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彼らのハート

公道レースのひとつであるNorth West 200で心拍数の計測を学者さんがやったという記事。BBCより。「時速200(320km/h)マイル下の心臓」というタイトルです。
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<限界を超えるようなストレスにさらされたとき、人間の心臓はどのように反応するのだろうか>

ノースウェスト200に参戦する3人のライダーの協力を得て、スポーツ科学がその疑問を解明する。
北アイルランドの海岸線を時速330km以上で駆け抜けるノースウェスト200は、世界最速のロードレースの一つである。しかも1センチ近くまで接近しての戦いが繰り広げられるのだ。

今回の実験に選ばれたのは3人のライダー。彼らは心拍数モニタとワイヤレスセンサーをつけてコースを走ってくれた。

その3人とはザ・チャンピオン、アラスター・シーリー33歳、そして初参戦のガレス・キーズ22歳。最後はザ・ベテラン、ジェレミー・マックウィリアムズ49歳である。

<心臓にかかるストレス>

ベルファストにあるクイーンズ大学の生化学科のショーン・ロウ博士は心臓にストレスを与える要因とその結果についてこう説明する。

「心臓をコントロールする脳の部位は2か所あります。戦闘時や逃亡時をつかさどる交感神経と、休息や消化をつかさどる副交感神経です。
 拍動を高めたいときには交感神経が働いて心拍数を上げるよう指令を出します。そうやって血流量を増やして増加する要求に対応できるようにするんです。
 一方、リラックスしているときには副交感神経が主導的になります。筋肉への血流量を減らして消化器系への血流を増やすんです。
 運動や精神的なストレス下では交感神経が働いて心臓へのストレスを高めることになります」

<よりハードに、より速く、より強く>

心機能は体力と年齢で左右されるものである。心機能が良い状態であれば心拍数が上がってもストレスは少なくて済む。

「運動の効果の一つとして、心房への血流量を増加させるということが挙げられます。ストレスにさらされても機能の良い心臓であれば、そうでない心臓より心拍数の増加が少ないのです。1回の拍動で送ることのできる血流量が多いですからね」

博士は精神的なストレスがライダーの心拍数を上げる大きな要素だと考えている。

「状況からどの程度のストレスを感じるかによって心拍数が決定されるのです」

<実験結果>
各ライダーの心拍数はイブニングレースで記録された。その直前には激しい土砂降りでコンディションはかなり悪化していた。

ザ・チャンピオン、アラスター・シーリーの心拍数は最も低く、平均心拍数は134/分であり、これは彼の最大心拍数の71%に過ぎない。ラップを通してスパイクと呼ばれる急激に心拍数が上がる場面も最小限である。

ロウ博士はシーリーの心拍数が低く、しかも一定していることに驚いていた。

「ザ・チャンピオンにとっては状況はストレスを感じるようなものではなかったんです。彼はアイスマンですよ。134/分という心拍数は普通の人が早歩きをするくらいのペースなんです。彼の呼吸法も心拍数を低く保つのに役立っているんでしょう」

それとは対照的に新人のガレス・キーズの心拍数は185/分だった。

「この心拍数はツール・ド・フランスでサー・ブラッドリー・ウィギンスがアルプ・デュエを登るときの心拍数に匹敵します。これほどまでの精神的ストレスだとはね。彼の最大心拍数の94%までいってるんです。これは状況にかなりの恐れを感じているということを示しています」

ザ・ベテラン、マックウィリアムズの心拍数は164/分と2人の間に位置していた。

「ザ・ベテランはこのコースを走ったことがありますし、それである程度ストレスは軽減されているんでしょう。でも彼の年の人だと164/分というのは最大心拍数の96%に相当するんです」

<死の危険>

ライダーがどれほど神経質になろうと、あらゆる偶発事故に対応することは不可能である。公道レースでは常に何かが起きるものだし、このレースも例外ではない。

新人キーズは目の前に犬が飛び出してくるという事件に遭遇している。その時の彼の心拍数は204/分まで跳ね上がった。一方ベテラン、マックウィリアムズは目の前数メートルにいる自分のチームメイトとバトルをし、その瞬間心拍数が210/分まで上がっている。

インナーマッスルもまたロードレースでは重要である。

「ライダーはインナーマッスルで下減速に耐えなければならないんです。でも何周もする内に、そうした筋肉も疲れてきます」

公道レースではミスをしないことが必須である。どんなに小さなミスでも深刻な、時には命にかかわる結果に結びつくのだ。ロウ博士はこんな言葉で彼らが直面するリスクについて語っている。
「人間の反応時間というのは0.15秒から0.3秒というところです。ライダーが時速200マイルで走っているときには1秒で90mも先に行ってしまうんです。0.2秒でも18メートルということです。ですからライダーの20m以内の場所で何かことが起こったら、間違いなく激突してしまうんですよ」

<予測不可能に備えるということ>

「心拍数が160、170、180といったあたりでのトレーニングが重要なんです。レースをしている時と同じような心拍数でトレーニングするということです」
こう語るのはアラスター・シーリーである。彼は2012年のノースウェスト200のスーパーバイククラスで勝っている。

多くのライダーが体力をつけるために冬場は深い砂地でモトクロスを行ってもいる。

シーリーのトレーニングコーチであるジオ・カッペロは、丁寧にプログラムされたトレーニングの重要性について語っている。
「レース中、ライダーの心拍数は180/分にもなります。ですからそうした心拍数に対応できるようにしておかなければいけない。有酸素運動で最大酸素摂取量を増やすようなトレーニングをしています」


<心理的ストレス>
マックウィリアムズはストレスとプレッシャーはレースにつきものだということを信じて疑わない。
「それはレースにつきものなんです。楽しいものじゃない。精神力をつかうし、何がコーナーの先にあるかもわからない。チェッカーフラッグが振られたときには本当にほっとしますね。すべてが終わったってね」

新人キーズは頭を真っ白にして目の前のことに集中しているのだという。
「目の前にいるライダーのことだけを考えて、できるだけ冷静でいようとしてますね」

ザ・チャンピオン、シーリーは心拍数を下げるための方法について語ってくれた。
「海岸線の道路は本当に忙しくて、息をするのを忘れていたりするんですけど、それで心拍数が上がってしまうんです。だからロングストレートでは深呼吸してまた落ち着きをとりもどすようにしています」

<時速200マイルを生きる>
高速で走っているときに心拍数に影響を与える要素はたくさんあるが、公道レースに参加するレーサーにとって最も重要なのはレースを愛すると言うことだろう。それがなければこんな高速で命を危険にさらすことなど考えられない。

公道レースによく登場するガイ・マーチンは危険も魅力の一つだと語っている。
「みんな危ないってわかってるんだ。でもその危険も受け入れているんだよ。たぶん僕が参戦するのは危ないからってものあるね。興奮するのが楽しいのさ」
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ビデオでは冒頭から流れるクイーン&デイヴィッド・ボウイのアンダー・プレッシャーが切ないです。「時速200マイルではトップライダーが0.2秒で反応しても20m動いてしまう」というドクターのコメントにもいろいろ思ってしまう。

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