシは9コーナーで突っ込みすぎてはらんでしまい、マルケスに抜かれることとなった。このミスはマルケスのプレッシャーによるもので、ロッシは攻めざるを得なかったのだ。「もっとプッシュして1分34秒0に入れようとしたんですけど、その時点で限界でしたね」 自分が限界までプッシュしなければマルケスがすぐに抜きにかかることがわかっていたのだ。そのがんばりがマルケスに抜かれた原因であろう。

10年前を思い起こすと感慨深いものがある。ロッシはハンターであり、マックス・ビアッジやセテ・ジベルノーといったライダーを獲物にしていた。彼らを追いかけ、ミスをするのを待つ。今やその立場は逆転し、彼はマルケスが追いかけてくると動揺してしまうようになった。ついに彼はビアッジの立場となってしまったのである。

しかし今回のレースはロッシのものだった。彼だけが無敵のマルケスと対等に渡り合うことができる。ロッシもマルケスもロッシのミスには驚き、がっかりしていた。どちらも激しいバトルを期待していたのだ。「彼に勝てたかどうかはわかりませんね」とロッシは言う。「でもバトルはしたかったですよ。楽しかったでしょうねえ」 結局勝ったのはマルケスだ。彼もロッシの後ろについたときには「いいバトル」を期待していたとプレスカンファレンスで言っている。しかしすぐにロッシはミスを犯し、マルケスはその機会を逃さなかった。マルケスは逃げ、そして半周の内にロッシに0.5秒の差をつけてしまう。そこで勝負は決まってしまった。マルケスがそれほど早く逃げを打ったのは、ある意味ロッシへの尊敬であろう。マルケスはロッシとのバトルに備えていたが、ロッシが何をしかけてくるか様子を見るほどの余裕はなかったのだ。5連続のポール・トゥ・ウインでマルケスは自信をつけたろうが、まだ彼は安心しているわけではない。

その自信のなせるわざか、マルケスはスタートで失敗している。そして1周目でも単純なミスを犯した。「ちょっとリラックスしすぎてましたね」とマルケスは言う。そしてそのせいでさらにミスをしてしまう。ロレンソを抜こうとしてアウトにはらみブレーキをかけてしまったのだ。おかげでマルケスは行き場が無くなりガラージュ・ヴェールでコースアウトしてしまい10番手に後退してしまった。突然目の前に多くのライダーを抱えることになった彼はせめて表彰台をと攻め続けることになる。

その走りは王者のものであった。彼が見ていたのは目の前のライダーではない・彼によればロッシを見続けていたと言うことだ。ドヴィツィオーゾとブラドルが前にいることは理解していたが、レースのペースをつくっているのはロッシだとわかっていた。毎周、ガラージュ・ブルーS字2つめの10コーナーでロッシが最終コーナーに入るのが見えていた。そして毎周彼はロッシに近づいていった。彼がロッシに追いついたのは11周目である。そして次の周にはトップに立った。

ロッシのミスによりトップに立ったのは棚ぼただとしても、他のライダーを抜くのは容易なものだった。まるで外科手術のような正確さだった。ほとんどのライダーはガラージュ・ブルーS字かダンロップシケインで料理された。マルケスが何も考えずに抜けたのはロッシだけで、それはロッシのミスによるものである。その他はマルケスの素晴らしいライディング、深いブレーキングとコーナリングスピード、そして立ち上がりの速さによるものだ。どれをとっても教科書に載せたいような見事なパスである。

そんなわけでレースの前半はおもしろいものになった。しかしそこで見せられたのはマルケスがどれほど強いかということである。記録は彼のものである。そしてたとえ半周遅れとなってもそれは何のハンディにもならないということだ。ホンダは確かにヤマハよりよくできているだろうが、マルケスの強さのほとんどは彼自身に起因するものである。ヴァレンティーノ・ロッシが言うとおり「マシンの性能を100%引き出せるのは彼だけだ」ということだ。

マルケスの支配で見えなくなっている興味深いことがたくさんある。まず言っておくべきは、ロッシの復活は間違いないところで、ロッシはM1を思うがままに扱っているということである。ロッシがスタッフを入れ替えたのは単にモチベーションの問題だけではなく実際に技術的な面でもメリットが大きかったことがはっきりした。今のところシルヴァーノ・ガルブセラを雇ったのは完璧な結果を出している。プラクティスごとにマシンを進化させ、トップ争いができるマシンをレースに投入できているのだ。

