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2014 ヘレス 日曜まとめ:スペインの情熱、非スペイン人の優勝、そしてエイリアンの中のエイリアン

お休み中なのでMotomatters.comの長文まとめいきます!主にマルケスのすごさについて。
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ヘレスにはいつも特別な雰囲気がある。南スペインのヘレスサーキットほどファンが熱狂するようなモーターサイクルレーシングの礼拝所はそうはないだろう。世界のどこでもモーターサイクルレーシングのファンというのは情熱的なものだが、ヘレスのファンは特別だ。彼らの情熱は特製のスパイスだ。アンダルシアの経済は相変わらず低迷しているものの、日曜の観衆は去年の111,000人から117,001人(有料入場者)に増加した。経済状況とは関係なくモーターサイクルレーシングの心意気は未だに健在なのだ。

とは言え去年とは異なりスペインのファンは表彰台中央を自国ライダーが独占するのは観られなかった。Moto3とMoto2では非スペイン人が優勝したのだ。MotoGPの表彰台すらスペイン人による独占はかなわなかった。下位の2クラスではチャンピオン争いは振り出しに戻っている。まあMotoGPクラスはそうでもないが。マルク・マルケスがランキングトップを確実なものにしたMotoGPクラスでは恐怖政治が3戦連続から4戦連続になってしまっている。今シーズンの残りのレースも容赦ないマルケス(Marc the Merciless:ジャーナリストのマイケル・スコットの命名)によるレースが繰り返されるだろう。この状況が気にくわないファンはMoto2時代の様子から「レース殺しマルク」(Murder Marc)と言っているが。何を言われようが彼が4連続ポール・トゥ・ウィンをやってのけたのは事実である。

レース展開は多かれ少なかれそういう感じだった。Moto3ではロマーノ・フェナティが2連勝を飾りランキングトップのジャック・ミラーとの差を5ポイント縮めることとなった。Moto2ではミカ・カリォがティト・ラバトの支配を打ち破ったが、マルク・VDSチームにとっては連勝となっている。そしてMotoGPではヴァレンティーノ・ロッシが再び表彰台に戻り、マルケス以外のライダーとしてはトップに立った。マルケスが予選で見せた戦略と速さの通り、MotoGPクラスの接戦は幻に終わったのだ。マルケスがトップに立って優勝争いを終わらせるまでには3ラップしかかからなかった。ゴールラインでの差は1.5秒にも満たないが、これはマルケスがウィリーでゴールしたために2秒失ったからである。マルケスの勝利を疑う者は一人もいなかったろう。

いつも通りMoto3が最高のレースだった。大集団がつかず離れずラップを重ね、その後小集団に分かれていった。最後にはロマーノ・フェナティがアルゼンチンに続いて初勝利を挙げたヘレスで勝利を飾ることとなった。アルゼンチンでの勝利が幸運と間違った判断によるものだとしても、今回の勝利には文句がつけようがないだろう。彼はMoto3のレースを支配していたのだ。その様子はオースティンのミラーにも似ていた。最初からリードを保ち、抜かれればすぐに抜き返し、常に状況をコントロールしていたのだ。エフレン・ヴァスケスやアレックス・リンスのチャレンジを退けジャック・ミラーに対して5ポイント差まで迫っていた。今後も期待できるだろう。

Moto2はかなり状況が異なっていた。ミカ・カリォが毎ラップリードを広げ、ポール・トゥ・ウィンを飾ったのだ。最初から最後までレースを支配するという実に印象的なレースだった。フィンランド人の彼はティト・ラバト打倒の最有力候補であり、ラバトの調子が悪ければ確実にポイントを稼いでいる。カリォとラバトの差は16ポイントまで縮まった。4位に入ったラバトはマーヴェリック・ヴィニャーレス、ドミニク・エガーターには34ポイントの差をつけており、未だランキングトップである。マルクVDSチームはMoto2参戦2年目にして確固たる地位を固めたと言えよう。

そして最も期待が高まるMotoGPクラスである。とは言え3周目でレースは終わってしまったのだが。序盤はカタールのように白熱したものに見えた。ヴァレンティーノ・ロッシとホルヘ・ロレンソがマルク・マルケスと真剣なバトルをしていたのだ。しかしマルケスが差を広げ始めるとレースは実質的に終わってしまった。マルケスはヴァレンティーノ・ロッシが率いるセカンドグループよりも0.5秒速いラップタイムを刻み、中盤にはセーフティリードを築いてしまったのである。

