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2014アルゼンチンGP 日曜まとめ:新しいサーキット、ドゥーハン暗黒時代の再来、ロッシ復活の可能性


Motomatters.com
より。
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テルマス・デ・リオ・オンド・サーキットで開催されたアルゼンチンGPには多くの賞賛の声が上がっている。まず最初に褒められるべきはサーキットそれ自体であろう。設計者のヤルノ・ザフェッリは平凡なレイアウトだったこのサーキットに適切なコーナーを再配置し、その結果爽快でしかも難しいサーキットに生まれ変わらせたのだ。抜き所は多く、しかも様々な種類の難しいセクションがあるため、チームもライダーも自分たちの強みを発揮できるところに集中しなければならないが、そのせいで弱みもはっきりしてしまうのである。さらに最終セクションは最後のアタックに最適だ。ロマーノ・フェナティのようにペナルティポイントも覚悟してとなるが。バイク用サーキットとしては最高のコースである。もしドロモ社のヤルノ・ザフェッリがヘルマン・ティルケのかわりに多くのサーキットで使われていたら、見応えのあるコースが増えていたに違いない。

唯一の問題はコースがまだ汚れており、その結果バトルが少なくなってしまったということだろう。ライダーがラインを外すとグリップを失いタイムを落としてしまうのだ。レースでは幸いなことに誰もがどこかしらでラインをはずしたことで、結局差がつかなかったのドが。路面状況が良くなればさらに抜き所は多くなり、レーシングラインの種類も増えるだろう。テルマス・デ・リオ・オンド・サーキットがカレンダーに加わったのは本当に喜ばしいことだ。

観客もライダーも同じことを思っている。日曜の観客は53,000人と予想の70,000人を大きく下回ったが、カレンダーから外されたラグナセカよりも6,000人多い。周辺に主だった都市は無いにもかかわらずである。観客数はさほどではなかったにしろ、雰囲気は最高だった。生のレースを心待ちにしていた中南米から多くの観客が集まったのだ。ドルナがその気持ちに応え、そして観客がやってきた。

レースの様子はいろいろだった。Moto3はスリリングであり、Moto2では支配力が示され、MotoGPは予想以上に接近戦となった。最高だったのはMoto3である。ジャック・ミラーが優勝候補の最右翼だった。アルゼンチンのような高速サーキットでは250cc4ストロークでの逃げのレースは無理だろうし、スリップストリームの使い合いに持ち込まれるのは間違いないところである。ミラーは序盤ロマーノ・フェナティ、そしてエフレン・ヴァスケスとの争いを繰り広げ、その後それにアレックス・マルケスとアレックス・リンスの2人が加わった。リンスはヴァスケスとからんで遅れてしまい、残るミラー、マルケス、フェナティの争いとなる。トップはめまぐるしく変わっていった。バックストレートエンドの右のきつい5コーナー、7コーナー、1コーナーが抜き所とだった。しかし最後の2つのコーナーとなったところでミラーは自分が勝てると思ったことだろう。彼はアレックス・マルケスのスリップにつき、13コーナーでトップに立った。ここまでは完璧に予定通りである。彼が予想していなかったのはロマーノ・フェナティが最後にアタックをかけてトップに立とうとしたことだろう。無理をしたフェナティはタイヤを滑らせマルケスとミラーに接触してしまう。フェナティが言うにはフロントタイヤのコントロールを失ったせいで止まりきれなかったということだ。

しかしそのおかげでフェナティは勝利を飾った。一方レースディレクションの決定で彼にはペナルティポイントが1点科せられることになる。フェナティも無理をし過ぎたが、あれはミスであり、意図して他のライダーをはじき出そうとしていたわけではなかろう。ミラーは激怒していたが、それでも結果は受け入れている。シーズン序盤としては充分な17ポイントのリードをフェナティとの間に保っているからだろうが、それでも復讐を心に決めているだろう。次にフェナティが近づいてきてもミラーには準備ができているはずだ。ファンが楽しみにしているのはそういうことである。レースディレクションはそうでもないだろうが。

接戦となったMoto3の見た後には否が応でもMoto2への期待が高まることになった。プラクティスタイムも接近しており、多くのライダーがトップと1秒差以内にいたのだ。しかしティト・ラバトにはバトルをするつもりはさらさらなかった。彼は独走してそのまま勝ってしまう。ラバトのアドバンテージはミラーのそれより大く、チームメイトのミカ・カリォに優勝ポイントの25点を上回る28点の差をつけることになった。彼のポイントリードは安定性のおかげである。ライバルであるヴィニャーレスはアルゼンチンでクラッシュし、ヴィニャーレスのチームメイトであるMoto3時代のライバル、ルイス・サロムが表彰台を獲得する結果となっている。