そしてこのおかげでロッシが再びヤマハのトップライダーに返り咲くという奇妙な状況が起きている。公式にはどちらのライダーも同じように扱われることとなっているが、メーカーは結果を出しているライダーの言うことを聞くものだ。現時点ではそれはヴァレンティーノ・ロッシである。彼はペドロサにランキングで2ポイント差に迫っており、5レースで3階表彰台に昇っている。ロレンソには36ポイント差をつけ自信満々の状態で真のホームレースのムジェロに臨むことになるのだ。ロッシは言う。「他のレースと同じで優勝すれば25ポイントですけど、ムジェロは名誉の問題なんですよ」 これはマルク・マルケスに対する一種の警告であり、それは彼も充分認識しているだろう。

ではホルヘ・ロレンソには何が起こっているのだろうか?おそろしく正直なことに、彼は自分のライディングに問題があると告白している。スタートに失敗し、失地を挽回しようとしたが、プラクティスで見せた印象的な速さを再現するのはとても無理だろうと思えるほど緊張がありありと見て取れた。「レースまではよかったんですよ」とロレンソはプレスに語っている。スタートに失敗したことで他のライダーの集団にのみこまれ、普段は体験しないポジションからの追い上げをせざるを得なかった。「レースをリードするなんてとても無理でした。2位も無理でしたよ。普段ならそのあたりにいるんですが」

ロレンソの問題は熱対策されたブリヂストンタイヤである。ブリヂストンはエッジグリップの高い新型タイヤの供給を始めたが、ロレンソの役には立っていないようだ。ロレンソによれば問題はタイヤのドライブセクション(加速に最初に対応するエッジのすぐ内側の部分)でグリップが失われるという点である。コーナーを抜けてスロットルを開けるとリアが空転し前に進まないというのだ。この問題は午前中のウォームアップでメカニックが見つけたと思ったギャンブル的なセッティングでさらに悪化した。

リアの荷重を増やしたのだが、午前中の低い気温ではコーナー加速がうまくいったのだ。この変更でフロントタイヤのグリップ感はやや失われたが、それでもロレンソはそこに喜んで賭けることにした。午後になって気温が上がるとリア荷重のメリットは消え失せ、ロレンソはリアのグリップ感のなさにも悩まされることになった。フロントにいたっては全くグリップしなくなっていた。それでもロレンソはロッシの成功に慰められている。もっとも彼自身についてはがっかりしており、時が過ぎるのを待つしかないと考えているようだ。「少しずつ良くなっていますから、いつかはうまくいくでしょう」

タイヤに悩まされているのはロレンソとヤマハだけではない。ダニ・ペドロサも同じような問題を抱えていた。まるでウェット路面を走っているようだとこぼしていたのだ。ペドロサが抱えていた問題はリアではなくフロントだった。フロントエンドが切れ込もうとしたのだ。このおかげでトップを目指して抜いていくこともできず、5位になるのがせいいっぱいだった。ロレンソと同様、ペドロサも序盤は集団に飲み込まれ、ブラッドリー・スミスやアンドレア・イアンノーネといったライダーの激しいライディングに悩まされることになった。ペドロサはこうしたバトルには慣れておらず、グリップ不足と手術をしたばかりの腕も相まって、抜いていくことができなかったのだ。

ではドゥカティはどうだろう?アンドレア・ドヴィツィオーゾはフロントローからスタートしたものの、これを結果に結びつけることはできなかった。カル・クラッチローにいたっては11位という冴えない結果に終わっている。ブレーキングは改善され新型タイヤも機能しているのの、デスモセディチが抱えている最大の問題は解決されていない。曲がらないのだ。去年と同じ問題だとドヴィツィオーゾは語る。「理由は同じですよ。限界も変わらない。新型タイヤでグリップは出ましたしラップタイムも良くなっています。でもタイヤのたれが早くて、あと曲がらないってのもありますね」 つまりドゥカティの問題は解決していないということだろう。

