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燃料なのか電子制御なのか?なぜヘイデンとレディングはホンダRCV1000Rで遅れをとるのか?

レギュレーションの読み違えというか考え方の違いでそもそも開発レベルが低いという指摘までされているホンダのオープンクラス用市販マシンRCV1000Rですが、なぜ遅いのかについてMotomatters.comが詳細な分析をしています。がんばって訳出。
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ホンダがMotoGP用の市販レーサーを開発しているというニュースが流れたときには多くのファンがわくわくしたものだ。どれくらい速いのかとか、才能のあるレーサーが乗ればサテライトバイクを負かすことがあるのではないかとか、多くの推測が飛び交った。そして元チャンピオンのケイシー・ストーナーがテストをしてそのパフォーマンスを褒めたときにはますます期待が高まり、テストライダーが乗ったときにはワークスRC213Vの0.3秒落ちだとHRCの副社長である中本修平が語ったときにはその期待が頂点に達した。マスコミが「それはケイシー・ストーナーによるテストか」と尋ねたとき中本の答えはややあいまいだった。「ケイシーもホンダのテストライダーですね」

現役MotoGPライダーであるニッキー・ヘイデン、青山博一、そしてスコット・レディングの手でヴァレンシアテストを走ったRCV1000Rはしかしかなり遅かった。2月のセパンでも状況は変わらず、中本は前述のテストライダーについてやっと明らかにした。「タイムを出したのはケイシー・ストーナーではなかったです。彼は難しいコンディションで何周か走っただけです。0.3秒落ちというのはホンダのテストライダーが出したタイムですね。確かにセパンの結果が示しているとおりストレートスピードが問題だと認識しています。セパンの2つのロングストレートでテストライダーは0.5秒分失っていました」と中本は語ったのだ。

MotoGPライダーによるセパンの走行では実際には2秒もの差がついた。RCV1000Rにかなり期待していたライダーの一人ニッキー・ヘイデンはコーナー進入でかなりタイムを詰めはした。コーナリングとブレーキングは相当改善されていたが彼がドゥカティで出していたタイムを考慮すればそれほど驚くべきことではなかった。マシンがカタールに到着した時にはホンダはさらに改善を進め、最速だったアレイシ・エスパルガロの1.4秒落ちまでもってきている。

レースが始まるまでにはホンダはさらに差を詰めて、アルバロ・バウティスタが出したレース中の最速ラップに対してホンダ市販組最速だったチームメイトのスコット・レディングは0.841秒差のタイムを出している。とは言えわずか0.035秒差だったスコット・レディングとニッキー・ヘイデンがゴールしたのは優勝したマルク・マルケスの32秒後だった。2人の最速ラップタイムと最も遅かったラップタイムの差は2.4秒もあったのだ。上位のライダーは1秒程度の差であったにもかかわらずだ。

パフォーマンスのばらつきと上位ライダーとの差は様々な憶測を呼んでいる。ホンダ市販レーサーとファクトリーオプションの差はどこから来るのだろうか?単にトップスピードの差なのか、それともスピードと加速の両方の問題なのか?そしてその原因は何なのか?

スコット・レディングもニッキー・ヘイデンも燃費がその理由となっている最高速不足を問題にしている。オープンクラスは24Lの燃料が許されているにもかかわらずRCV1000Rのタンクは22.2Lしかないのだ。スコット・レディングはシルバーストンで行われたイベントでBikesportnewsにこう語っている。「もっと燃料を使えればもっとスピードをだせたはずですね。でもそうはならなかった。予選では出せるフルパワーが出せないんです。燃費を気にしてね。燃料があれば10周くらいはトップグループについていけたと思います」 ニッキー・ヘイデンもガス欠の可能性があったためにフルパワーを使えなかったと不満を口にしている。

しかしリヴィオ・スッポ(ホンダのチーム監督)は燃費が問題だとは考えていない。彼がMCNに語ったところでは、問題は電子制御だと言うことだ。彼は言う。「新型のマニエッティ・マレリソフトにマシンを合わせるのに少しばかり苦労していますね」

問題はストレートの馬力なのか(それなら燃料を増やせば解決するだろう)、それとも電子制御なのか?全マシンからのデータなしにそれを正確に見極めるのはかなり難しいことだが、それでも区間タイムを見ることでわかることはある。他のサーキットと同様にロサイルサーキットも4区間に分かれている。ロサイルサーキットの最初の3区間はブレーキングとコーナリングが大きく影響し、一方、最終セクターでは2つの短いストレートと最終コーナー、そして1km以上のストレートへのアプローチとなっている。セクター1はブレーキングと切り返し、そしてセクター1前半部ではストレートスピードが重要だ。セクター2ではコーナリングスピードとブレーキング、加速が重要である。またセクター3では機動性とバンク時のパワーコントロール、セクター4では馬力と最終コーナー立ち上がり加速からストレート前半部でのスピードが試されることになる。セクター3では電子制御が大きく鍵を握る一方、セクター4では馬力とコーナー立ち上がりの加速が重要ということだ。もし電子制御が問題であればセクター3の差が大きくなるだろうし、馬力と燃費が問題ならセクター4の差がつくはずだ。

