公式リリース>カタールGP2017年

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキ(英語)アプリリア(英語)、KTM(を見つけられない…)。

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生まれ変わったダニ・ペドロサ:白紙からやり直す年(パート2)

パート1で引っ張ってますが、パート2も早速。PecinoGPより。
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24時間前に公開した「生まれ変わったペドロサ」の記事ではスペイン生まれの彼が自分とそしてHRCのライダーがプレシーズンテストで味わった苦労について話してくれた。そうした苦労は革新的ライダーであるストーナーやマルケスそして彼自身が味わってきたものだ。そして彼がレースキャリアを通じて保ち続けているホンダへの忠誠心について語ってくれた。このパート2ではペドロサの内面について知ることになる。常にファンやジャーナリストとうまくいっていたわけではないこと、翌週からの新シーズンへの抱負について、そして自分で選んだ2017年に向けての大変革について語ってくれた。これからお読みになる内容は本当に、本当に読み応えがあると我ながら思う。

今シーズン、ダニ・ペドロサは自分を取り巻く環境を大幅に変えている。彼は自分のレースアプローチ自体を思い切って刺激しようとしているようにも私には見えるのだ。マネジャーを替え、チーフメカを替え、メカニックも替え、アシスタントも替え、そしてセテ・ジベルノーをコースアドアイザーとして招いている。明らかにペドロサはこれまでやってきたこととは違うことをやろうとしているのだ。
「こうやっていろいろ変えたのは経験を積んで、時間を経るに従って物事は変わって、だから自分を作りかえなきゃならないとわかったからなんです。時代の変化にどうやって自分を合わせていくか見つけないといけない。ライディングスタイルも自分を取り巻く環境も変えなきゃならないんです。トレーニングを積んで肉体的にも時代についていかなきゃならないのはもちろんです。でもそれだけで全てはカバーできない。何かを見落とすんです。だから大事なのは自分ひとりでは完璧にカバーできない部分を理解した上でそこを作り変えていくことなんです。今回は自分でいろいろ変えたんですけど、満足していますよ」

「よくわかってますね」。それが”新しい人生”を作り出した背景にはモチベーションの維持という目的があったのかという質問への彼の答えだ。「経験を積むことで自分がうまくできないことはわかるんです。そういうのとか、自分でバランスをとろうとしているのにバランスがとれない部分とかはわかる。バイクに乗ることや楽しむことや関係ないことに邪魔されないこととかですね。若かった頃と今とでは全然違うんです。色んなことを学んで色んなことに目配りができるようになった。でも基本に立ち返ることにしたんです。レースとバイクのことだけに集中するんです。そこに集中することが大事なんですよ」

ドゥカティにいたイタリア人を新チーフメカに迎えたということは、これからメカニックとライダーの関係を構築し直すということである。これはおわかりいただけるだろう。どちらも相手が言っている意味をきちんと理解しなければならないのだ。「マシンが曲がらない」というとき、ホンダのライダーであるペドロサと元ドゥカティのエンジニアで同じことを言っているのだろうか?共通言語を創り出すところから始めざるを得ないということだ。「彼が僕に何か言って僕が彼を黙って見つめ返すってことが何度もありましたね。彼が言ってることは僕が思ってるのと同じことなのかとか、あと、こっちから質問すると「それ私にきいてます?」とかね。僕はイタリア語は少ししか話せないんですけど、そういうレベルの話じゃないんです。ピンとこない単語があるんですよ。まあそれほど大きな問題じゃないんですけどね。確かに昔の僕なら問題になったかもしれないですよ。たぶんね。あの頃は知らないことも多かったし、でも今はここまで経験を積んだんで、「待って、もう一回言って、何言ってるかわかんなかった」って言えるんです。

