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カタナのデザイナー、ハンス=ゲオルグ・カステンへのインタビュー

珍しく市販車ネタが続きますが、Faster & Fasterがカタナのデザイナー、ハンス=ゲオルグ・カステンへのインタビューを掲載しているので、特定の層に向けて翻訳。記事自体は今年2月のものでいささか古いですが、まあカタナも30年以上前のバイクなのでご容赦を。
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過去にも何度か言っているが、また言ってみよう。

私たちは1980-81年のカタナが大好きだ。

1970年代後半に発売されたGSX1100をベースにしたこのバイクは1980年にケルンで開かれたインターモトで初めて披露された。ED-2カタナは当時のどのバイクとも違って見えたものだ。ドイツスズキの要請によって作られたこのマシンを手がけたのはターゲット・デザイン。当時ハンス=ゲオルグ・カステンやハンス・ムート、ヤン・フルストロムなどが在籍し、カタナのデザインを行っている。

スズキカタナGSX1100Sが生産を開始したのは1981年。GSX1100EFEにその座を譲り渡す1984年まで生産が続けられた。さらにスズキは1990年の創業70周年記念に1981年スペックのカタナを200台生産し、さらに1991年にはもう200台が追加生産された。(我々にとってはここまでが真のカタナである。後に同じ名前で600ccフルフェアリングのバイクが生産されたが、それは無視することにする。我々の愛するカタナとはなんの関係もないのだから)

1980-81年式のカタナ1100の話にもどろう。我々は常々そのクリエーターに会いたいと願ってきた。我々はターゲットデザインのオーナーであり、カタナを創造した3人のうちの一人であるハンス=ゲオルグ・カステンに手紙を書き、カタナやバイクのデザイン全般について尋ねてみることにした。彼は親切にもそれに応えてくれたのだ。以下は彼のコメントである。

バイクデザインに携わるようになったきっかけ
 ポルシェで4輪のデザインをした後、BMWのモーターサイクルデザイン部門に入りました。最初の仕事はR100RT、そしてKシリーズのコンセプトデザインです。RSとRTも含めてですね。当時の上司だったハンス・ムートがBMWをやめたんで、わたしがBMWのモーターサイクルデザインの責任者になったんですが、8か月でやめちゃったんです。当時はヤン・フェルストロムといっしょにR80GSのデザインをやまりました。

1970年後半から1980年台初頭にかけて乗ったり好きだったりしたバイクについて
 ホンダのエルシノア250とBMWのR100RSを持っていましたね。あとモトグッツィのルマンMk1は印象的でした。でもいちばん好きだったのはドゥカティです。

スズキからカタナのデザインについて最初に言われたこと
 スズキとのコラボレーションはハンス・ムートとマンフレッド・ベッカーとの個人的な繋がりから始まってます。ベッカーはドイツスズキのマーケティングの責任者だったんです。日本のスズキは既にイタルデザインと関係があったんで、別に新しい関係を築く必要性は感じていなかったようですが。で、650cc4気筒のスポーツマシンのデザインを依頼してきたんです。これがカタナ650/550(ED1)になるわけです。これがかなり印象的だったようで、日本のスズキ本社が自社の旗艦モデルになる1100ccについて説明してくれたんです。GS1100をベースにした南ヨーロッパ風のスポーティなデザインでってね。それしか言われませんでしたよ。
 デザインには全然制限はなかったですね。誰も干渉しようとしなかったし。デザイナーは私とヤンの二人だけだったんです。それでBMWではできなかったことをやろうとしました。スポーツバイクの理想の形を作ろうとしたんですよ。もちろんスタイルを作りだすために機能的な検討もしてますよ。膝周りはスリムにしつつタンク容量を稼ぐとかね。そしてフューエルタンクがカタナのキーファクターになったんです。それと高速での安定性を稼ぐためにヘッドライトはフレームマウントにして空力に優れたカウルを取り付けました。

ここ30年のモーターサイクルデザインについて
 1980年台にはカタナほどデザインに影響を与えたバイクはないでしょうね。少数の例外を除けば当時のデザインはすごく保守的でした。ケルンショーでカタナがお披露目されたときからですよ、バイク会社がデザインを気にするようになったのは。でもスタイルだけの問題ではないんです。空力やフレーム、エンジンの進化もデザインに関係してきています。4輪のデザインはシンプルですよね。技術に関する部分を全部覆ってしまえるんですから。でもバイクは違う。すべてのボディワークが機能と連関していなければならないんです。私が好きなバイクはみんなほかとは違うオリジナリティに溢れるものです。例えばドゥカティの916なんかは大きなステップですね。他のバイクにすごい影響を与えています。