スタート位置は違ったものの、ドヴィツィオーゾとクラッチローのゴールタイムは3秒しか離れていない。そしてどちらも優勝したマルケスからは20秒以上離されている。ドヴィツィオーゾの強さはニュータイヤでの序盤の速さで、クラッチローはここを活かすことができていない。しかしタイヤがたれてくるとクラッチローとドヴィツィオーゾは似たようなものになってしまう。はっきりさせるために28周のレースの最初の5周を比べてみよう。5周目までにドヴィツィオーゾはクラッチローに5秒の差をつけているが、6周目から28周目まではクラッチローが速く1.3秒の差がついている。ドゥカティの問題はなかなか難しそうである。ニュータイヤでは加速の良さを活かしてウィークポイントをカバーできるがタイヤがたれるとタイムが出なくなってしまうのだ。

マルケスとロッシによるすばらしいレースと、そのチームメイトであるペドロサとロレンソの冴えない結果は他のライダーの良さを覆い隠してしまっている。3レースで3回のクラッシュという最悪のシーズンスタートとなったアルヴァロ・バウティスタは素晴らしいライディングで18か月ぶりの表彰台を獲得した。セッティングがうまくいけばショーワのサスとニッシンのブレーキは充分機能するのだ。バウティスタは表彰台を充分狙えるライダーなのである。しかしコースによってはデータがないことで戦闘力のあるサスセッティングができないという問題はある。

たぶん最も印象的だったのはポル・エスパルガロだろう。予選でのすばらしいパフォーマンスで2番グリッドを獲得したが、彼は何の幻想も抱いていなかった。予選後のプレスカンファレンスでは、タイムは一発出しでレースペースではないと言っていた。「まあ表彰台を狙えるって言ったら嘘になりますね」 しかしそうでもなかったのだ。彼はレース中トップを目指して走り続け、最終的にアルヴァロ・バウティスタに抜かれたものの表彰台まで1秒ということころでゴールしている。MotoGP参戦5戦目にしてエスパルガロは戦闘力を見せつけたのだ。

エスパルガロのチームのオーナーであるモンスター・テック3ヤマハのエルヴェ・ポンシャラルはMotoGP.comに対してエスパルガロがルーキーにもかかわらず見せているパフォーマンスについての驚きを語っている。「ポルは開幕当初は怒ってたんですよ。もっと前の方で走りたいとね。だから言ったんです。ちょっと待てばその日は来るよって。でも思っていたより早かったですね。彼は天才ですよ!」 ヤマハM1はいいマシンですよ、とポンシャラルは慌てて付け加えた。総合的に素晴らしいチームなんですよ、とも彼はウィンクして言っている。

MotoGPのレースも良かったが、最高だったのはMoto3である。最小排気量クラスは今シーズン輝きを放っている。最終ラップまで結果がわからないのだ。勝ったのはジャック・ミラーで3ショウエイとなったが、その勝ち方は見応えがあったが多少議論を巻き起こすようなものだった。アルゼンチンでアウトにはらんだロマーノ・フェナティがミラーに接触してそのまま勝ったのを覚えていたのだろう。ミラーは二度とそんな目にあわないようにレースをはこんでいた。そこでエフレン・ヴァスケスが最終ラップ、シェマン・オウ・ブフのS字で並びかけたときミラーは反撃に出た。彼は前に出てインを閉めたのだ。その結果ヴァスケスには行き場がなくなりブレーキをかけアウトにはらむこととなってしまった。そこでヴァスケスの初優勝の夢は潰えてしまったのだ。一方ミラーはランキングトップの座を確固たるものとしている。

確かにあの一瞬はラフなものだったし、ヴァスケスは激怒してフィニッシュ後にミラーの体を叩いてもいる。MotoGP.comには、ああいう動きは危険だとも言っている。「何にも考えていないんじゃないか」と彼は語る。そしてレースディレクションによる審議を期待するとも言った。少なくとも現時点、日曜の夜の誰もいないサーキットで審議は行われていないようだし、今後もそれはないだろう。

なぜか?まずレースディレクションは最終ラップの最終コーナーに関しては寛容だということだ。マイク・ウェッブがヘレスで私に言ったのだが、レースディレクションの目的はライダーがレースを勝利を目指してレースをできるようにすることで、だからこそレース序盤やプラクティスについては厳しいが、最終ラップの最終コーなについてはライダーにも勝利を目指してトライする権利を残しているいうことである。

