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MotoGPの解決力を賞賛しよう

先日のMotomatters.comのDavid Emmet氏のコラムとはちょっと違う意見も訳出してみましょう。Autosport.comより、これも百戦錬磨のジャーナリスト、Toby Moody氏のコラムです。
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レース界ではしばしば間違いが起こるものだ。エンジンメーカーがエンジンを壊してしまったり、メカニックがはずすべきクリップをはずさなかったり、カウルがはがれたり、ボルトが抜けたり、ライダーだってブレーキングポイントを間違えるし、解説者だって複数台が巻き込まれたクラッシュでライダーの名前を間違えたりする(これは私にもなじみのあることだ)。

しかしこうしたミスから謙虚に学ぶ者もいれば、ミスをしたことを認めない傲慢な者もいる。

競争は激しい。特にプロトタイプレベルではすごいものだ。それで間違いが起こる。チーム・ロバーツはルマンでピットで暖気をしているときにV5エンジンのクランクを壊したし、ある年のリオではテレビケーブルが外されてしまった。1レースしか行われないと勘違いしたのだ。

2013年のオーストラリアGPで大失態を犯したのはタイヤメーカーだ。

去年のクリスマスに300万オーストラリアドルをかけてフィリップアイランドには新舗装が施された。これで完璧なレースができるはずだったのだ。2011年にケイシー・ストーナーが文句を言っていたバンプもきれいにならされたのだ。

「あかちゃんの肌のようにきれいですよ」サーキットオーナーの一人であるアンドリュー・フォックスは言った。3mm以上のバンプはなくなったのだ。

しかし超高速の最終左コーナーでタイヤは今シーズン最高温度を記録してしまった。

単にグリップが上がっただけではない。通常は非常に寒いフィリップアイランドが1997年以来の暖かさだったのである。前回のドライレースでは17℃だったのに今回の日曜の気温は28度だったのだ。さらに1000ccマシンは去年から3kg重くなっており、2011年との比較では10kg重くなっていた。

ブリヂストンの根本的なミスは路面のコピーを日本の本社に持ち帰って分析しなかったことだ。

2010年のシルバーストンの時にはこれが行われていた。今年のアラゴンもそうだ。ブリヂストンはサーキット設計をしたティルケからCAD/CAMデータを手に入れてコーナーの曲率やキャンバー、路面のアップダウンを分析しているのだ。これはすごいことである。エンジニアはこのデータにマシン重量とスピードをインプットして必要なタイヤを作り出すのだ。

シルバーストンでもアラゴンでもタイヤの問題は起こらなかった。バルセロナとヘレスは2005年に新舗装となっていたが、当時は自由にテストすることができた。ムジェロが2011年に新舗装となった時にはドゥカティがテストをしているおかげでブリヂストンもフィードバックを得ることができた。

私が木曜にブリヂストンのスタッフに対してフィリップアイランドでもアラゴンと同じようなことをしたかとたずねたら、答えは「舗装の実物は入手しなかったがワールドスーパーバイクのメーカーとチームから情報を得てどうすればいいのか対策はした」とのことだった。

ここがタイヤが日本を出発する前におきた問題である。

若いエンジニアを夜間飛行でメルボルンに飛ばし、コースを走り、新舗装の型を手に入れて即日本に帰ればホテル代を払わなくて済む。確かにMotoGPマシンでテストをするのは理想的だがコストカット策でテストはできないことになっている。それで型を入手して分析する技術が生み出された。

つまり金曜に明らかとなったタイヤ問題はある意味不可避だったと言える。MotoGPのレースディレクションは常にプレスからの非難にさらされる立場だ。そして今回も2013年のオースト等理がGPを開催するかどうかという難しい決断を迫られることとなった。

レース後には東京でも議論になったことだろう。短期的に優先すべきはレースを開催しつつ安全を確保することだった。

最良のプランは26周を2分割してマシン交換のためにピットストップを義務づけることだったろう。しかし日曜のウォームアップはさらに気温が上昇したため、19周に減算してタイヤ1本につき10周を限度とすることとなった。

10周のレースを2回やるのはテレビの放映スケジュールを混乱させることになったろうし、テレビ放映に金を払っている方としては受け入れられないことだったろう。テレビ放映がなければスポンサーもなく、スポンサーがなければ草レースを観に行くことしかできなくなってしまう。

