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Motomatters.comの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいCRTのすべてについて教えましょう

Motomatters.comがCRTについてQ&A形式で上手にまとめてくれてます。長いので、<続きを読む>方式で。

Q.いったいCRTってのは何なの?
A.CRTとはクレイミング・ルール・チーム(Claiming Rule Team)の略で、来年からMotoGPクラスに導入される新たなカテゴリーです。これまでのワークスやサテライトのMotoGPマシン(正式にはワークス、サテライトによらず「ファクトリー・プロトタイプ」と呼ばれます)とともに走ることになりますが、ルールが少し異なります。

Q.CRTとファクトリー・プロトタイプの違いは何?
A.CRTの場合、燃料タンク容量とエンジン台数制限が緩和されます。ファクトリー・プロトタイプが2011年と同様21Lのタンク容量、年間6基のエンジンであるのに対して、CRTは24Lのタンク容量と年間12基のエンジンが許されています。その一方で、既存のワークス(ホンダ、ヤマハ、ドゥカティ)はCRTに対してエンジンの譲渡を要求することができます。

Q.エンジンの譲渡ってどういう意味?どういう風に機能するの?
A.ワークスがCRTのエンジンを欲しい場合は20,000ユーロ(エンジン+ギアボックスの場合。エンジンのみの場合は15,000ユーロ)を払います。この場合、レース後マシンを査察用ピットに持ち込み、そこでCRTのスタッフがエンジンをマシンから降ろし、ワークスに手渡すことになります。エンジン譲渡要求が過剰にならないよう、各ワークスはCRTに対して1回しか譲渡要求が出せません。また各CRTは5回以上要求されることはありません。エンジンを譲渡した場合、年間12基を超えるエンジン使用が認められます。

エンジン譲渡ルールに関してはまだ詳細が詰め切れていない部分はありますが、実質100,000ユーロ以上の価格になるだろうエンジンをたかだか20,000ユーロで譲渡するのは楽しくないでしょうが、とりあえず来シーズンはこのルールでいくことになります。

現実問題として、ワークスがエンジン譲渡を要求することはないでしょう。特に日本のメーカーにはプライドがありますから。エンジン譲渡を要求するというのは、自分たちの予算の数分の1のチームに負けることを意味するわけですし。このルールは要するにCRTの皮を被ったワークスチームの参戦を食い止める意味しかないでしょう。

Q.誰がCRTなのかファクトリー・プロトタイプなのかを決めるの?
A.チームは予めCRTとしてIRTA(国際レーシングチーム協会)に登録しなければなりません。IRTAは全クラスのチームの参戦可否を決めるところです。CRTの登録に際しては、MotoGPのルール決定機関であるグランプリ・コミッション(メーカーを代表するMSMA、チームを代表するIRTA、オーガナイザーであるドルナ、そして国際機関であるFIMによって構成されます)が審査することになります。4つの全機関の賛成がなければCRTとは認められません。

Q.グランプリ・コミッションはどうやってCRTかどうかを判断するの?
A.これはもっとも難しく、そして簡単な質問ですね。いちばんいいのは、アメリカの最高裁判事であるポッター・スチュワートが、フランス映画「恋人たち」がポルノにあたるかどうかについて語った言葉を引用することでしょう。ハードコアポルノかどうかは定義できませんが、スチュワートはこう言いました。「見ればわかる」

同じことがCRTにも言えます。グランプリ・コミッションは申請してきたチームがワークスのバックアップを得ていないか、つまりワークスの手により開発され供給されるマシンでないかどうかを判断することになります。

意志決定のプロセスはチーム・アスパーの例を見るのがわかりやすいでしょう。チーム・アスパーはCRTとして認められました。チームはアプリリアRSVベースのマシンをアプリリアからリースを受けて走らせる予定となっています。アスパーはそれでもCRTです。というのも、チームとして独立してマシンを走らせ、メインテナンスの時期になったときだけアプリリアにエンジンを返却するからです。一方サテライトチームはレースの準備をするためにエンジンを降ろす以外はマシンに手をつけることができません。すべてのマシンには2人のメーカーエンジニアがつき、彼らがエンジンと電子制御をいじるのです。チームは自前の電子制御を使うことはできません。メーカーエンジニアしかいじることができないのです。

しかし、もしアプリリアのテクニカルディレクターであるジジ・ダリーニャが同じマシンでアプリリアの資金でアプリリアのカラーリングを纏って参戦しようとしたらCRTとは認められないでしょう。この場合はファクトリー・プロトタイプとなります。ダリーニャがいることで、アプリリアのワークスチームとなってしまい、プライベートチームとは見なされないからです。

