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誰を責めるべきか:アラゴンGPでのマルケスとペドロサの接触について

こんな時に頼りになるのがMotomatters.comのデイヴィッド・エメット氏のご意見。冷静に分析しています。ちょっと長いけど訳出。
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MotoGPのアラゴンラウンドは3レースとも見応えのあるものだった。Moto3ではアレックス・リンスがマーヴェリック・ヴィニャーレスのミスを誘う見事な勝ち方をした。ニコ・テロルはMoto2で感動的な勝利を飾った。彼は病み上がりにもかかわらず週末全てを支配したのだ。スコット・レディングとポル・エスパルガロのMoto2チャンピオンをかけた戦いもすばらしかった。結果、わずかながらエスパルガロがトップに立つこととなった。ホンダ向きのコースでのホルヘ・ロレンソの速さやマルク・マルケスの見事な勝利も印象的だった。マルケスはこれでルーキーイヤーにもかかわらずチャンピオンにまた一歩近づいたのだ。ヴァレンティーノ・ロッシにとっても良いレースだったろう。ステファン・ブラドルとアルヴァロ・バウティスタを退け、やっと表彰台に上がることができた。他にもたくさん言いたいことはあるが、今夜はそれらについては語らない。

なぜか。最初はちょっとしたミスだったものが大きな事故につながり、結果は大クラッシュとなったことで、現在レースディレクションが審議を行っている。危険なライディングについて多くの人が語っているのだ。事実を分析すれば何かわかるだろうか?私に言わせればそれはノーだ。しかしまずは事実を整理したいと思う。

我々が知っている事実はこうだ。ホルヘ・ロレンソが良いスタートを決めたが、すぐにマルケスとペドロサに追い抜かれた。ペドロサは5周目、サカコルチョスの坂、8コーナーと9コーナーでマルケスをきれいに抜いた。マルケスはペドロサの後ろで1周待った後に、12コーナーでの進入でペドロサを抜こうとしてちょっとしたミスを犯した。ペドロサに少しばかり近づきすぎた上、ブレーキがほんの少し遅れたのだ。深く入りすぎたのに気付いたマルケスはマシンを起こし、ペドロサをクラッシュさせるのを避けようとしてアウトにはらんでしまう。しかしペドロサのリアホイールにほんの少し接触してしまった。その瞬間はペドロサには何の影響もないように見えたが、マルケスはコースアウトしてしまった。そしてペドロサは数メートル進んだ後に突然ハイサイドに見舞われてしまった。

その後わかったことは、その接触の結果、ペドロサのリアホイールのスピードセンサーと電子制御ユニットを結ぶケーブルが切れてしまったということだ(→写真)。ケーブルはスイングアームの上に設置されており、マルケスが肘かクラッチレバーでケーブルを切断してしまったようだ。スイングアームについた傷を見ると、どうやらクラッチレバーに責任があるらしい。一方マルケスのつなぎの肘についた汚れを見ると、そちらはリアタイヤに接触したようだ。

チームのトップであるリヴィオ・スッポによれば、ホンダのトラクションコントロールシステムにとってそのケーブルは相当重要なものだったようだ。ペドロサがスロットルを開けたとき、トラクションコントロールは機能しておらず、タイヤが路面に食いついた結果ペドロサは投げ出されてしまった。彼はひどい怪我を負ったわけではないが、腰と尻と鼠蹊部に大きな痣をつくり、彼は痛みでまともに歩けなかった。

これが事実である。しかし疑問は残る。最初のそして最大の疑問はマルケスはペドロサのクラッシュに責任があるかということだ。これは当初思われていたより難しい質問だ。そしてどちらの陣営も熱を込めて、しかもそれなりの正当性を持ってマルケスが有罪か無罪かについて語っているのだ。明らかなのはマルケスがミスを犯したこと、ペドロサのマシンのリアに接触したこと、しかしそれ以降のことについてはかなりぐちゃぐちゃな議論になってしまう。ぐちゃぐちゃすぎて、レースディレクションですらその結論をセパンまでに出すようにHRCに依頼したデータを分析するまで結論を保留するくらいなのだ。つまりマルケスが自分の運命を知るまでに2週間かかるということである。