ベルギー人ライダーのシャヴィエル・シメオンがテキサスでの失敗を取り返し2位に入った。今回シメオンは冷静でありミスをしなかったのだ。ラバトに追いつくには離されすぎていたが表彰台は目の前だった。ちなみにこの日がんばったベルギー人ライダーは彼だけではない。Moto3ではリヴィオ・ロイが自己最高成績である4位に入っている。これはベルギー人ライダーとしては出色の成績だ。しかも彼は17歳の誕生日だったのだ。アッセンで開催されたワールドスーパースポーツではミハエル・ヴァン・デル・マルクがデビューウィンを飾り、ベルギー人には最高の1日となったろう。

そしてMotoGPである。最初の数周は最高にエキサイティングだった。逃げを打つホルヘ・ロレンソを負うための激しいバトルが展開されたのだ。しかしマルク・マルケスが2位集団のトップに立ちロレンソを追い始めるとレースの興味は急速に失われていった。冷静にロレンソの後ろを走り、チームメイトのダニ・ペドロサが追ってくるのを知ったとたんにトップに立った彼は後にラップタイムを0.5秒ほど落として悠々と勝利を飾ったのだ。アルゼンチンで今シーズン3連勝となったマルケスはペドロサに19ポイントの差をつけることとなった。

ロレンソを抜き去ってすぐに2秒ほどの差をつけ余裕で勝利したことはマルケスにとって優勝がいかにたやすいことかを雄弁に物語っている。マルケスがプラクティスも支配していたことを思えば、それは間違いないことだろう。そして頭をよぎるのは恐怖政治の時代である。前回開幕3連続ポール・トゥ・ウィンを飾ったのはMVアグスタに乗る1971年のジャコモ・アゴスチーニである。このときアゴスチーニは8レースでポールポジションを獲得し、すべてで勝利を飾っているのもいやな前兆だ。1971年との違いはアゴスチーニが乗っていたのは500cc3気筒で、ライバルのノートンマンクスは単気筒、スズキはまだ黎明期の500cc2ストローク2気筒だったことだ。マルケスの相手はホンダ、ヤマハ、ドゥカティのワークスマシンであり、それでも彼は完璧に状況を支配している。

このままの状況が続けばドゥーハン暗黒時代の再来となりかねない。1990年代前半、レースを見る者の興味は誰がチャンピオンになるかではなく、どれくらい早くミック・ドゥーハンがチャンピオンを決めるかだった。グランプリの暗黒時代であり、ファンはワールドスーパーバイクに興味を移していった。接戦もあり、さらに大事なことには英雄であるキング・カール・フォガティがピエール・フランチェスコ・キリのような愛すべき悪役と戦っていた。マルケスにとって、そしてファンにとってありがたいのは、マルケスが暗くて気むずかしいドゥーハンとは異なり、明るい親しみやすいキャラクターを持っていることだ。そしてワールドスーパーバイクのレースは相変わらず素晴らしいとは言え、あの時代の物語性はなく、ジャーナリストが提供するネタも少ない。ファンは他に選択肢がないという理由で、そしてマルケスの明るい性格でそれでもGPを見続けることになるだろう。

マルケス時代が来ることが確定してしまったのか。実はそうでもなりのかもしれない。マルケスの恐怖政治は飛び抜けて優れたマシンによるわけではない。確かにホンダRC213Vは素晴らしいマシンだが2016年にはルールが変わることから状況は多少変わる可能性がある。ただマルケスがMoto2クラスでは力の劣るマシンに乗っていたにもかかわらず支配的だったことを考えると希望は少ないとも言える。Moto2でのマルケスのマシン、カタルニア・カイシャ・スッターは完璧だったが当時グリッドを支配していたカレックスよりは乗りにくかったはずだ。MotoGPにファクトリーオプション、ドゥカティ、オープンの3クラスあることについていろいろ言われているが実際は2クラスしかない。マルケスとそれ以外だ。

ジャコモ・アゴスチーニが私の中で最高のライダーだった時代は長かった。そしてヴァレンティーノ・ロッシがやってきた。ケイシー・ストーナーを本当に理解したときには、彼が最高のライダーになった。彼はその天性の才能でロッシ時代を奪い取ったのだ。そして今はマルク・マルケスがいる。予想を無意味なものにし、他の最高のライダーを平凡に見せてしまう。すぐにマーヴェリック・ヴィニャーレスやアレックス・マルケス、ジャック・ミラー、ことによったらファビオ・クアルタラロがMotoGPクラスにやってくるだろう。そうしたらマシになるかもしれない。