一方、(現実にはあり得ないことですが)もしプライベートチームがHRCからRC213Vを購入して、ホンダからの支援なしに走ることを証明できれば、それはCRTとして認められます。

CRTかどうかはマシンの問題ではなく、チームの存立方法に関わる問題なのです。審査されるのはチームです。特にチームの構成メンバーがCRTにふさわしいかどうかが審査の対象となります。

Q.CRTマシンは市販エンジンを使わなければいけないの?
A.CRTが使うエンジンに関する規定はありません。実際、CRTマシンとファクトリー・プロトタイプを明確に分ける規定はないのです。単にタンク容量が24Lと21Lという違いしかありません。ルールではMotoGPマシンは「プロトタイプ」でなければならないと規定されているだけです。

でもルールに「プロトタイプ」と規定されているなら市販エンジンは違反ではないのかって?

むぅ、そこが微妙なところです。MotoGPのルールの文面はこうなっています。

「MotoGPクラスに参戦するマシンは4ストロークのプロトタイプでなければならない」

問題は、ルールのどこにも「プロトタイプ」の定義が書かれていないことです。最もその定義に近いと思われるルールはMoto2のシャーシについての規定です。
「Moto2クラスにおいてはシャーシはプロトタイプでなければならない。FIMのグランプリ技術規定の範囲内で自由な構成とすることができる。メインフレーム、スイングアーム、燃料タンク、シート、カウルはプロトタイプではないマシン(すなわち市販レース用に登録されたマシン)のものは使用してはならない。

何がプロトタイプかという定義がないため、ルールには抜け穴が開いてしまっています。基本的にチームの解釈に任されていて、現時点では「プロトタイプ」という単語より「マシン」という言葉に重きが置かれているようです。つまり、個々の構成パーツではなくマシン全体として判断されるということです。実際問題、サスペンションやブレーキ(少なくとも雨天時に使われるスチールブレーキ)は市販品です。確かに高いですが市販品なのです。もしお金があれば買うことができるようにサード・パーティーが生産しているものなのです。

エンジンも同じように解釈されています。BQRのマシンに使われているカワサキのエンジン、スッターに使われているBMWエンジン、そしていくつかのCRTが使う予定のアプリリアエンジンはすべて市販車のエンジンがベースとなっています。しかしバイクはエンジンだけでできてるわけではありません。

シャーシは別問題です。シャーシはプロトタイプでなければならないとされています。しかし何がプロトタイプかという点についてはこれまた解釈にゆだねられています。アプリリアRSVエンジンをアプリリアRSVのフレームに積んで走ろうというチームは参戦を拒否されるでしょうけど、RSV4エンジンをアプリリアが作ったプロトタイプのフレームに積むのであれば参戦できそうですね。

とは言え、現実問題として市販車フレームを使うことには意味がないことも確かです。公道用に、ワールドスーパーバイクでは柔らかいピレリタイヤ用に設計されたフレームでは岩のように硬いMotoGP用ブリヂストンタイヤが前提とする高負荷をかけることができないでしょう。まともに走れるとは思えません。ですから別の設計が必要となるはずです。

Q.CRTマシンのエンジンにはどんな改造ができるの?

既に書いたとおり、エンジンについてはルールブックに何も書かれていません。最大4気筒で、ボアは81mmまでということが書かれているだけです。他にもCRTに限らず全MotoGPマシンのエンジンで使える材料がいくつか規定されていますが、基本的にエンジンはなんでもありです。例えばヤマハYZF-R1のエンジンを持ってきて、ボア×ストロークを81mm×48.5mmにして、カムドライブをチェーンからギアトレインにして、鉄製のバルブスプリングをニューマチックかデスモドロミックにして(デスモドロミックはドゥカティの核となる技術ですが、特許を持っているわけではありません)、というのもありなのです。バルブ径を変えるのも自由ですし、バルブの材質を変えるのも自由です。スロットルボディやフューエルポンプを取り替えて、可変インレットにすることもできます。CRTは好きにエンジンを改造できるということですね。

Q.以前ヤマハR1ベースのマシンで参戦していたWCMはCRTになれるの?KR211VやKR212Vで参戦していたチーム・ロバーツはどう?
A.WCMのピーター・クリフォードは今ではCRTについての預言者であり、ゴッドファーザーであると言われています。本人は強く否定してますが。WCMがCRTに影響を与えたことは間違いないでしょうし、CRTの導入の元になったと言っていいでしょう。WCMが使っていたのはヤマハR1をざっくりコピーしたエンジンをハリス製のフレームに載せたマシンでした。エンジン内部はかなり改造されていて、Motomatters.comが行ったクリフォードに対するインタビューでは、オリジナルエンジンで残っていたのはエンジンマウントボルトの穴だけだったとのことです。つまりエンジンのディメンジョンをフレーム作製の参考としただけということのようです。いずれにせよWCMがあの体制で2012年に参戦するならCRTとして認められたことでしょう。

