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同期の桜:HRC鈴木社長と中本副社長の対談

LCRのオンラインマガジンであるインスパイア誌に掲載されたHRC社長と副社長の対談を全訳します。

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これからお届けするのはモータースポーツ界の重鎮である鈴木哲夫HRC社長と中本修平副社長の対談である。この対談で二人は率直かつ熱く夢について語ってくれた。

お二人は「夢の力(The Power of Dreams)」を信じてらっしゃいますか?
中本:もちろん。
鈴木:人生で一番大事なのは夢をかなえることなんです。もしきちんとした夢や目標を持っていないと手段が目的にすり替わってしまいます。目標を設定したら次は正しい道を選ぶことですね。
中本;それ以上に大事なことは、夢を持ったらそこにすべてのエネルギーを注ぎ込むことでしょう。

将来の夢を持ったのは何歳の時ですか?
鈴木:10歳の時ですね。ファクトリーマシンを作りたいと思ったんです。
中本:そうですね、大学の時は鈴鹿と筑波でレースをやっていたんですが、残念なことにあんまり優秀なレーサーではなかったんです(笑)。でもレースの世界で働きたいと思い始めたんですよ。

HRCの社長と副社長が同じ大学を出ているということを知る人は少ないですけど、そのころホンダで働くことについて話合ったりしたんですか?
鈴木:2人とも同じゼミにいて、ホンダに行きたいねって話してたんですよ。
中本:私の方が先輩でしたけど1年留年したんですね。それでホンダには同じ年に入っています。そのころはほとんどの大企業が大学に6年もいた修士には門戸を閉ざしていたんです。でもバイクを作ってる会社で働く自信はあったんで、まずはホンダで仕事を得るために、交通安全教育センター(訳注:当時の正確な呼称はプリーズ)に入ったんです。まあどっちも良い学生ではなかったですね(笑)。

小さい頃からエリートコースを歩んできたと思ってましたよ!
鈴木/中本:全然ですよ!(笑)。
鈴木:今でも会社ではどっちも異端児ですよ(笑)。

ホンダは創業時からそういう異端児がたくさんいるから創造性があるんだと思いますけど。
鈴木:そうですね。ホンダには自分で考えるというカルチャーがあって、それに本田宗一郎が言った三現主義(現場と現物と現実)というのも今でも生きてますね。

先にHRCに入ったのはどちらなんですか?
中本:僕の方が先ですね。てっちゃん(鈴木社長)は当時朝霞のホンダR&Dにいたんです。もちろん当時からHRCで働ける能力はあったんですが、上司が「中本と鈴木を一緒にするなんてとんでもない!」って言ってたんです(笑)。
鈴木:そんなことをしたらHRCがつぶれるってね。それに誰かが私らが同級生だって耳に入れたらしく、「絶対だめだ!」ってことになったんですよ(笑)。
中本:いずれにせよ私がF1にいくときに上司が引き継ぐ相手は誰がいいって効いてきたんで、それでてっちゃんがいいって言ったんです。

HRCでの最初の仕事はなんだったんですか?
中本:RS125とRS250の設計ですね。
鈴木:私の最初の仕事はCX125のチェーンカバーの設計で、HRCに入ってからはスーパーバイク部門で働きました。

レースの現場に初めて足を踏み入れたときはどうお感じになりましたか?
中本:1978年に鈴鹿8耐に言ったんです。8耐の最初の年ですね。ホンダがすごく強かったのにヨシムラが勝っちゃった。すごく興奮したし、あんな小さなチームがホンダみたいな大企業を負かしてしまうなんて信じられませんでした。そのころはただの学生でホンダで働いていたわけじゃなかったですけど、それ以来ホンダで働きたいと思い始めたんですね。ホンダは負けたにもかかわらずですよ。
鈴木:私の最初のレース体験は高校生の時の富士スピードウェイでF1を観たときですね。ピットレーンを加速していくときの音にしびれたんです。本当に衝撃的でした。

