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ロッシの木製スプーン

原題は「Rossi's wooden spoon」。木製スプーンとは最下位に贈られる賞。でも・・・。

MotorSportMagazineより。
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先日のミサノでのレースはロッシにとってもほぼ3年ぶりと言っていいほど良いレースだった。3年前の2010年、彼はYZR-M1に乗り、これ以上ないほど気持ちがいいと言っていたものだ。

金曜の午後のセッションのほぼ半分に渡って彼はマルク・マルケスを追いかけていた。ほぼテール・トゥ・ノーズでラップを重ね、しかもマルケスが遠くに逃げてしまうこともなかったのに気をよくした彼はこう言った。「凄く楽しかったですね。マルケスのライディングスタイルは本当に楽しいですよ。良いものを見せてもらいました!」

土曜にはさらに状況は良くなり、ロッシはライバルが一人も欠場していない状況では今年初めてフロントローを獲得した。問題が解決したのだ。「いつもなら予選でもっと苦労するんですが、今回はニュータイヤでも攻められましたね」

ヤマハの新型シームレスミッションがかなり役立ったようだ。「マシンは加速でも安定していて楽でした。ですからそれほど苦労しなくても自信を持ってしかも正確に走れるんです。セッティング上での唯一の違いは電子制御ですね。ウィリーが減ったんでアクセルを戻す必要がなくなったんですよ」

別の言い方をすれば、新型ミッションでハンドリングも操舵も楽になり、加速も良くなった結果、レースディスタンスでもライダーの消耗が減ったということである。

しかし決勝での結果は4回連続となる4位に終わってしまった(レースで4位というのはある意味最悪の結果だ)。

マールボロ・チーム・ロバーツ時代のことを思い出す。キング・ケニーやウェイン・レイニーが他のスタッフと共にアルコールで上機嫌となったディナーでのことだ。レストランにこんな声が響き渡った。「誰が4位だったっけ?!」つまりは誰が4位になったかなど誰も気にしていないということだ。ロッシのクルーも日曜の夕方にこうつぶやいている。「4位になることほどむかつくことはないね」

ロッシの4位問題については自らもジョークにしたことがあった。9年前彼が2レース連続で4位になったとき、次のレースでこれを茶化したヘルメットを被ってきたのだ。「イタリアでは4位になると木メダル、ってジョークがあるんだよね。だからIVって書いた木メダル柄にしたんだ」とロッシは言った。

4位では表彰台に上がってファンの前に立つこともライバルの目にシャンパンをかけることも(今度やってみるといい。本当に痛いのだ)、シャンパンに酔うこともできない。

そのかわりに、スタッフに祝福されるトップ3がいるパルクフェルメを横目にピットに戻り、葬式のような雰囲気のエンジニアにマシンを渡すことになる。なにがまずかったのだろうか。

実のところ、4位だったとは言え何もかもが悪かったわけではない。ロッシのベストタイムはファステストラップを出したマルケスの0.137秒落ちであり、ロレンソのタイムからはわずか0.052秒落ちに過ぎない。さらにはダニ・ペドロサより0.2秒近く速かったのだ。つまりスピードはあるということなのである。必要なのはレースを通しての速さであり、セッティングの問題だとも言えよう。

レース後のロッシによる分析は主として二つの問題に焦点があてられた。一つはコーナー親友、もうひとつは彼自身の体格による加速の問題である。

「僕らの最大の問題はブレーキングとコーナー進入ですね。ホルヘや、あとホンダのライダーと比べるとはっきりしてるんですけど、僕より深く突っ込めるんです。これをまず解決しない蹴ればならないと思ってます、まずはコーナー進入です」

この分野では確かにヤマハはホンダに劣っているようだ。ホンダのマシンはコーナー進入でも立ち上がりでもタイトなラインを走れるマシンに仕上がっている。

ロッシのチーフメカであるジェリー・バージェスはこう語る。「私たち気付いたのはホンダの方がクリッピングポイントに近づけているということです。うちよりいいラインでコーナーに入っていく。ホンダはコーナー入り口でのトルクをうまく測定(トルダクター【torductor】と呼ばれるマシンに搭載されたトルク測定器によるものと思われる)してるんですね。私たちが知らない何かノウハウがあるんでしょう」

ヤマハも自分たちのためのトルダクターを搭載する必要があるだろう。やっとシームレスギアボックスでホンダに追いついたところではあるが。しかしこれにも2年半の歳月が必要だった。

もうひとつロッシが抱えている問題が彼の体格だ。「特に(ロッシのM1がフルパワーで走りきるためには21Lでは足りないような)燃費に厳しいサーキットではきついですね。他のライダーより重いんで完走するためにはパワーを絞らないといけないんです」

これには2つの要素が絡んでいる。ひとつはMotoGPクラスにはMoto2やMoto3や、4輪のF1にさえも導入された人間+マシンで最低重量とするルールが導入されていないことだ。もうひとつは21Lという非常に厳しい燃料制限だ。しかもこれは来年には20Lに減らされることとなっている。MotoGPの燃費制限がどれほど厳しいかは、WSBKがこれより25%以上の燃料を許されていることからもわかるだろう。こんな制限には意味がないのではなかろうか。チューンしたロードバイクがGPマシンより燃費が悪いのだ。

バージェスの考えではMotoGPがトータル重量制限を導入しないのは馬鹿げているとのことだ。現在の厳しい燃料制限の下では、体格の良いライダーは二重の問題を抱えることになる。重いライダーを運ばなければならない上、パワーも絞られてしまうのだ。ホンダとの最大の違いはライだ^である。ペドロサはロッシより16kg、マルケスでもロッシより8kgも軽いのだ。

もちろんロッシがスペイン人3人に追いつけないのはそれだけの理由ではない。彼は既に34歳。GPでは18年間戦い、その間に9度のタイトルを獲得している。確かに彼は今でも速いしハングリーだ。しかし昔ほどでないことは彼自身が一番承知している。

バージェスはこう言った。「1年ばかり前にヴァレンティーノが私に言ったんですが、もうホルヘやケイシー(ストーナー)のレベルにはなれないんだとね。でもまだ楽しいとも言ってましたよ。今は表彰台を狙って走るのが楽しいみたいです。ミサノではこれまでにないほど近づいたんですけどね。ヴァレンティーノとダニの間にはそれほど違いはないし、マルケスだってミスを犯す可能性はある。ホルヘは凄く冷静でなにもかも完璧にこなしますね。ホルヘは1周目が速かった(他のライダーより1.2秒速かった)おかげで前が空いた上に好きなラインを走れたんですが、こっちが彼のタイムに近づこうとしてもレースを通して同じタイムを出せなかった。だからもっとがんばっていいセッティングをみつけないといけないんです」

ロッシは既にキャリアの終わりに近づいているのだろう。しかし彼も彼のチームもあきらめてはいない。大事なのは彼がまだレースを楽しんでいるということだ。アッセンのように何もかもが彼に味方をしたときでなければ、もう勝つことはできないだろうが、それでも彼は表彰台争いはできるだろう。だから彼のことを忘れるのはまだ早いに違いない。
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木メダルについてはitatawa GPさんもご参照あれ。

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