まず、マルケスの接触はペドロサをクラッシュさせるほどひどいものだったかが問題である。マシンがテレビに映ったのを見れば(これにはペドロサのマネジャーであるアルベルト・プーチが大きくかかわっている。彼はスペインのテレビカメラをペドロサのピットに招き入れ、バイクの負った傷を映させたのだ)、ケーブルが明らかに切断されているのがわかる。驚くべきはケーブルが抜けているのではなく切れていることだ。一方の端はセンサーが金属製の突起に接続されていて、これはネジで留められている。そしてもう一方はコネクタでプラスチックの端子に接続されてる。どちらかの端で抜けてもよさそうなものなのに、ケーブル自体が切れているのだ。

ペドロサのマシンについた唯一の傷はクラッチレバーによってつけられたと思われる細くて黒い線だけだ。マルケスとペドロサの接触は本当に軽いもので、ペドロサはコーナーでラインを保持できたくらいである。接触にすら気付かないほどだったろう。問題はペドロサがスロットルを開けたとき、突然マシンが彼を投げ出したことだ。ホンダはリアホイールセンサーに一本しかワイヤーを接続していなかったということである。そこで電子制御がセイフティモードに入り、マシンはトラクションコントロールを失った。ペドロサがスロットルをひねった瞬間に彼は投げ出され地面にたたきつけられることになったのだ。

ここから2つの疑問がわき上がる。ひとつは、なぜそれほど重要なケーブルが剥き出しになっていたかということだ。今回は別のライダーがケーブルを切断してしまったが、クラッシュしたりグラベルを走ったり、ことによったら他のマシンが跳ね上げた石が当たることだってあるかもしれない。つまりマシンがグラベルを走ってもケーブルを切ってしまうことはほとんどないということなのだろう。次の疑問は、なぜホンダのような信じられないほど複雑なシステム、エンジン回転数やギアやバンク角やコーナーのカントやサスの状態やするっとルポジションやエンジントルクやその他諸々を統合して計算し正確なパワーをリアホイールに伝達するというシステムが、スピードセンサーに1本しかワイヤーを使っていなかったかということだ。ドゥカティは両側に1本づつ、計2本のワイヤーを使っている。正しくこのような事故に対処するためである。

さらにセイフティモードになると完全にトラクションコントロールが機能しなくなるというのも疑問である。そこまでインプットが多いのになぜトラコンを止めてしまうのか。高度な技を駆使して入力を補完してライダーを転倒から救うことはできないのか。レースを続けられることを期待して、トラコンが正確に動いていないことを知らせればライダーの手にコントロールをゆだねても良いということでそうしたのか。

これらの疑問にはHRCしか答えることはできないが、公表されることはなさそうだ。私がリヴィオ・スッポに、ホンダはデザインを変える予定はあるかと尋ねると、彼は一言「ええ」と答えて去って行ってしまった。

接触の問題に戻ろう。接触がクラッシュの原因だったのか。クラッシュの原因となる傷を負わせたのは事実であるが、マルケスはそんな軽い接触が大事故につながることを知っていただろうか。誰かがすごい勢いで他のライダーにぶつかってコースアウトさせたりクラッシュさせたりすれば、それは結果に責任を負ってしかるべきだろう。しかし今回のような軽い接触はどうだろう。ペドロサには文句を言う権利はあるだろうが彼はラインからはずれなかったのである。あのような壊れやすい場所にあるセンサーの線を抜いてしまうことが予想できただろうか。

接触は許されるべきだろうか?前レース・ディレクターのポール・バトラーはそう考えている。それがレース上仕方のないものである限りはだが。ここも議論があるところだろう。もし接触で出場停止となるならMoto2やMoto3のグリッドは常に10台以下となってしまうだろう。スコット・レディングとポル・エスパルガロがアラゴンで見せたようなバトルをすれば、どちらも出場停止になってしまう。彼らはぎりぎりのところでお互いに接触していた。しかしどちらも文句は言っていない。