そこで5人のライダーについて1周目を除く全周回の各セクターの平均タイムを算出することにした。ホンダRCV1000Rの代表としてスコット・レディングとニッキー・ヘイデン、RC213Vの代表としてダニ・ペドロサを使った。彼は他のライダーとほとんどバトルをしていなかったからだ。そしてRCV1000Rと同じ電子制御を使っているが、よりパワフルなヤマハのライダーとしてアレイシ・エスパルガロ、アレイシが使うドルナ提供の電子制御ソフトウェアとの違いを明らかにするためにヤマハ製ソフトウェアを使うヴァレンティーノ・ロッシのタイムも見ている。

まずは5人のそれぞれの平均タイムの生データである。ヴァレンティーノ・ロッシがセクター1〜3で最も速く、セクター4ではペドロサが最速である。これはホンダとヤマハのそれぞれの特質を予想通り表現しているものととっていいだろう。エスパルガロのタイムはどこでもトップに近いがヘイデンとレディングはかなり遅れをとっている。


2周目~22周目の平均区間タイム
         T1      T2      T3      T4
ペドロサ   25.383    30.369    28.672    31.826
ロッシ    25.311    30.303    28.665    31.829
エスパルガロ 25.412    30.391    28.786    32.011
ヘイデン   25.680    30.586    28.938    32.331
レディング  25.597    30.587    28.849    32.474


各セクターのギャップを見るとさらに各マシンの特性がよくわかるだろう。ワークスホンダとワークスヤマハは近いタイムを出しており、オープンクラスのヤマハもセクター2では良いタイムを出しているが、市販ホンダはセクター4での差が大きくなっている。


各セクターの平均ギャップ
        T1      T2      T3      T4
ペドロサ   0.072     0.066    0.007     最速
ロッシ     最速      最速     最速     0.003
エスパルガロ 0.101     0.088    0.121     0.185
ヘイデン   0.369     0.283    0.273     0.505
レディング  0.286     0.284    0.184     0.648

さらに違いを明らかにするために差を割合で表現してみた。下表は各ライダーの最速区間タイムを最速ライダーの区間タイムと比較したものだ。どこで遅れているかがはっきりするだろう。

割合で見るとロッシのヤマハはペドロサに対してセクター1とセクター2でタイムを稼いでいることがわかる。さらに興味深いのはアレイシ・エスパルガロのフォーワードヤマハとの比較である。セクター1とセクター3で同程度の遅れをとっているのだ。一方でセクター2での差はわずかである。最終コーナーとストレート前半部があるセクター4ではトップスピードと仮想が試されるのだが、ここではシームレスギアボックスが効果を発揮しているのだろう。エスパルガロはここでロッシとペドロサに大きく遅れをとっているが、ロッシとペドロサの両方が使っているシームレスギアボックスをエスパルガロは使っていないのだ。

しかしこの比較でもっとも明らかなのはRCV1000Rの問題である。セクター1とセクター4でヘイデンとレディングはロッシ、ペドロサに対して大きく遅れをとっており、セクター2と3ではその遅れは比較的小さいものになっている。ここではロッシとの差は1%以内に収まっているのだが、セクター1では1.5%、セクター4では2%の差となっている。つまりトップスピードが要求される場面で遅れているということである。

ヘイデンとレディングの比較も興味深い。両者が似たようなタイムを出したのはセクター2だけであり、その差はわずか1/1000である。レディングはコーナリングスピードに優れており、Moto2で培われた技術がセクター3できいているものと思われる。難しいツイスティなセクターでヘイデンより0.089秒速いのだ。ヘイデンはセクター4では勝っており、ペドロサの1.59%落ちで留まっているがレディングは2.04%落ちとなっている。しかしストレートエンドと最初の2つのコーナーに入ると再びレディングがトップタイムの1.13%落ちと、ヘイデンの1.46%落ちを上回る結果となっている。これはレディングの体重がヘイデンより10kgほど重いことで最終コーナー立ち上がりからストレートにかけてタイムを落としていることを表しているのだろう。


