« 公式リリース>オーストラリアGP2013 | トップページ | CVSTOS × MOTONAVI ダニ・ペドロサのトークショーに行ってきた »

2013フィリップアイランドMotoGP総括:とほほな状況が興奮と混乱をもたらした日曜

G+の中継にブリヂストンの山田さんが来たにもかかわらず、特段のコメントはなかったですねえ。
というわけでいつもの信頼のMotomatters.comより日曜の総括を。タイトルからして厳しいです。
============
2013年のティソ・オーストラリアGPを一言で表すなら「盛りだくさん」ということになるのには異論はないだろう。もちろんほかにもたくさん当てはまる言葉はあるだろうし、出版向きの一言もあるだろうが、とにもかくにも週末のフィリップアイランドはさまざまな驚くべき、賛否両論ある出来事が満載だったし、エキサイトするような出来事があったのも誰もが同意するところだ。ダンロップとブリヂストンのせいで起こったタイヤ問題のおかげでMoto2とMotoGPのレースが短縮された上に、MotoGPでは強制的にピットストップが行われることとなった。そのおかげでサスペンスと驚きに満ちたレースとなったのだが、ファンやライダー、パドックの住民の間では議論が分かれることとなった。一方はこれを茶番であるとし、一方はスリルのあるスペクタクルだと言っている。両者の議論は長引きそうな様子だ。

レースが2分割されたことでスリリングなものとなったのは認めるとしても、それが混乱を巻き起こしたことは否めない。日曜の午前中のウォームアップで使用されたタイヤを切り分け分析し、ブリスターが出ることを発見したブリヂストンがレースディレクションに対しての勧告を変更したことが混乱に拍車をかけた。気温がブリヂストンの予想より10℃ほど高くなったことで、フィリップアイランド用に用意したタイヤが新舗装のグリップに対応できなくなったのだ。グリップが増したことでタイヤがより発熱し、さらに気温が高くなったことで限界を超えてしまったということである。レースはさらに短縮され、ライダーは10周を超えて走ってはいけないこととなった。

そこで重大がミスが起きる。ミスは実際はひとつでは済まなかった。決定はMoto3のレース中にされたのだが、これはMotoGPレース開始のわずか2時間ほど前である。決定を正しく伝えるにはあまりに時間がなく、公式発表はチームに直接伝えられることとなった。指示は紙に書かれ、IRTAの公式スタッフがMotoGP関係者の全員に配ったのだ。これが最初の間違いである。ここからドミノ倒し的にチャンピオンシップを左右するミスにつながっていくのだ。もしライダーミーティングが開かれていれば、全ライダー、そして重要なチームメンバーが集まって説明を受けることで、正確なルールとその意味するところがわかったろう。もちろんそれは簡単なことではない。ライダー全員を一か所に集めるのは猫を一か所に集めるのと同じくらい難しい上に、ドルナは他のモータースポーツで行われているような、遅刻に罰金を科すといったことはしていないのだ。そんなわけで1枚の紙切れが各ピットに同時に渡されただけだった。ピットにはスケジュール、タイヤ選択用紙、ギア設定用紙、タイミングチャート、公式注釈等々の数多のA4用紙があふれかえっている。その中に今回のルールと違反した場合のペナルティが書かれた紙が加わったのだ。

次のミスはレプソルホンダのピットで起こった。エミリオ・アルサモラ、サンティ・エルナンデスを含む少数のスタッフ(マルケスによれば4人)がルールの意味するところを理解するために集まり、そこで次のルールに注目することとなった。

3.ライダーはスリックタイヤ/ウェットタイヤにかかわらず10周を超えて走ってはならない。これは9周目以前にマシンを交換した場合には再度マシンを交換する必要があるということである。

彼らの解釈によればこれは10周フルに周回して良いということであり、レプソルホンダのピットはフィニッシュラインの手前なので11周目ピットに入れば良いということであった。そうすれば10周しただけで11周はしていないことになる。11周目の前にマシンを乗り換えたことになるのだ。

彼らは間違っていた。ルールを破らない限界まで最大限に解釈することを急ぎすぎたせいで、それ以前にルールを破っていることに気付かなかったのだ。次の項目を読めば違反は明らかである。

2.全ライダーは最低1回は新品タイヤを装着したマシンに乗り替えなければならない。通常の状況ではこれは9周目終わり、または10周目終わりのみ(強調はEmmet氏による)に交換が許されているということである。

解釈の余地はない。「10周目終わり」の意味するところは間違いようがないだろう。10周目のフィニッシュラインをまたぐ前ということである。もしピットに入らず11周目に入ってしまえば、10周は終わってしまうのだ。