ターゲットデザインがてがけた他のバイクについて
 ご存じの通りハンス・ムートとの間にトラブルと抱えていて、当時のヤンと私は商業的な契約をひとつも結んでいなかったんです。だからエグリCBXについては無料でデザインしてます。ヤンがイギリスに戻ってからやっとプロジェクトが持てるようになりました。自分のチームを持ってエグリ600(訳注:ホンダの単気筒エンジンを積んだエグリ・ターゲット)をデザインし、その後はクレイドラーやツゥンダップといった小さなドイツメーカーのデザインをてがけました。日本メーカーの攻勢にさらされてなくなってしまったメーカーですけどね。80年台後半にはBMWのR100GSパリ・ダカールのデザインをやりました。正直言うと醜いバイクだと思いますけど、それがあのバイクの思想なんです。90年台初頭にかけて最も売れたBMWで、しかもビッグ・エンデューロの規範となった。普通、BMWは外部にデザインを委託しないんですけど、他にもいくつか小さなプロジェクトと手がけています。あとはザックスですね。いろんなザックスのバイクをデザインしてますよ。ショーモデルのビースト1000とかね。

今乗っているバイクについて
 ザックスのB805に乗っています、超希少バイクで150台しか生産されていないやつです。
 
もしチャンスがあったらどんなデザインをしたいか
 バイクというものが好きなんで、何か新たにデザインできるチャンスがあれば是非やりたいですね。でももう年をとったし、経験も積みすぎたんで、カタナみたいに自由にデザインできることはないともわかっていますよ。クライアントの言うことにも耳を傾けて、何をしたいかきちんと把握しないといけないともわかっていますしね。まあバランスの問題なんですが。
 もし自分の理想のバイクが作れたとしたらですって?

デザイン面からの日本製vsヨーロッパ製
 難しい質問ですね。全般的に言うと、日本製はみんなの意見に耳を傾けながら作るもので、ヨーロッパ製はもっと個人が全面に出てるって感じですかね。おかげでデザイナーにとっては楽ですし、新しい道も拓きやすい。誰も歩いたことのない道をね。

最も印象的なデザインについて
 ホンダはプロフェッショナルを感じさせますね。特にデュアルパーパスマシンについてはね。でもここ最近でいちばん印象的だったのはハスクバーナのNuda900ですね。これは本当に新しいし、デザインがすごい。あとドゥカティの1199パニガーレもいいと思いますよ。20年前の916の論理的進化という意味でね。反対にBMWは伝統を捨て去ってしまいましたね。次に何が出てくるか楽しみではありますが。30年前とくらべたらモーターサイクルデザインはプロの仕事になってしまった、つまりデザイナーの裁量が減って、売り上げとマーケティングを気にしなければならなくなったということです。デザイナーは会社にデザインを売るようになってしまったんです。

次の10年でバイクはどうなるか
 これも難しい質問ですね、デザインというのはコミュニケーション、機能、そして流行なんです。
 デザインは物語を紡ぎ出すという意味でコミュニケーションなんです。そのバイクが何のために作られたか、どんなによい品質を持っているのか、どんな革新があるのか、そしてどんな性格なのかを語るのがデザインです。そして機能というのは、人間工学とか空力とか技術とかをどう体現しているかということです。流行というのは、まあ私の趣味ではシンプルであるということですね。つまり装飾過多ではいけない。必要がなければスポイラーはつけない。でもいいスタイルじゃなきゃいけない。
 それと、個人の趣味が入る余地はまだまだあると思うんです。小さな市場でもスペシャルなマシンを受け入れる余地はあるんですよ!

ハンス=ゲオルグ・カステンがFaster and Fasterにここまで語ってくれたことを感謝したい。1980年台のカタナがずっとずっと好きだった。私たちが子どものころには、子ども部屋の壁に、最高にクールなバイクのポスターを貼ったものだ。だから私たちにとって、カステンへのインタビューは特別なものなのだ。彼と彼が率いるターゲットデザインがオリジナルのカタナの後継となるバイクをデザインする日を心から待っている。
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すごくお金があるなら、ケルンショーに出したオリジナルカタナを作りたいなあ。心から。
でもGS1000がカタナに化けるならSRだって、とも思わないでもない。

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