中本さんはF1の責任者をやっていましたが、そのころのことについてお聴かせ頂けますか。それと今はMotoGPとF1のどちらがお好きかも。
中本:F1で学んだのはチームマネジメントですね。日本的な仕事のやり方は一般的にアメリカ人やヨーロッパ人にはなじまないんで、まずは彼らの習慣や性格を把握することからはじめたんです。そのおかげで今でもいい人と悪い人、働き者と怠け者を見分けられるんですよ。だからリヴィオ・スッポと話したときにはぜひHRCで働いてもらいたいと思ったんです。彼と働けてうれしいですし、彼は私以上にホンダを愛してますよ!
 個人的にはMotoGPもF1も同じくらいすきですね。HRCで働けることを誇りに思ってます。会社がレース参戦をサポートしてバイクレースの将来に大きな貢献をしてるんですからね、Moto3クラスを作り上げ、Moto2にエンジンを供給しているってあたりでも、うちの会社に何が出来るかを示してますよね。
 F1ではフェラーリがいちばん偉くて、正直に言うと相当苦労しましたよ、MotoGPではホンダも同じようなポジションにいますけどライバルに対して公平なんです。もし地位を濫用したりしたらMotoGPはつまんなくなっちゃうでしょう。

つまりホンダはMotoGPではフェラーリのよう不公平な状況を作るつもりはないってことですか?
中本:その通りです。でもホンダはホンダのためにしか動いてないって思ってる人は多いですけどね。本当に良く言われるんですよねえ。でも考えてみて下さい。ホンダはMoto2エンジンを供給しても利益はでないし、Moto3クラスを作ったのはGP125がお金がかかり過ぎるようになったからだし、MotoGPクラスでは公平なレギュレーションを維持しようとしているんですよ。

<strong>鈴木さんはけっこうレースを観に行っているとのことですが。
鈴木:その通りです。年間4〜5戦は観てますね。でも本当はもっとスリルを味わう機会を作りたいですね。でも残念なことに仕事が忙しいんですよ。

レーサーでは誰がヒーローですか?
中本:最初にフレディ・スペンサーを観たときにはびっくりしましたね。「うわっ、すげえ」ってね。あんな風にバイクを乗りこなすライダーは観たことがなかったですから。一緒に仕事をしたライダーではケイシー・ストーナーがすごかったですね。他のライダーも才能はありりましたけど、ケイシーはすごいですよ。
 なんていったらいいのかなあ。3歳児が戦闘力のあるマシンに乗ってるというか。とにかく常に驚かされるんです。例えばケイシーはトラクションコントロールを使っていても同じように加速ができるんです。でもそれ以上に彼は信頼できるし正直な人間というのがいいんですよ
鈴木:僕は加藤大治郎とヴァレンティーノ・ロッシですね。レースに臨む姿勢が模範的なんです。大抵のライダーは、あれがだめとかこれがだめとか、速く走れない言い訳をするんですが、大治郎とヴァレンティーノは「ここを直してくれればあとはなんとかするから」と言うんです。
 それに2人とも技術的な問題を解決するのに何か月もかかるってわかっていたんです。それもあったしバイクのことをよくわかっていたのもあって、コースの上で問題を解決する方法にたどりつけたんです。本当に才能がある人は負けても言い訳をしませんね。言い訳はしないで解決策をみつけるんです。