マルケスはかつてこのような接触をしているか?その通りだ。2011年のラタパー・ウィライローとのクラッシュは彼のキャリアの中でも最低のものだろう。そして彼が1レースも出場停止をくらっていないのは前レース・ディレクターのバトラーの傷にもなっている。ダニ・リヴァはそこまで危険なことはしていないのにシルバーストンの事故で2戦の出場停止を科せられている。これは現レース・ディレクターのマイク・ウェッブがこの手の事故に関してより厳しく対処するということを示しているのかもしれない。

マルケスはさらにブレーキングで他のライダーの後ろに突っ込むということがあった。MotoGPに昇格してからはそれほどでもなくなったが。これは彼が意識して気を付けていることだという。しかしヘレスではロレンソとの大バトルの前に何度もロレンソのリアに突っ込みそうになっている。特にバックストレートエンドでは危なかった。Moto2でマルケスと争っていたブラッドリー・スミスによれば、マルケスはセイフティ・マージンを絶対とらず、他のライダーの動きとは関係なく自分の目安でブレーキングをするのだという。

こんな風に他のライダーの動きを無視するせいでマルケスは批判にさらされている。ヘレスでのホルヘ・ロレンソ、そして今度はアラゴンでのダニ・ペドロサ。どちらもマルケスのライディングが近づきすぎる上に限界ぎりぎりすぎると批判している。彼は歩くアクシデントだと言うのだ。ロレンソもペドロサも過去のライダーとの事故を引き合いに出してほのめかす。議論を通じてマクベスに出てきたバンクォーの幽霊のようにマルコ・シモンチェリが見え隠れする。誰も彼の名前を出さないが、彼がセパンで亡くなるまでは常に危険なライディングを批判されていた。

こうしたことでレース・ディレクションはマルケスとペドロサの接触を審議しているのだろう。ロレンソは前々から、自分の走りを変えたのは2005年のもてぎのアクシデントの後に受けた出場停止措置だったと言っている。出場停止にすればマルケスも学ぶだろうし、アグレッシブさをもう少し上手に出すようになるだろう。問題はマルケスがMotoGPに上がってからは、どんな走りをしてもお咎め無しだったことである。危険になる一歩手前でぎりぎり踏みとどまってきたのだ。走りがきれいになることでマルケスにお灸を据えるのがレース・ディレクションにとっても難しくなっている。他のライダーはマルケスが学ぶべきだと思っているにもかかわらずだ。

現時点で手に入る証拠を並べてみると、今回の事故でマルケスが出場停止となるのはフェアではないということになるだろう。ペナルティポイントを加算するほどですらない。今回の事故はブレーキングミスと危険なライディングの丁度中間に位置しているだの。これからどんな資料がレース・ディレクションに提出されるかはわからないが、それが何か議論に影響するようなものとは思えない。現時点ではレース・ディレクションは今回の事故をレーシングアクシデントととらえる方向のようであるし、私はそれに賛成だ。

だからと言ってダニ・ペドロサにとってはフェアな事故とは言えないだろう。アラゴンでのペドロサは勝てるペースだったのだ。なのに奇妙な事故により勝利を失ってしまった。マルケスが転倒のきっかけとなったのか?それは間違いない。マルケスがペドロサを転倒させたのか?これは非常に難しい質問だが、私はノーと答えよう。ペドロサの転倒は小さなミスト設計の失敗と、不思議な連鎖の結果である。これはペドロサの不運なエピソードをさらにひとつ積み重ねる事件ではあったが、彼はこんなひどい目にあうようなことは何もしていないのだ。
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ペドロサかわいそすぎ。

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コメント

問. 誰を責めるべきか
答. HRC
理由:重要部品にプロテクターを装着していない。バックアップの制御系を搭載していない。

今のMotoGPマシンは、コンピューター制御なしでは飛行できない戦闘機の「ユーロファイター タイフーン」みたいなものでしょう。だからその戦闘機は、4重のコントロールシステムを採用しているそうです。人間の制御は不可能だから機械式のバックアップ装置は搭載してないそうです。

コンピューターの制御無しでは危険で乗れないMotoGPマシン。
トラコンのワイヤが断線したらハイサイド。
内蔵されているジャイロが誤作動しても、暴走するかハイサイドをおこすのでしょう。

この問題を本質的に無くすには、燃調以外の制御を機械式に戻すしかないのでは?

投稿: mac | 2013/10/01 19:36

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