マルケスの才能は疑うべくもないが、マシンの性能差も間違いなくある。RC213Vは燃費が良く2014年型のハードタイヤもヤマハに比べてマッチしている。ダニ・ペドロサと比べるのが公正だろう。ペドロサはランキング2位につけていてヤマハをリードしているが、それでもマルケスには追いつけない。

ホンダのアドバンテージはロレンソをいらつかせている。記者会見でヤマハがどこで遅れているかを聞かれたロレンソは、2013年と状況が同じだと答えている。「去年と同じところで後れをとっていますね。でも去年より差がちょっとだけ大きいんです。ブレーキングもすこし深めに突っ込みたいし、もっと短時間でスピードを落とせるようにしたい。それに加速でもトップスピードでも少し劣っている。全部去年もあった問題です」問題はエンジン開発が凍結されていることで、ヤマハはエンジンに起因する不足分を解決できないということである。ロレンソは言う。「電子制御とシャーシは開発できますけどね。あと自分自身ですね。セッティングもメカやエンジニアと進めたいです」

ここでわき上がってくるのは、なぜヤマハはホンダに有利となるようなルール改定に賛成したのだろうかという疑問だ。燃料制限はホンダの提案だったがヤマハは何の疑問も提示することなく受け入れた。エンジン開発の凍結はドルナの提案だがヤマハはよろこんでこれも受け入れている。自分たちの弱いところを上手に茹でて軽くグリルして白ワインとグリーンハーブを添えて提供しているようなものである。言わば自業自得であり、しかもドゥカティのようにオープンクラスに移行すれば避けられた状況だったのにそれもしなかった。ホンダが導いているとも言えるMSMA(ワークス協会)に反対することなかった。もしヤマハのライダーがマルク・マルケスに勝とうとするなら、とにかく優位性を余すことなく生かし切らなければならない。ホンダの提案を唯々諾々と受け入れていては後れをとるばかりである。少なくともドゥカティには反旗を翻すだけの気概があった。

さて、ヴァレンティーノ・ロッシである。彼はまた4位になった。去年の定位置だ。しかしロッシはアルゼンチンを良い気持ちで出発できたろう。これまでロッシはトップ3にからむ機会もなかったが、アルゼンチンでは表彰台のチャンスもあった。ステファン・ブラドルとからんでしまったことで表彰台争いがてできなかったが、それがなければ表彰台にのれたはずだと彼は言う。

本当だろうか。確かにロッシと前のライダーの差はこれまでより少なくなっている。アルゼンチンではロッシは優勝したマルケスから5秒差でゴールした。レースをリードし3位に入ったチームメイトのロレンソとは1.6秒差だったのだ。ロッシによればペースもよかったし、ラップチャートを見れば表彰台もあり得たことがわかる。ロッシは1分39秒台を12回出している。ダニ・ペドロサは14回、マルケスは17回だということを考えれば大したものだ。20周分のファステストラップの内、8周がマルケス、7周がペドロサだが、4周はロッシによるものである。そしてロッシが出したファステストはマルケスのそれとは1/4秒差しかない。15番目に遅かったタイムも1.3秒しかマルケスと離れていないのだ。

つまりロッシは去年から大きく進化したということだ。今年のロッシは重要なライダーの一人に見えるし、実際そのように語っている。ライディングも大きく変わったし、トップ3に絡める実力をラップチャートでも示している。とは言え彼が「4番手ライダー」という呼び名を捨て去ることができるかどうかは疑問が残る。アルゼンチンでロッシは再びの4位となった。もううんざりだろう。2014年はトップ3に近づいているし、それが彼の今年の目標だ。とは言えトップ3に追いつくのと、これを抜き去って常に表彰台を得るというは別問題である。ロッシはマルケス、ペドロサ、ロレンソの強さをこれからも見せつけられるだろう。どこまで彼は近づけるだろうか。

次のヘレスでのレースが一つの指標となるだろう。マルケスもペドロサもロレンソもロッシもヘレスが大好きだ。でも誰が優勝するかと予想するならダニ・ペドロサではないかと思う。どっしの目標は最終ラップで表彰台争いができるところにいることだろう。しかし彼には強敵がたくさんいる。若き狼たちが襲い来る中、ベテランはどうのりきるのだろうか。
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タイトルの「ドゥーハン暗黒時代の再来」ってのは原文では「Doohanesque Domination(ドゥーハン時代的支配)」ですが、マルケスの勝ちっぷりに暗黒時代がまた、と予感しちゃったので、こんな訳にしてみました。いや、私はドゥーハン時代も楽しんだんですけどね。あの孤高な感じが切なくって。

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