チーム・ロバーツに関してはもう少し複雑です。まずV5エンジンは2012年のMotoGPでは使えないので、KR211Vのことは忘れましょう。で、チーム・ロバーツが2007年に作製したKR212Vですが、これはホンダ製800ccV4エンジンを積んでいたので、規定にはマッチします。ただCRTとして登録できるかというのは議論の余地がありますね。RC212Vのエンジンをリースしていただけですし、エンジンの世話はHRCのスタッフがやっていましたから。つまりチーム・ロバーツはエンジンのディメンジョンを教えられて(よりマシンをコンペティティブにするための指摘もあったでしょうけど)フレームを作っただけなのです。もちろんチームはホンダから独立して運営され、独自のマシンを走らせていたわけですが、ホンダからプロトタイプのエンジンを、それもHRCのエンジニアと一緒にリースを受けていて、エンジンにさわれなかったという事実を考慮すると、KR212Vはどちらかというとファクトリー・プロトタイプであって、プライベーターとは違うものであると言えそうです。ただ実際にそのようなチームが現れてみないと判断は難しいところです。

Q.ワールド・スーパーバイクのオーガナイザーはCRTに対して文句は言わないの?なんでCRTが参戦するのを止めないの?
ワールド・スーパーバイクのオーガナイザーであるインフロント・モータースポーツはCRTに対して文句は言わないのか?いや、既に言っています。それどころか市販マシンでのレースの独占権を侵したとFIMを訴えることまでほのめかしていました。

しかしその苦情は右から左に流されてしまいました。理由の一つは、FIMとインフロントの契約では、市販マシンによるレースの独占ではなく、FIMにホモロゲーとされたマシンでのレースの独占だけが許されていたからです。つまり誰かがWSBK仕様のヤマハYZF-R1やホンダCBR1000RRでMotoGPに参戦しようとしたら、それはダメなのですが、WSBK仕様のヤマハYZF-R1のエンジンをプロトタイプフレームに積んだのであれば、WSBKにはホモロゲートできないわけですからMotoGPに参戦できるということです。

インフロントはFIMとの法廷闘争まで想定していましたが、しかし結局それはできませんでした。今年の初め、ブリッジポイントキャピタルという投資会社がインフロント・モータースポーツの親会社であるインフロント・スポーツ・アンド・メディアを買収したからです。ブリッジポイントはMotoGPの商業権を持っているドルナも所有しています。子会社同士が訴え合うことはありえないでしょう。ブリッジポイントもドルナとインフロントの双方の契約を確認しているでしょうし、CRTがインフロントの契約を侵しているかどうかについても理解しているでしょう。2つの組織の間の不一致は速やかに、かつ安価に解決されるはずです。つまり訴訟はありえないということです。

ブリッジポイントが子会社を通じてMotoGPとWSBKの両方を所有したことで、その相乗効果を狙っているのではないかと多くの人が指摘しましたが、それはちょっとモーターサイクルレーシングが、そしてドルナとインフロントがブリッジポイントに与える影響を買いかぶりすぎているというものです。ブリッジポイントの関心は税引後純利益にあるのであって、ドルナとインフロントへの投資額はブリッジポイントの総投資額に比べたら微々たるものですから。両者が利益を生んでいる限り、何があろうとブリッジポイントは気にしないでしょう。投資額に見合ったリターンがあればいいのです。

Q.CRTマシンはプロトタイプとまともに戦えるの?
A.その質問には短い答えと長い答えがあります。まず短い方は「イエス」です。シーズン終盤になって開発が進んでくればCRTマシンは遅いサテライトとだったら互角に戦えるようになるでしょう、特にコーリン・エドワーズやランディ・ドゥ・ピュニエといった経験豊富なライダーが乗ればそうなる可能性大です。ワークスが気にしているのはCRTに許された3Lの余分な燃料です。これだけあれば馬鹿高い電子制御を使わなくてもパワーが出せるでしょう。