ラップチャートを見ればマルケスがいかに楽にレースを支配していたかがわかる。彼が他のライダーより0.4〜0.5秒速かったラップでさえ、第2セクターではタイムを落としていたのだ。ここは4コーナーと5コーナーの中間地点からバックストレートのスピード計測地点までの間になるのだが、実質的には一つのコーナーしかなく、そこでマルケスは0.1秒か0.2秒の遅れをとっている。マルケスが記者会見で語ったところによれば、コーナー進入で問題を抱えていたとのことだ。マシンの反発が強く、思った通りのスピードが出せなかったらしい。そこでマシンを止めんばかりのスピードまで減速し、マシンを立てたままコーナーに進入、そのまま縁石上をスライドさせグリップを得ていたという。

ファンや、そして私のような経験のあるジャーナリストにとってもこれは不可解な発言である。縁石でグリップ得るとはどういうことだろう。そこで記者会見で彼に質問してみた。神ならぬ身にも理解できるように説明してもらえないだろうか、と。マルケスの隣に座っていたダニ・ペドロサが瞬時に「そう!僕も知りたいよ!」と反応して会場の爆笑を誘っていた。ペドロサが気難しくてユーモアがないというのは不当な評価である。確かにそういうチャンスは少ないし、少しほぐしてやる必要はあるとは思うが、面白いこともちゃんと言えるのだ。

チームメイトやライバルに自分の走りを理解されないという状況は、実はアドバンテージが絶大だということこを示している。マルケスが良い例だ。これはマルケスがどれほど先を行っているかも示しているのだ、マルク・マルケスはライバルを支配している。しかしこれはヴァレンティーノ・ロッシやミック・ドゥーハンとはやり方が違うということは言っておかねばなるまい。マルケスの相手は史上最高のライダーたちである。ロッシやドゥーハンのライバルたちが弱かったとは言え、この2人を責めるべきではないのは当然であり、彼らもその時代の状況で戦うしかなかったのもよくわかる。しかしマルケスが戦っている相手はこの2人の相手よりも優勝回数が多く、チームメイトもチャンピオン候補であり、チャンピンを獲得していないライダーとしては最も才能がある一人なのだ。

なにはともあれマルケスの今シーズンはミック・ドゥーハンの1992年を思い出させる。あの年、彼はビッグバンエンジンのNSR500を得てウェイン・レイニー、ケヴィン・シュワンツ、ワイン・ガードナー、エディー・ローソン、ジョン・コシンスキーといった名だたるライダーを負かし続けたのである。彼の支配はしかしアッセンの病院で終わりを告げた。骨折した大腿骨が感染症にかかってしまった結果、復帰が遠のいてしまったのである。2014年シーズンのマルケスはホルヘ・ロレンソ、復活したヴァレンティーノ・ロッシ、そして同じマシンに乗るダニ・ペドロサと戦っている。

マルケスの鉄拳による支配はレースによる興味を削いでいるのは事実だ。経験豊富なあるスペイン人ジャーナリストの言葉に集約されるだろう。「マルケスがいなかったら、ここ数年で最高のレースだったよね」
現時点でマルケスの勝利への渇望はレースをつまらなくしていると言えよう。マルケスが学ぶべきはバトルを楽しむことである。ヴァレンティーノ・ロッシがMotoGP時代の最初の頃にやっていたようにだ。マルケスにはロッシが2002/2003年にライバルに対して持っていた優位性がある。2003年のフィリップアイランドでは黄旗追い越しで10秒のペナルティを科せられたが表彰台争いに加わり、結局2位のロリス・カピロッシに12秒の差をつけて勝利を飾った。これがロッシの最も偉大なレースであり、彼の実力を思うがままに示したものである。

ロッシの実力は当時ほどはないが、それでもヤマハに戻った理由、すなわち速さをとりもどしつつある。2013年にジェレミー・バージェスと袂を分かつという賭けに出たが、それも吉と出つつある。冬期テストで見つけたセッティングが効果を見せ始め、彼は前で走れるようになった。彼が言うところの「トップライダー」に追いついてきたのだ。週末ごとに、特に彼が得意とするサーキットでは表彰台争いができるようになっている。ヘレスでは2位に入った。しかもホルヘ・ロレンソとダニ・ペドロサの2人を楽々と破っての今シーズン2回目の2位である。