MotoGPの現状と将来についてはどうお考えですか?
中本:私はバイク好きとうものは最新技術を観たいという気持ちもあると信じてるんです。ライダーのバトルだけじゃなくてね。ですからレースのおかげで店に並んでいるバイクが進化してファンもロードバイクのテクノロジーになじんでいく。だからメーカーは技術を追求してそれを高いレベルに保つ努力をしなければならないんです。
 でもそれと同時に環境にも優しくなければならない。MotoGPの将来に関しては、レギュレーションを突然大きく変えるということはしない方がいいと思ってます。MotoGPを電動バイクでやるのが環境に優しくなるということじゃあないと思うんですよ。気を付けないとMotoGPの価値がなくなってしまう。新しいファンを獲得することも重要ですが、今いるファンも大事にしないといけないんです。
鈴木:私も中本さんに賛成ですね。レースの醍醐味というのは人と技術が一体となって競争するところにあるんです。コンストラクターズポイントよりライダーズポイントの方が大事にされてるってことを思い返して下さい。私たちはいつでもライダーやドライバーに最高の場を与えようとしてるんです。

ホンダのアニュアルレポートでは伊東社長が環境分野でのリーダーシップを発揮したいと言っています。HRCも効率的なエンジンを開発してテクニカルルールの見直しやCO2削減に向けて努力すべきとお考えですか?
中本:エンジンの耐久性を改善することが技術開発の主題の一つになっています。エンジンの耐久性がよくなれば、1シーズンあたりのエンジン台数を削減できます。それは意味のあることだと思いますね。
 でもそのためにはいろんな分野で努力しなければならない。耐久性を上げるべきか馬力を上げるべきか。さらに予算も減らさなければならないし環境負荷も減らさなければならない。それにタンク容量を20Lに制限するのもさらなる開発が必要です。実はもうホンダのマシンは20Lでレースを走りきれるんです、でもホンダは燃料タンク容量を小さくしようとは言っていない。これは他のメーカーがMotoGPに参戦できるようにするためなんです。
鈴木:私は個人的にはエコというのはレースの燃費を改善するだけじゃないと思ってます。大事なのはサーキットでデータを蓄積して何百万ドルもするマシンの技術をロードバイクに反映することなんです。
中本:実際にホンダの市販バイクの多くは燃費を気にして作られてるんです。

技術はもっと環境と安全に生かされるべきだし、もっと社会に責任をもつべきだとLCRは考えています。こういう考えについてはいかがですか?
中本:レースは安全じゃないですよ(笑)。レースとそこで得られた先進技術は安全のためにう生かさなければならいとは思ってますよ。でも絶対安全、というのはないんです。
鈴木:時代を経るにしたがってレースは安全になってきてますよね。20年前と比べたらバイクも安全になっているし、ライダーの装備も安全になっている。ホンダもレーサーとそしてすべてライダーの安全のために努力しています。

インスパイアの読者のためにメッセージをお願いします。
鈴木:読者の皆さん、そしてバイクファンの皆さん。ホンダはみなさんに最高のバイク体験をお届けするためにがんばっています。これからも応援して下さい。特にLCRホンダMotoGPチームをね。
中本:いつも応援してくれてありがとうございます、ステファンがすごく進歩してくれてうれしく思っています。彼とそして他のライダーがいてこそチャンピオンを目指してがんばれるのです!
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ホンダは20Lでレースを走りきれるって、すごいこと言ってますねえ。
しかしInspire、いい雑誌だなあ。これが只で読めちゃうなんてすごい。紙メディアが絶滅危惧種になるわけですよ。紙のみなさんもがんばってください。まじで。

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コメント

いいお話を読ませて戴きましたm(_ _)m
こーゆーのは紙媒体で残したいですよねぇ。。。
というか、こーゆーのを「じっくり、かついつでも読める」紙媒体がやんなきゃ、
って思います。
悲しいかな、ワタシが不要とされた頃、
既に編集はそんなこと考えもしてなかったですが。

>大治郎とヴァレンティーノは「ここを直してくれればあとはなんとかするから」と言うんです。

ここ、いいなぁ~。

投稿: KEI | 2012/12/08 17:27

>KEIさん
 ねえ本当に。紙媒体にはまだ力があると思うんです。どうしたらいいのかはわからないけど、毎月買いたくなる雑誌が本当に心からほしいと思う今日この頃。

投稿: とみなが | 2012/12/09 01:13

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