とは言え、ケイシー・ストーナーがゼッケン1をCRTライダーに奪われるという心配はないでしょう。真のワークスマシンであるレプソルホンダ、ワークスヤマハ、マールボロドゥカティにCRTマシンが追いつくことは無理ですね。ケイシー・ストーナー、ダニ・ペドロサ、ホルヘ・ロレンソ、ヴァレンティーノ・ロッシには常に0コンマ何秒か早いわけですし、自分より速いマシンに乗っているライダーを負かすこともできる実力を持っています。ワークスチームにしかこうしたライダーたちのとんでもなく高い給料は払えませんし、その結果ワークスチームはルールがどうあれMotoGPのチャンピオンを獲るチャンスを独占しているのです。

しかしCRTルールのポイントはそこではありません。CRTはサテライトチームのリプレイスのために導入されたものです。MotoGPに参戦するならかなり安くすむわけですから。CRTの場合、想定されるコストは1人あたり100万ユーロ、つまり今はテック3のオーナーであるエルヴェ・ポンシャラルだけに許されたリースを受けることができたとして、そのヤマハを1台走らせるコストで2台を走らせることができるのです。ワークス仕様のRC213Vの場合は大体450万ユーロ、それだけあればCRTマシン2台にライダーとメカニックの給料、様子売るに1年分の全コストをまかなえてしまいます。

このためドルナのCEOであるカルメロ・エスペレータは2013年にはサテライトマシンを走らせるチームには補助金を出さないことに決めています。これによりサテライトからCRTに移行するプライベートチームが増えることでしょう。このやり方に不満の声も上がっていますが、別にエスペレータはチームがメーカーからマシンをリースすることを禁じているわけではありません。オーガナイザーとして彼は自分の判断でチームに金銭的支援を与えることができる立場にあります。そして800cc時代にますます明らかになったように、レースが生み出すお金の大部分がメーカーの懐に消えているのです。ファクトリー・プロトタイプのリース費用がかさむにつれ、グリッド台数は減っていき、エスペレータがどんなに資金をつぎこんでも、サーキットにやってくる、そしてテレビの前のファンに対して与える価値が減っていきました。エスペレータにはサテライトマシンを選んだチームに資金を援助しないという自由があります。一方そうしたチームはスポンサーを探して高価なファクトリー・プロトタイプのリース費用をまかなう自由があるのです。

Q.CRTってグランプリの理念に反するんじゃないの?
正直言って、この質問は最も奇妙な意見だと思います。この業界に長くいて自分は何でも知っていると思っている多くの人がこの質問を投げかけてくるのですが、そもそもグランプリは公道用バイクをチューンしたマシンから始まっているのです。それにグランプリには市販レースマシンや市販車ベースのマシンが数多く関わっていました。ヤマハのTZシリーズが最初の量産レースマシンでしたが、1970年代にはプライベーターはスズキやカワサキの市販車ベースのエンジンで闘っていたのです。ノートン・マンクスはノートンが、ノートン・インターナショナルをベースに作った市販レーサーでしたが、レース用に加えて公道用も売られていました。スズキもヤマハも2スト500ccの4気筒マシンを公道用にうっていましたし、成功もしています。公道用マシンとサラブレッドのレース用マシンの歴史を区別するのは不可能ですし無意味だと思います。

ヴァレンシアでのレース後のテストでデビューしたCRTマシンは特別なレース用マシンでした。確かにエンジンは市販車エンジンをベースにしていますが、トータルのパッケージ、すなわちプロトタイプのフレーム、最高のサスペンション、カーボンブレーキ、ブリヂストンタイヤ、CFDモデリングにより作り出されたカーボンファイバーのカウルはどれをとっても特別な物です。CRTマシンはたった一つの目的、サーキットを速く走るという目的のために妥協無く作り出されたものなのです。ファクトリー・プロトタイプほどはコストはかかっていませんし、ファクトリー・プロトタイプほど長い時間をかけて熟成されたものでもまだありませんが、しかしホンダやヤマハやドゥカティと同様に純粋なレースマシンなのです。レースファンの99.9%はCRTマシンのカーボンファイバーとファクトリー・プロトタイプのカーボンファイバーを見分けることすらできないでしょう。

Q.どうしてCRTルールが必要になったの?
ファクトリー・プロトタイプを走らせるコストをまかなえなくなったからです。サテライトマシンのリース費用はこの2〜3年で爆発的に高くなりました。そしてメーカーはコストカットのための施策を拒否したのです。ドルナ、FIM、IRTAからはエンジンだけをリースするよう要請が出されましたが、メーカーに拒否されています。その後、メーカーから出された提案はフルパッケージの70%の価格でないとエンジンをリースしないという非現実的なものだったのです。