モチベーション、経験

私がペドロサのようなベテランライダーにインタビューするときにはいつも同じ質問をすることにしている。レースに対する情熱についてだ。MotoGPレベルでレースを続けるというのは非常に厳しいことだし、楽しいからやっていたのにいつの間にか仕事になってしまっているのはどういう気持ちだろうと思うのだ。「ああ、確かに楽しめない時期もありましたね。環境は最高だったのに、勝てるチームにいて子供の頃からの夢をかなえて…、でもいつでも幸せにいるってのは難しいんです。怪我もなんどもしたし、うまくいなかったこともあったし、個人的な部分でも…。どれがどうってはっきり言うことはできないですけどね。自分が夢見ていた人生を送っているんだけど、だからといっていつもハッピーだったわけじゃないんです」

いちばん楽しくなさそうな話題は最後までとっておくことにした。おそらくダニを不快にさせるだろうと思ったからだ。ファンや世間やジャーナリストに対する彼の態度についてだ。かつて彼に、ペドロサが最高のレースをできるとしたら観客がいない、そしてジャーナリストがいないレースではないかと言ったことがある。それを再び持ち出すことにしたのだ。もちろん彼の態度はずいぶん変化している…いい方にだ。ダニは私の厳しい質問を笑顔で受け止めた。

「昔はとにかく最善を尽くしたくて、すごく高いレベルで集中しなきゃならなかったんです。そもそも僕は内気なタイプだし当時は若かったし…、いろんなことをうまく扱えなかったんです。たくさんの人に囲まれて、みんなが僕に触ろうとして、写真を撮ろうと腕を回してきて」。ダニは少し間を置いてこう言った。「小さな町で生まれ育ったんです。部屋に入ったらみんなが僕の方を向くなんてなかった。もともと自分では人目を引くような性格じゃないと思ってるし、僕の態度も、まああなたも言うほど距離を感じていないようにも見えるけど、あんまり人当たりが良くはないですよね。そういう外のいろんなことにわずらわされずに静かにしていたいんです。すごくショックだったし良い気持ちにはなれなかった。今は経験も積んで違う見方ができるようになりました。わかったんです。子供だったんですよ。僕についてきてくれる人たちにどんなことをしてたかってわかったんです。みんなが僕をテレビで見ていて、僕と写真を撮るのがみんなにとってどんな意味を持つのがわかったんですよ。そうやって見えてきたおかげで僕は変わったんです。違う見方ができるようになった。もう僕は前みたいにこうしたことが自分を安全な場所から遠ざけるようなものだとは思わなくなったんです」

2017年に向けての豊富

そろそろわかってもらえたことだろう。2017年のペドロサは新しい一歩を踏み出したのだ。経験を積んできたおかげで彼は地に足のついた人物となった。大言壮語はなし。大声でなにかを言うこともない。「今年は最高の自分をあらゆる場面で出していかなきゃって、はっきり見えてるんです。僕のやりたいことや、モチベーションを最大限に発揮する。これまでの経験やチームをそのために使っていく。全てを活かすのは最高にたいへんですけど、それが今僕のやっていることなんです。それが僕の目標です。もし全てが上手くかみ合えば数字はついてくるはずです。見ていてください」

このダニとの会話はカタールテストの2日目に行われたものだ。24時間後、ペドロサは最後のプレシーズンテストで3番手のタイムを叩き出した。チームメイトのマルケスがほんんぼ数日前に警告していたことだ。「ダニには気を付けた方がいい。僕はピットにいるから彼がどれほどやっているか知ってるんだ。バン!HRCにはみんな忘れてるけどすごいライダーがいるんだ」。

「僕は自分の最高を追求してきた。それでどんな結果を出せるかはわからないけど、すごくわくわくしているし、努力をするのが楽しいんだ。そのおかげで言えるんですよ。ここまでがんばってきたんです、でももっとやれるし、それを自分でも楽しみにしてるってね。それが僕のモチベーションなんです」
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をー!!!訳してて泣きそうになったのは久しぶりだ!!!
記事では「大言壮語はなし」ってなってますが、こんなに自信に満ちたダニは見たことないよ!!!