そこで19周のレースで9周目か10周目にピットインすることが義務づけられることとなったのだ。そうすればタイヤがオーバーヒートしてトレッド剥離しライダーを病院送りに、ことによったらもっと悪い事態となることを防ぐことができる。

2004年のムジェロで中野真矢がタイヤバーストにより転倒したのを覚えてる者はあえて必要なリスクを冒さないということを選択したのである。

レースではマルク・マルケスが9周目にも10周目にもピットに入らず11周走ってしまった。

HRCは6500万ドルの予算で運営されているらしいが、10周目後にピットシンしても大丈夫だという間違えた決定を下したのだ。

「実際にはあれはだめな周回と判断されてしまいました」とマルケスは語る。「そういうことになるとは思っていなくて、大間違いでした。プラン自体は完璧でピットサインに従っただけなんですが」

テレビ放映ブースに新ルールが届けられたのはMoto3レースのスタート後で、その時点で私たちが読んでいたのはMotoGPの公式ツイッターだけだった。大事なのは「スリックタイヤ/ウェットタイヤにかかわらずライダーは10周以上してはならない」という文言だ。これだけ見れば間違いようがないのだが・・・。

マルケスが11周目の後にレースに復帰したときホルヘ・ロレンソとの接触があった。これはタイミングが悪かったということもある。マルケスは肩越しに後ろを見て誰も来ていないことを確認したのだが、レース後のクレーンカメラの映像からはわかるが、ストレートは盛り上がっておりマルケスには誰も見えなかったろう。

一方ロレンソもクリッピングにはつけなかったことでマルケスに向かって接近してしまった。彼は後にブレーキングポイントを間違えたと言っている。一瞬マルケスに接触したし、かなり危ない場面だった。

その後すぐマルケスには10周を超えたことでブラックフラッグが出された。11周走った彼のタイヤを見るとまるでダカールで500マイル走った後のようだった。フィリップアイランドで走ったのは28マイルに過ぎないのにだ。左側は惨憺たる状況になっていた。

ロレンソはレースに勝利し、2013年のチャンピオンの可能性もわずかに残った。

今回のようなレースを楽しんだファンもいるだろうし、これは純粋なグランプリではないと怒るファンもいるだろう。

2005年に導入されたフラッグ・トゥ・フラッグのレース自体「純粋」なものではないが、緊張感をもたらしているのも事実だ。

もちろんタイヤ問題がなければこんなことは起きなかった、しかし皮肉なことに短縮されたレースが終わった直後に雨が降ってきたのだ。もしレース終了前でなかったら何が起こったろう・・・。

2005年の前にはレースは中断され、スケジュールはおかまいなしにリスタートされた。例えば2000年のヘレスでの500ccレースでは雨が降ったせいで(さらに250ccのスタートが遅れたせいで)、スタート自体が遅れてしまった。そして15:38分に中断され1時間後に再開、ゴールは17時近くとなっていた。あの日、ピットから表彰台を目指して2時間半後に出てくるマシンにはある種のコミカルな雰囲気があったものだ。

オーストラリアではさらに周回数を短縮した2ヒート制とするという手もあったし、レース自体を開催しないという選択肢もあった。そうしたらMotoGP史上初めてのこととなったろうし、誰もが腹を立てることとなったろう。サーキットに来たのは31,500人に過ぎないが彼らは今回の原因となったアスファルトに向かってビール瓶を投げつけたことだろう。

土曜の午後時点ではレースが中止されるような雰囲気だったが、なんとかクラッシュもなくオーストラリアGPは開催されることとなった。これが何よりも大事なことである。

ブリヂストンとダンロップはドルナとFIMから怒られるだろうが、それでもレースがキャンセルしたり誰かが怪我をしたりするよりましなはずだ。

タイヤのせいででスタートできなかったライダーはいなかった。Moto2のティティポン・ワロコーンを除いてはだが。彼は土曜にエアフェンスがないタイヤバリアにヒットしてしまい、たぶん今シーズンは絶望だろう。

エアフェンスは既に一般的なものとなっているし、タイヤテストよりはずいぶん安いものだ。専用タイヤをオーストラリア用に作ることより、ライダーやファンにとって大事なことなのではないのだろうか?
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こういう意見もあるということで。でも私はブリヂストンとダンロップの大失態だという考えは変わらないなあ。

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