問題はサテライトチームに留まりませんでした。800ccエンジンに21Lの燃料というのはコストを押し上げ、結果としてカワサキとスズキは撤退。今は3メーカーしか残っていません。グリッド台数はここ数年減少の一途をたどり、MotoGPマシンは結局2012年には12台ということになってしまったのです。

Q.CRTがその歯止めになるの?
すごく難しい質問ですが、そうなるでしょう。2008年から20人、18人と減ってきたグリッドは2012年には23人に増えそうです。内訳は12台のファクトリー・プロトタイプと11台のCRTという感じです。チーム・アスパーはドゥカティデスモセディチ1台からアプリリアCRT2台体制となりますし、Moto2のトップチームであるフォーワードレーシングや、スピードマスター、BQRといったチームがMotoGPに上がってきます、そしてBSB、WSBKで経験を積んだPBMも参戦してきます。

何人かのライダーについては、その資質を見てみないとわからないとも言われていますが、これは単にMotoGPパドックの保守性のためかもしれません。トップライダーはリスクのあるCRTよりMotoGPのサテライトチームやWSBKのプライベートチームを選ぶものです。まあそれも無理はないことでしょう。MotoGPがカタールで開幕するときには、CRTよりリスクマシンは遙か後方に置き去りにされるでしょうから。これはカタールがファクトリー・プロトタイプ向きの馬力が物を言うコースということもありますが、CRTにとって開幕戦はまだ数か月の開発期間しか経ていないということがもっと重要な理由です。シーズンが進むにつれてギャップは減っていくでしょうし、ムジェロのようなコースではギャップは広がるかもしれませんが、ザクセンリングやラグナセカ、ことによったらアッセンでもギャップは縮まるでしょう。フィリップアイランドあたりではギャップは眼に見えて減っていると思います。コーナリングスピードが重視されるサーキットではサテライトチームを脅かすことになるかと。

CRTがサテライトマシンを脅かすようになれば、成功と言っていいでしょう。100万ユーロのマシンでその4倍のコストが掛かっているマシンを脅かすことになれば、CRTの勝利です、次のステップはCRTマシンが国内戦レベルで走れるようにすることです。国内戦こそがライダーとチームの経験を蓄積できる場です。そしてまたMotoGPクラスにも毎戦ワイルドカードが参戦することになるでしょう。

2013年にはまたルールが変えられます。ドルナはCRTチームだけを支援する一方で、統一電子制御ユニットと回転数制限を導入する見込みです。CRTが伸びる一方で、最も高価であるためにワークスマシンが優位性を確保している部分がなくなれば、CRTマシンはより競争力がつくことでしょう。Moto2の導入時にも、レースがつまらなくなるといった反対意見がありました。しかし2年経ってみてみればMoto2が最も楽しみなクラスになり、ステファン・ブラドルやマルク・マルケス、アンドレア・イアンノーネの才能を疑う人など一人もいません。時間はかかるでしょうが、CRTは既に導入されたのです。

Q.最後の質問です。クレイミング・ルール・チームって間抜けな響きなんですが、名前は変えないの?
A.その可能性はあります。開幕戦カタールまでには呼称が変わるかもしれません。今のところ最も私が気に入っているのは「コンストラクター・レーシング・チーム( Constructor Racing Teams)」です。ルールにものっとった呼び方ですし、FIM、ドルナ、IRTAがいろいろな文書に使っている略称も変わりません。

ただしドルナとIRTAは単に「プライベーター」と呼ぼうという提案をしています。ひどい呼び名ですが、コンセプトは健全ですし、来年の今頃にはなんであんなに大騒ぎしたんだろう、ということになるでしょう。
============
ああ、疲れた。

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コメント

すばらしい!ありがとうございます(*^ー゚)bグッジョブ!!

投稿: ひで | 2011/11/24 21:48

ありがとうございます!
ほんと、わかっているようで、わからない事だらけでした。

投稿: tomo | 2011/11/24 23:38

>ひでさん
 おほめのお言葉、ありがとうございます。翻訳し始めてから、結構後悔しました。長くて長くて(笑)。

>tomoさん
 わたしも、まさかプロトタイプエンジンを使ってCRTになれるなんて思ってもみませんでした。いろいろ勉強になります。

投稿: とみなが | 2011/11/26 01:20

お疲れさまでした!
大変参考になりました。

それでもよく分かりませんでしたが(笑)、
後は観て判断しますw

これからも情報よろしくです!!!

投稿: nav. | 2011/11/27 13:49

>navさん
 むうう、そもそもわかりにくいルールってのもあるかもですが、精進します。これからもよろしくお願いします。

投稿: とみなが | 2011/11/28 22:20

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