マルケスは10周目の終わりにピットに入らなかった。一方ホルヘ・ロレンソはピットインしているにもかかわらずだ。その時点でロレンソはマルケスをリードしており、マルケスの目の前にいたのだ。マルケスは次の周も全力で走り、チームの指示に従って次の周にピットインした。

結局この選択は大きな損失となった。設定したルールが破られたことで、レースディレクションは短い検討の後にマルケスを失格とする裁定を出した。ブラックフラッグが出され、マルケスは結局リタイヤとなったのだ。

チームとHRCの反応はすごいものだった。すべての状況はMotoGP公式サイトのビデオ(ありがたいことに無料)でわかる。HRC副社長の中本修平はレースディレクションの決定に強い口調で抗議している。レプソルホンダチームのトップであるリヴィオ・スッポはレースディレクションに直接火のように激しい抗議を行っている。しかしそれもむなしかった。ホンダは条文の解釈論に持ち込もうとしたものの、レースディレクションはそれを一顧だにしなかった。レースディレクターとなる以前、マイク・ウェッブは長年MotoGPのテクニカルディレクターをやっていたことで、チームがいかに自分に有利なように条文を解釈しようとするかよくわかったいたのだ。このため、常にレースディレクションの発するルールは明解なのである。

それにこのようなギャンブルは必要なかったのだ。マルケスは43ポイントのリードを保ってフィリップアイランド入りしている。ホルヘ・ロレンソがオーストラリアで速いことを思えば、ここでタイトルを決定することは難しいにしてもだ。ロレンソの素晴らしい速さを思えばここで勝つのは難しかったろうが、それでも勝ったとしてもダニ・ペドロサの助けが必要だったのだ。解き放たれたロレンソの前でホンダの1台だけでなく、2台までもがゴールするのはほとんど無理な相談である。

フィリップアイランドでタイトルを決定すれば、それはそれで良かったろうが、まあそれはおとぎ話のようなものだ。ホンダが所有するコースである日本のもてぎにタイトルをかければよかったのである。そうすればホンダの重役の前でタイトルを決定することになったわけでもあるし。もてぎはホンダ向きのサーキットである。ヤマハは燃費やハードブレーキングを必要とするコーナーに苦しんでいるのだ。もしマルケスと彼のスタッフが普通の手を打ってルールに厳密に従っていたら、もてぎでのタイトル決定は楽なものだったろう。しかし彼らは賭に負けたのだ。

今回の賭は問題続きのホンダを示す象徴的な出来事である。土曜にはプラクティスでエンジンマウントボルトがゆるんで、もう少しでペドロサが転倒するところだった。去年のミサノではペドロサのスタッフがグリッドでミスを連発し、その結果ペドロサはタイトル争いから脱落している。HRCは年間5千万〜7千万ユーロをMotoGPに費やしているが、これは少なくともヤマハの20%増し、ドゥカティの2倍にはなるのではないだろうか。しかも世界最高の3人のライダーの内、2人を独占しており、最高のマシンも作っている。それでも必要のないリスクを冒し、まるで中学生のようなミスをしてしまったのだ。

状況はもっと悪くなった可能性もある。マルケスのタイヤが消耗しきっていたことはラッキーハイツでハイサイドを起こしそうになり、ピット入りする周にはひどくスライドしていたことからもわかる。ピットインしたときにはタイヤの左側は完璧に削れており、カーカスからは塊でゴムが剥離していた。ブリヂストンは別に冗談で10周を超えて保証はしないと言ったわけではないのだ。マルケスのタイヤはかなり危険な状態だったように見える。

リスクについて言えば他にもミスはあった。ミスと言っていいのかどうかは議論のあるところだが、ストレートの奥深くまで延長されたピット出口は問題であったと言えるだろう。非常に狭いピット出口のスピードを制限して、ピット出口を離れたら加速するようにするために設けられたものだが、1コーナー近くまで延長されていたのだ。このドゥーハンコーナーは超高速コーナーである。延長された白線は、これを踏み越えたペドロサに1ポジションダウンのペナルティを科すことになったが、それだけではない。マルケスがピット会うとするときにおそろしい危険を生じさせたのだ。彼はピットレーンを出るときに振り返ってはいるが、しかし誰も見えなかった。そして彼が白線を出てフルスロットルとしたときにそれは起こった。