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生まれ変わったダニ・ペドロサ:「なんで教えてくれなかったの」は無しで(パート1)

ファンもファンじゃない人も幸せを祈ってやまないダニ・ペドロサですが、今年はくるよ!知らなかったってシーズン終わりに言ってもだめだからね!って記事をPecinoGPより。
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いつもの彼のスタイルだースポットライトの当たらないところで黙々と働くーダニ・ペドロサは2017年のプレシーズンテストを非常に良い形で終えた。31歳になるカタルニア出身の彼は冬期テストを表彰台に値する3番手で終えたのである。その上にいたのは素晴らしい走りを見せたマーヴェリック・ヴィニャーレスと常に安定した走りを見せるアンドレア・ドヴィツィオーゾだ。見出しを飾るのは他のライダーかもしれないが、最後に3番手の座を勝ち取ったのはダニなのである。

2017年はペドロサにとって12年目のMotoGPシーズンとなる。既にヴァレンティーノ・ロッシに次ぐベテランライダーになってしまった。この12年間、常にホンダワークスであるHRCに所属している。そしてそこまで長くトップチームで走っているにもかかわらず一度もタイトルを獲得していないことでライダーとしてのダニへの信頼は年々失われてきた。しかし2017年が彼のキャリアの新たな一歩となる予兆があるのだ。

我々がダニ・ペドロサが新たに契約したマネジメント会社であるアメリカ・ワッセルマンにインタビューを申し込む際にサーキット以外のリラックスできる場所でのインタビューを依頼した。サーキットにいるライダーは本人の考えとは関係なく「レースモード」に入ってしまうのだ。私たちはもっとプレッシャーのかからない雰囲気の仲で我々の直感、つまり「新型ペドロサ」が本当かどうか確かめたかったのだ。ダニが私たちの前に現れたとき、彼は心地よさそうにリラックスしていた。そして30分間にわたる会話はインタビューと言うよりおしゃべりという感じで進んでいったのだ。

ホンダ「ファミリー」の一人として長い間過ごしてきたペドロサは様々な状況をHRCのピット内で経験している。つまり2017年のエンジンがなかなか決まらないという今年の混乱もいつものことだということだし特に心配するほどのことではないのだ。あと2週間もしない内に開幕という今、すでにそれは問題ではないという…。

「今のところそれはOKですね。これから予想もしなかったことが起こらなければですけど。でもいずれにせよこれはホンダではよくあることで、耐久性や他のチームへの供給やそういういろんなことも考えなきゃならないですからね。変なことが起こらなければもうこれで決まりでしょう」。ダニはプレシーズンテストの序盤は上手くいかなかったと正直に語っているが、既に1月下旬辺りからホンダは確実に前に進めるようになってきたという。特に電子制御分野だ。「セパンからオーストラリア、そしてヘレスへとどんどん良くなってきてますね」

アグレッシブなエンジンかスムーズなエンジンか、ボトムエンドのパワーを犠牲にするのかトップエンドを犠牲にするのか…?ペドロサにどちらのタイプのエンジンが好きなのかたずねてみた。去年のある時期、彼はマルク・マルケスの希望を優先してホンダが選択したエンジンは自分なら選ばないと言っていたからだ。「いろんなのに乗ってるんです。例えば125ccはピーキーで、だからすごくアグレッシブで、でも同時にパワーは全然なかった。ある意味スムーズでスロットル全開でいけたんです。250ccも同じ感じで、でもトルクはありました。だから125より楽しかったし難しくもあった。それから(MotoGP)でV5に乗った。エンジンは静かなバイク(訳注:quieter bike と言ってるんですがV4のことでしょうか?)と同じ感じで、でも重くてコーナーでのコントロールが難しかった。それからスクリーマーに乗りましたね。全然気持ち良くなかった。たいてい僕はコースを走ることに集中できて安定して出せるマシンが好きなんです。セッティングも安定性重視で不安定なマシンにはしない。例えば僕らの最大のライバルのヤマハはずっとある意味僕らの「正反対」ですよね。そして僕らはいつでもライバルの弱みをつけるようにマシンを開発していくんです」