そしてもうひとつの理由はもっと平凡なものである。ヴァスケスが激しい動きに文句を言うのはある意味皮肉であり、彼自身がレース中かなり激しかったからだ。いわば鉄鍋が鉄瓶におまえ黒いぞと言うたぐいの話で、同情はされないだろう。

何人ものライダーが優勝のために抜き合いをしたすばらしいレースにふさわしい終わり方だった。一時は第2グループの激しい争いのせいで、アレックス・リンスが逃げを打つように見えた。彼の後ろではミラー、ヴァスケス、アレックス・マルケス、イザック・ヴィニャーレス、ロマーノ・フェナティ、ペッコ・バグナイアが激しく争っていたのだ。しかし終盤に向けてなんとか休戦協定が結ばれ、みながリンスについていくこととなった。残り3周でヴァスケスがリンスをとらえ、ミラーとヴィニャーレスがそれに続いた。最終ラップではミラーが最初に行動を起こした。彼はヴァスケスの直後につき、一瞬遅れたが、厳しい追い抜きで勝利をものにした。

オーストラリア人のミラーは派手なウィリーで勝利を祝い、観客にグローブをなげ、グラベルでブレイクダンスまで踊ってみせた。ミラーはファンに好かれるタイプである。そしてチャンピオンの資格があることも証明した。既に2位に30ポイントの差をつけることになったのだ。ロマーノ・フェナティのマシントラブルに助けられたとは言え、ミラーが状況をコンとロースしていることに変わりはない。

それとは対照的にMoto2はただのパレードだった。まず6台が抜け出すことになった。その中には今回やっとKLXという略称ではなくカレックスであることを表明したシモーネ・コルシもいた。彼が序盤ではリードしたが、レースをコントロールしていたのはヘレスのウィナー、ミカ・カリォだった。彼は仕掛ける時が来るまでじっとこらえ、その後十分な差をつけて勝利した。ティト・ラバトが3位に入ったことでマルクVDSレーシングチームがチャンピオンにまた一歩近づいた。ラバトは99ポイントを稼いでトップに立っているがカリォはわずか7ポイント差まで詰めてきている。マルクVDSの2人にとって唯一の脅威はMoto3から上がってきたルーキーであるポンスチームのマーヴェリック・ヴィニャーレスとルイ・サロムだろう。しかしヨナス・フォルガーもルマンではいい結果を残している。土曜の予選でポールを獲得した彼は確実に6位でゴールしている。

これはMoto2が比較的楽だということを示しているのかもしれない。3人のMoto3からのルーキーがすぐに表彰台争いや優勝争いができるのだから。マーヴェリック・ヴィニャーレスは確かに特別なライダーで、ルイ・サロムもヨナス・フォルガーもなかなかである。しかしマルク・マルケスやスコット・レディング、ポル・エスパルガロといったライダーが最高峰クラスに上がってしまった今、Moto2ライダーのレベルは2年前とは違う可能性があると言えよう。

最後にひとつ話題を提供しよう。ここのところ特にMoto2に関しては革新的アイディアが不足していると我々は嘆いてきた。ワンメイクエンジンにワンメイクタイヤがその一因と言われている。しかし最大の問題はチームが過度に保守的であるということだろう。フレームデザイナーの一人は彼の欲求不満について私にこう語った。「チームの連中はそでが1967年型マチレスで使われていないとだめだと思ってるんだ」 そんな中フランス人ワイルドカードライダーであるルカ・マイアスが乗ってポイント獲得争いまでしたトランスフィオルマのマシンはいいなぐさめになった。結果的には18位だったが彼のマシンのフロントエンドはホザックに似たフィオール式のそれだったのだ。これは固定式のフロントフォークがステアリングヘッドに軽量なアームとシングルショックで連結されたものだ。そもそもテレスコピック式フロントフォーク用に最適化されたワンメイクタイヤに合わせてこれをセッティングできるというのはすごいことである。そして結果がコンセプトの良さを証明することとなった。予算もライダーの技量もそれほど恵まれてはいない中での18位というのは実に見事な結果というしかない。
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ほう、そんなマシンが走っていたんですね。今後に期待!

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