マルケスがコーナーに入ったのは、後ろからロレンソとペドロサが追いついた時のことだったのだ。振り返ったときに見えなくても彼らは時速330kmの速さで走っていたのだ。ロレンソが1コーナーで前の周より少しはらんだとき、外側にはマルケスがいた。2台は接触し、どちらも怪我はなかったがマルケスの腕に強く当たってしまっている。

マルケスはこの件でペナルティを科せられるべきだろうか?ロレンソとマルケスのどちらも、少しは自分に責任があると言っている。ペナルティポイントを科すのは難しいだろう。マルケスはピットレーンを示す白線は過ぎていたし既にレーシングラインに入っていたことのだから。この観点からはマルケスが前を行っていて、後ろのライダーであるロレンソに安全に抜く義務があったとも言える。マルケスはロレンソほどはスピードが出ていなかったというのはそれほど重要な問題ではない。マルケスが周回遅れなら彼にブルーフラッグを出してどかせることもできたろうが、少なくとも彼はレースに復帰しトップに立っていたのだ。

真の問題はピットレーンの出口がコース最速のコーナーの近くにありすぎたということだ。普通はそれほど問題にはならないが、出口が延長されたせいで1コーナーに入るスピードが遅くなってしまったのだ。しかいsこれに関してはレースディレクションに良い解決策は残されていなかったとも言える。ピット出口を通常通りにしておいたら出口に向かってライダーが殺到し、大混乱を招いただろうからだ。それほどピット出口は狭かったのである。どちらの状況でも危険なのには代わりはなかったし、今回は誰も怪我をしなかったことを喜ぶべきなのかもしれない。

そしてダニ・ペドロサだ。彼は延長された出口の白線を踏み越えてしまったせいでレースディレクションから1ポジションダウンの命令を受けた。ペドロサはマルケスがピット会うとした周にそのボードを見ている。ロレンソと接触した際にマルケスを抜いていたが、5周以内に1ポジション落とさなければならない。ペドロサは3周もしないうちにマルケスを先に行かせた。ルールブックの1.21.3項によればポジションダウンは自発的かどうかについて明確に規定されてはいない。ペドロサがポジションを落としたのは自発的に見えるが、いずれにせよペドロサはルールに従ったことになる。

譲る相手がマルケスで良かったのかについては議論が残るところだ。ロッシに譲ってその時点の4番手に落ちなければならなかったのはないかというのだ。マルケスはその時点で規定周回を超えたことで失格となっていたのではないかということである。しかしペドロサはマルケスの後ろに下がり、その時点ではブラックフラッグは出されていなかった。レースディレクションの決定はペドロサがマルケスに譲った後に出されたものであり、つまりはペドロサのペナルティは既に済んでいたということになる。

もちろんブリヂストンがレース周回を走れるタイヤを供給すればこんなことは起きなかった。もしフィリップアイランドでテストをしていればというのはほとんど全てのライダーが指摘しにくいことではあるが。しかしヴァレンティーノ・ロッシはブリヂストンに対してテストをしなかったことだけではなく、今シーズンのタイヤ問題についてきつい言葉を発している。これまでのところ、今シーズンは誰もがソフト側のタイヤを使うことしかできていない。ライダーには選択肢が与えられているとは言うものの、ソフトタイヤしか機能していないのだ。ロッシによればハード側のタイヤは「使い物にならない」とのことである。ロッシは言う。「ブリヂストンはもっとがんばらないといけないですね。それに将来的には新舗装のサーキットではテストをするべきでしょう」

強制ピットストップ付きで短縮されたという茶番になりそうなレースだったのに、楽しめる面もあったし、素晴らしいところもあった。個人的にはピットストップには賛成できないし、ペドロサもそう言っている通りバイクレースは1スティントで常に全力で走り続けるべきだと思うが、ライダーの身のこなしの素晴らしさを堪能できたのは収穫だった。ロレンソはウォームアップで乗り換えの練習をしていたがこの時はうまくいかなかった。そこでウォームアップ後、彼はピットレーンにスタッフと陣取ってピットボックスの前にマシンをもっていき、そこで彼はバイクから飛び降りもう一台に飛び乗るという練習を何回かしていた。この努力は報われたようだ。乗り換えはほとんど時間をくわなかったのだ。

乗り替えスタイルの違いもおもしろかった。ロレンソとペドロサはどちらもジャンプしてマシンを降り、両足で着地し、次のマシンに飛び乗っていた。マルケスは1回転した。左足を振り上げて右足を軸に360度ターンを決めたのだ。そして2代目に飛び乗った。エレガントで効率的で創造的である。カル・クラッチローはちょっと迷ったようだ。ロッシの前でピットインしたのに、ピットアウトではロッシに先を行かれていた。でも今回の乗り替えキングはニッキー・ヘイデンだろう。ある推計によれば彼は他のライダーより1秒以上速かったのだ。同じドカティのアンドレア・ドヴィツィオーゾとアンドレア・イアンノーネを抜いてポジションを3つ上げている。