ヴァレンティーノ・ロッシの最大の問題は「トップライダー」たちが遅れをとっていることである。ホルヘ・ロレンソもダニ・ペドロサも新たにやってきたマルク・マルケスとは違うレースを戦っているのだ。「エイリアン」という言葉はもう彼らにはあてはまらない。MotoGPの3つのカテゴリーとは、マルク・マルケス、モヴィスターヤマハの2台にダニ・ペドロサ、そしてそれ以外、ということになってしまった。

ペドロサはもう少しでロッシを負かすところだったが、リアタイヤのスライドでタイムを落としてしまい3位に終わった。今年のペドロサは前年までとは違い、スタートが悪く最初の数周も遅いが、次第にスピードを上げていくという展開となっている。セッティングの方向性が変わったためで、彼がレース後に語ったところによれば、かつては弱点だったレース終盤を中心にセッティングを組み立てているとのことだ。ちょっとセッティングを逆に振りすぎたのではないかとも思う。レース序盤で遅すぎはしないか。月曜のテストではこの点が中心となるだろう。レースを通じての強さが必要とされているのだ。

ホルヘ・ロレンソはタイヤに苦労しているようだ。結果が出ないことについては手術後に冬のトレーニングが充分できなかったことを理由に挙げている。現時点ではロレンソはレース終盤まで体力が続かないと言っている。彼に必要なのはトレーニングであり、それができればもっと戦闘力は上がるだろう。ルマンではもっと状態はいいだろうし、ムジェロではさらに良くなっているだろう。トレーニングで自分の好みでないマシンとタイヤに慣れるということである。

ロレンソのチームのボスであるウィルコ・ジーレンベルグは単に体力の問題ではないと考えている彼によれば「去年より体調はいい」とのことだ。「問題は自分の好みではないマシンとタイヤで走るのが去年より体力を消耗させている」と彼は言う。矛盾しているように見えるがロレンソの生等かなライディングは非常に体力を消耗するのだ。ロレンソのライディングはスローモーションのように見えるが、そこまでスムーズにしかもゆっくりとした感じでライディングするのは心理的にも身体的にも強さが必要である。好みでないタイヤと燃料制限のせいで去年ほどレスポンスが良くないエンジンではロレンソの求めるスムーズライディングをするのはたいへんなことなのだ。

コンディションもMoto2走行後ではそれほど助けにならなかった。FP4で見せたようなすばらしいペースを発揮できなかったのだ。Moto2マシンのラバーマークのせいでかえって滑りやすくなっていたのだ。むしろ状況は悪くなったと言えよう。ロレンソはダニ・ペドロサに抜かれた後はペースがどんどん落ちていった。

MotoGPクラスで最高だったは5位争いだった。誰が前に行ってもおかないくなかったろう。結局これを制したのはアンドレア・ドヴィツィオーゾだった。彼はアレイシ・エスパルガロをドゥカティのパワーで負かしたのだ。エスパルガロは週末を通して苦労続きだったグレシーニホンダのバウティスタにも負けてしまった。レース後いらいらした感じでエスパルガロは語っている。「もしドヴィが友達じゃなかったら1コーナーではじきとばしたかったですね」

アレイシ・エスパルガロがいらいらしていたのとは比べものにならないほどカル・クラッチローは起こっていた。ワークスドゥカティの彼はブレーキトラブルでリタイヤしている。その理由はブレーキフルードの沸騰だったようだ。しかし対策は未定である。カタールでの電子制御トラブルに続き、3レース中2レースでマシントラブルに見舞われたクラッチローは激怒しながらこう言っている。「激怒していたように見えたろうけど、実際そうだったんだ。復帰しようとがんばって、2週間一瞬の休みもなく回復に努めたってのに。高圧酸素療法室とかトレーニングとか、でもクソみたいな3周で終わってしまった。ハッピーなわけがない。こんな状況はごめんだよ」さらに彼はドヴィツィオーゾの結果について
ヤマハやホンダから20秒も離されているというのはろくな結果ではないと言っている。しかし状況は変わるだろうとも彼は語った。

いずれにせよマルク・マルケスが2014年のチャンピオン最有力候補であることには変わりがない。彼がクラッシュや謎のトラブルに見舞われない限り。4連続ポール・トゥ・ウインである。彼が状況を支配しているのは間違いない。足の骨折によりテストを欠場していることを考えればものすごいことである。問題はマルケスがこれ以上調子がよくなるだろうかということだ。マルケスファン以外にとっては長い1年になりそうである。
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