最速タイムに対する平均タイムの差(%)
        T1      T2      T3      T4
ペドロサ    0.29%    0.22%    0.03%     最速
ロッシ     最速     最速     最速      0.01%
エスパルガロ  0.40%    0.29%    0.42%     0.58%
ヘイデン    1.46%    0.93%    0.95%     1.59%
レディング   1.13%    0.94%    0.64%     2.04%


ライディングスタイルの違いもコースの様々な場所で様々な差を生んでいるとは言え、どこでマシン差がでているかは区間タイムを見れば明らかだ。RCV1000Rは最終コーナー立ち上がりからホームストレートで遅れているのだ。レプソルホンダとモビスターヤマハのトップスピードの差はほぼ無視できるだろうが、アレイシ・エスパルガロとの差(8.4km/h)はかなりのものである。フォワードヤマハの遅さはある程度はシームレスギアボックスのせいだと言えるだろう。ストレートで2速から6速までのシフトアップではパワーロスがないのだから。電子制御もスピード差には効いている可能性がある。フォワードヤマハではアンチ・ウィリーがそれほどうまく効いていないため推進力を最大にできていないのかもしれない。

しかしそれより大きいのがRCV1000Rとワークスホンダの差である。ヘイデンは15.4km/h、レディングに至っては16.6km/hも遅いのだ。アレイシ・エスパルガロと比べてもストレートで7km/hの差をつけられている。区間タイムでもトップスピードでも遅れをとっているということは、やはり馬力に問題があるのだろう。16あるコーナーの内6つが集中しているトリッキーなセクター3のタイムではエスパルガロはロッシに対して0.42%の遅れで、レディングも0.64%遅れに留まっている。2台のワークスマシンの差が0.007秒しかないことを考えれば、ワークスとオープンの差である電子制御とシームレスギアボックスは大きな違いとは言えるが、セクター1と4の差を見れば馬力が最も重要だということは明らかだ。


最高速
    最高速  差
ペドロサ   340.2
ロッシ    338.0  2.2
エスパルガロ 331.8  8.4
ヘイデン   324.8  15.4
レディング  323.6  16.6


結局RCV1000Rの問題は電子制御なのか馬力なのか?区間タイムを見る限りは馬力の問題のようである。電子制御が大きな影響を及ぼすと思われるセクターではスコット・レディングはよりパワフルだが同じソフトを使うオープンヤマハのアレイシ・エスパルガロと同程度のタイムを出せている一方、馬力と加速が重視されるセクターではRCV1000Rは大きく遅れをとっている。コーナー立ち上がりで遅れたまま他のマシンのようなトップスピードに到達できないのだ。

燃料をもっと使えば良いのだろうか?ヘイデンもレディングも燃費を気にしなければならなかったと不満を口にしているし、ストレートで燃料をたくさん使えないのはパフォーマンスにも影響するだろう。カタールで(訳注RCV1000Rの22.2Lの代わりに24Lのタンクを使うことで)1.8Lの余裕ができたとしてもレースタイムの32秒差はどうにもならなかっただろうが、最高速は数km/h上がり、ことによったらコーナー立ち上がりも良くなったかもしれない。ホンダの最高速不足は電子制御単体の問題ではないだろう。電子制御だけではこの大きな差は説明できない。ストレートが長くタイトコーナーが多いサーキットでは、燃料をもう少し使うことで市販ホンダも争いに加われるのではなかろうか。
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なんかホンダは燃費については心配していないって言われてましたけど、RCV1000Rはそうでもなかったってことなんですね。むぅぅ。

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コメント

訳出ありがとうございます!
いつも楽しく拝見させていただいております。

大変興味深い記事です。
各セクターごとの比較は仮定を導くのにとても理論的で、ホンダ陣営のガソリン容量に期待したいところです。
同時にバージョンアップされたソフトウェアへの順応など山積みでしょうが、ぜひ青山選手にはオープントップになってもらいたいです!

投稿: イバッジオ | 2014/03/30 22:34

>イバッジオさん
 Motomatters.comの記事は本当にいつも参考になります。これからもがんばって訳しますんで、楽しんでくださいませ!

投稿: とみなが | 2014/03/30 23:02

あおやまさんの名前も出してあげて欲しい…

投稿: たかしま | 2014/03/31 01:03

青山選手はヘルナンデスのGP13を相手にコーナーで抜いて直線で抜かれの繰り返しになってしまった旨ブログやFBでコメントしてましたね。

投稿: もといのうない | 2014/03/31 07:34

>たかしまさん
 ちょっと訳してて悲しくなりました・・・。

>もといのうないさん
 ああ、それが理由ならいいのですが・・・。

投稿: とみなが | 2014/03/31 21:17

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