« 「クラッチローは真剣にドゥカティへの移籍を考えているだろう」とポンシャラル。 | トップページ | 公式プレビュー>ドイツGP2013 »

よい子のみんなは真似しちゃだめだよ

ロレンソの鎖骨骨折、けっこうたいへんな怪我だったと執刀医が言ってます。SPEEDtvより。
============
医者はよく、同じ患者は二人といないということを言うが、GPサーカスでは鎖骨骨折もそれぞれ違うようだ。ダニ・ペドロサの2回の鎖骨骨折では手術後に復帰まで数週間を要したが、ディフェンディングチャンピオンであるホルヘ・ロレンソは術後35時間、事故から48時間もたっていないのにレースに参加してしまった。関係者の中には、これが危険な前例となりかねないと考える者もいるくらいだ。

ペドロサには常に怪我がつきまとってきた。シーズン前のこともあればシーズン中のこともあったが、いずれにせよ完全復帰までは時間がかかっていた。2003年以降、彼は20回の手術を受けているのだ。その内17回はハヴィエル・ミル医師によるものだ。ミル医師は高名な手の外傷治療の専門医であり、すべてのMotoGPイベントに参加するドリームチームの一人である。ドリームチームはマシンがコース上にあるときは常にフル装備の医療車で待機し、レースで負った怪我の最初の手当を行っている。このチームはミル医師の他、脊椎の怪我の専門医であるエンリック・カセレス医師、内科専門医であるアンヘル・シャルテ医師で構成されている。

当初ロレンソはオランダの地元病院で手術をする予定だったが、予定していた手術室が重症患者のために突然ふさがってしまったのだ。そこでミル医師はバルセロナ総合病院の同僚であるホアキン・ロドリゲス医師に連絡をとった。ドルナの協力の下、プライベートジェットでチーム監督のウィルコ・ジーレンベルグとともにバルセロナに向かったロレンソは、意外な早さでアッセンに戻ってきたのである。ロレンソが飛べるようになったらすぐに戻ってきて、しかもレースがしたいと言っているとわかったときには関係者は驚いたものだが、しかし最終的な決定権はクリニカ・モビーレの管理者であるクラウディオ・マッキアゴデナ医師とアッセンのメディカルチームのオランダ人医師である。両者はいずれもウォームアップへの参加を認め、その後2回目の検査をするよう申し渡した。

ロレンソはトップタイムを出して、その日のレースウィナーとなったロッシからわずか0.668秒遅れの8位という結果でウォームアップを終え、また立ったまま壁に手をついての腕立てや、左腕の上げ下げといった同じ基礎的な検査を受けることになった。そしてこれもパスした彼は結局5位でレースを終えたのだ。

バルセロナで夜に手術を行ったロドリゲス医師はしかしマドリッドの日刊紙エル・ムンドのインタビューに対して、クラッシュから48時間、8本のネジでチタンプレートを固定する手術から35時間後のレースなど絶対にやめるべきだとアドバイスしたと語っている。ロレンソの左鎖骨は3つに折れた上、いくつかの小片も残っていたのだ。

ロドリゲス医師はロレンソに対して術後すぐの骨折の危険性について警告したと言う。「ロレンソは同じ左鎖骨を以前にも折っています。そして今回の骨折は普通のものではなかったんです。骨の小片が散っていて、これが鎖骨の下を通っている動脈と静脈にすごく近いところにあった。こういうタイプの骨折では静脈に深刻な傷をつけていることもあり得るんです。だから過小評価してはいけないんですよ。普通は鎖骨の骨折なんて危険なものではないんですが、今回は違いました。だから最初はレースに出ないよう説得しようとしたんですが、もう彼は出ることに決めていて、じゃあということで避けるべき動きとかレースに向けての危険な点について教えることにしたんです」

ロレンソが禁じられたのは左手を頭より上に上げること、そして左腕は90°以上挙げないことだ。さらにどんな症状が現れたらレースをリタイアすべきかについても告げられた。

結果はあらゆる面から見て良好である。ロレンソが5位に入った翌日も診察を行ったロドリゲス医師はこう言っている。「何もかも完璧ですよ。ロレンソの唯一の不満は問題ない方の腕が痛むということくらいでした。左側の負担を減らすために右腕に負担をかけすぎたんですね。
 ロレンソはものすごくフィジカルとメンタルが強いだけでなく、問題を克服しようという強い意志も持っているんです。でもまたロレンソがクラッシュしたらどうしようかと心配でレースは楽しめませんでしたよ。もしクラッシュしたらプレートが割れるか折れるかして、鎖骨の下を通る動脈か静脈を傷つけかねなかったですからね」

GP関係者の中には新たなガイドラインが必要だと主張する人もいる。ロレンソとほぼ同じような境遇にありながら出場を拒否された2011年カタルニアGPでのコーリン・エドワーズの一件を考えると対応が一貫していないのは確かである。エドワーズは金曜午後のフリープラクティスで鎖骨を骨折し土曜に手術を行い、レースをやりに日曜にサーキットに戻ってきたのだ。クリニカ・モビーレの見立てでは出場はOKであり、コスタ医師がエドワーズの腕を強く引っ張る様子がテレビにも映し出されたりもした。しかしカタルニアサーキットの主任医師であるイザベル・オルナック医師が出場できないと判断したのだった。

GP連続出場記録がかかっていたエドワーズはその渦中でこう言った。「俺がスペイン人なら間違いなく出られたね」

アッセン出場を許可したミル医師は、エドワーズの気持ちは痛いほどわかるが今回の件との一番の違いは国籍やライダーの資質ではなく、地元サーキットの主任医師の判断の違いなのだと私に語ってくれた。

最近になってスペインのソロ・モト誌のインタビューに応じたオルナック医師は自分の判断についてこう語っている。
「コーリン・エドワーズのレース出場を止めたのは術後、時間がたっていなさすぎたからです。ライダーが自分で問題ないと思っても、骨が落ち着くまでにもう2〜3日安静が必要だと判断したんです」

ミル医師も他の医療スタッフもカタルニアでのエドワーズの件や今回のロレンソの件で地元サーキットの医師を批判することは決してないだろう。

これからも医療スタッフは参考になる前例などはないと考えながら、きっと「同じ患者など二人といないし、同じ鎖骨もない」と言い続けるに違いない。

一貫性に欠けるという批判を避けるにはFIMのMotoGPの医療手順書に、術後何時間は出場してはいけない、といった時間制限を記載することくらいではなかろうか。
============
私はアッセンの主役はロレンソだったと思うし、彼の勇気と強さは心から尊敬するけど「危険な前例」と思う気持ちもなくはない。

|

« 「クラッチローは真剣にドゥカティへの移籍を考えているだろう」とポンシャラル。 | トップページ | 公式プレビュー>ドイツGP2013 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69409/57735390

この記事へのトラックバック一覧です: よい子のみんなは真似しちゃだめだよ:

« 「クラッチローは真剣にドゥカティへの移籍を考えているだろう」とポンシャラル。 | トップページ | 公式プレビュー>ドイツGP2013 »