ホンダが恥ずべき状態のままフィリップアイランドを出立しなければならなかったのも、ホルヘ・ロレンソが2度のワールドチャンピオンに輝いているという事実と無縁ではない。彼はほとんどミスを犯さなかったし、唯一のミスト言えば予選中にカモメに衝突したことくらいだが、このときも見事にカモメの首の後ろに当てて安楽死させているのだ。チームの戦略も完璧だったし、乗り替えも見事だった。何もかも完璧であり、25ポイントを獲得したばかりか、チャンピオンシップポイントも43から18に縮めることができた。ロレンソの目標はヴァレンシアでタイトルを獲得することであり、フィリップアイランドではそれに少し近づいたと言えよう。

ブラッドリー・スミスにも賞賛を送りたい。スミスはこれまでずっと成績を残していないことを非難されてきた。マルク・マルケスと比べられてしまっているのだ。しかしスミスは毎レース着実に進化しており、フィリップアイランドではそれが結実した。トップとのギャップはまだ大きいが彼は少しずつそれを詰めている。そしてザクセンリング以来の成績をおさめたのだ。もうほとんどドゥカティと競ることはなく、つぎのターゲットは他のサテライトライダーとなっている。しかしまだそこには0.5秒ほどの開きがあるのも事実だ。

アレイシ・エスパルガロも賞賛に値する。彼はCRTチャンピオン(そんなタイトルはないが)を決めたのだ。エスパルガロは今年CRTのトップを走り続け、ドゥカティを悩ませた。レースの度に彼は期待以上の成績をおさめ、プロトタイプを喰う活躍を見せている。ARTの可能性のすべてを引き出し、時にはマシンの実力以上に走ってみせた。本サイトも含めて彼の活躍はあまり取り上げられてはいないが、それは単に彼の活躍を讃えるための時間が無いだけの話である。私は毎戦、彼の活躍について書くようにしているが、締め切りに追われてそれもままならない。彼はもっと競争力のあるマシンにのるべきだし、来年のFTRヤマハが速いといいと願っている。来年はエスパルガロ兄弟が激しい争いをすることを期待しよう。

で、今回のレースは成功だったのか、茶番だったのか?まあどちらの要素もすこしずつあるだろう。フィリップアイランドを一言であらわす素晴らしい英語を見た。「omnishambles」である。これは何もかもがうまくマネジメントされていない状態を指す言葉だ。幸運なことに最終的にはなんとかなった。誰もが安全にレースを終えたのだ。もっとひどい、最悪の事態だって起こりえたのだ。

急ごしらえの対策のせいで面白味も増したが、私の趣味としてはここまで人為的でない方がいい。2週間ほど前に書いたことだが、バイクレースは他のプロスポーツと同様に娯楽である。しかしスポーツの純粋さは、その信頼性を担保するためにも重要である。だからこそ娯楽として成立するのだ。もしファンがそこに人為的な匂いを感じたら、見るのをやめてしまうだろう。レースをおもしろくするならタンク容量をさらにへらせばいい。そして統一ECUを導入するのもいいだろう。しかし必要のないスペクタクルはごめんだ。

ピットストップやピット彼の無線は人為的なスペクタクルである。そしてそれはライダーにも危険なものなのはロレンソとマルケスの接触を見てもわかるだろう。バイクレーサーはむき出しで傷つく可能性が高いのである。彼らが直面する危険は最小限にするべきだ。

結論を言おう。こんな混乱した週末に出会って私は少しがっかりしている。MotoGPはバイクレースの最高峰である。なのに、この体たらくでは、いったいどんな状況にこのスポーツが陥ってしまっているというのだろう。
============
まあ海外メディアの例に漏れず、HRCに対してはちょっと厳しすぎる気もしますが、概ね私も賛成。

|

« 公式リリース>オーストラリアGP2013 | トップページ | CVSTOS × MOTONAVI ダニ・ペドロサのトークショーに行ってきた »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/58429532

この記事へのトラックバック一覧です: 2013フィリップアイランドMotoGP総括:とほほな状況が興奮と混乱をもたらした日曜:

« 公式リリース>オーストラリアGP2013 | トップページ | CVSTOS × MOTONAVI ダニ・ペドロサのトークショーに行ってきた »