ペドロサは数週間前PecinoGPで書いたこと(訳注:おそらくこれ)についても同意してくれた。ホンダRCVが「マシンの挙動に合わせなければならないバイク」であるということだ。ライダーがマシンに合わせて動かなければならないということだ。先にペドロサが言及したヤマハはライダーがマシンをコントロールできるバイクだ。「直感的に反応しなきゃならないし、馬の背中でゆっくり考えてるみたいなわけにはいかないんですよ」とダニは言う。「例えばあるラップで完璧にコーナーをこなしても次のコーナーでは3回も動いて修正しないといけなかったりして、そういう何があるかわからない場所もある。そういうのはいいんです。例えば普段は挙動が穏やかなんだけどあるコーナーで一回挙動があるとしますよね。そうなったら普通は次のラップでも同じように乗ってれば同じことが起こると思うのが普通です。でもホンダはそうじゃないことがある。あるラップではOKでも次のラップではだめ。それでマシンの挙動に反応しなきゃならない」

テクニック重視の他のMotoGPライダーと同様にペドロサは神経質なフレームより安定感のあるフレームを好んでいる。「ある程度は挙動重視のマシンと安定性のあるマシンのどちらかに持っていくことはできるんです。リンクを変更したり、トレールを変更したり、あれやこれやいじるところはある」。ダニは加速に移ってから、そしてコーナー中盤の方がブレーキングより得意だとも告白している。そして同時に自分よりそれが得意なライダーもいることを認めてもいる。

革命的ライダーたち

10年以上MotoGPにいるペドロサは多くのライダーがやって来て、そして去って行くのを観ている。あらゆる時代のMotoGPマシンを経験しており、それぞれが異なるテクニックとライディングスタイルを要求していた。レース界というのは忘れっぽいところだ。しかしケイシー・ストーナーとマルク・マルケスと同じくらいダニも革命的なライダーだったのだ。トラクションを少しでも多く得るべくタイヤの接地面を大きくするためにコーナー出口に向けてマシンを立てるやり方は彼ならではのものだったのだ。これに関して彼はおもしろいことを言っている。「こういうのは世代が変わる度に多かれ少なかれ起こっていることなんです。ルーキーは優勝ライダーをずっと観察して、まずはそのライダーの真似をするんです。お手本にして…それで自分なりの方法をライディングやマシンコントロールに付け加えていくんです」彼はストーナーやマルケスを引き合いにしながらそう言った。

「誰かが自分はやってないことをやってるって気付いたら、自分を作りかえなきゃならないんです。ライバルが自分を上回ることをやってるんだから自分も新しいことに適応していかなきゃならない。でもこういう進化ってのはタイヤが変わったりしても起こるんです。それでライディングも変わるわけですからね。例えばミシュランからブリヂストンに代わって(原注:2009年のこと)コーナーでのバンク角がとんでもなく深くなったしブレーキングもかなり突っ込むようになったしコーナー進入がアグレッシブになったし、こういうこと全てがライディングスタイルの変化につながっているんです」

再びミシュランになったことでかつてのスタイルをリサイクルする必要があるようだ。「ライダーとしてはミシュランに戻ったせいでマシンを少し変更しなきゃならなかったですし、ライディングスタイルも変化させました。前と同じではないでしょうけどね。タイヤも進化したスピードやマシンからの要求に応えなきゃならないわけですから」

ホンダへの忠誠について

既にペドロサとホンダの蜜月がMotoGP時代の全てを通じて続いていることについては言及した。彼はホンダの125ccでGPデビューを飾りNSR250で2度のタイトルを獲得している。しかしペドロサがHRCのエンジニアが作ってくれたマシン以外に興味や好奇心を持たなかったはずはないのだ。

「もちろんこれだけ長いことライバルのことを見てきて、自分たちの弱みも見えていて、強みも見えていて、だからいつでもなんで自分はホンダにいるのかについては問い続けていますよ。いろんなバイクには乗ってますけど全部ホンダですからね。公道用のバイクもスクーターもホンダはホンダなんですよ。なんて言ったらいいのかわかんないですけど…。ホンダはいつでもちゃんと走るでしょ?ぱっと乗れるし乗りやすい。例えばドゥカティには乗ったことないですけど、乗ったことのあるライダーを見てるとホンダとは全然違うのは明らかですよね。直感的に乗れない感じだし、でもすごくいいところもある。あと、例えば友達とスーパーモタードのトレーニングに言って、僕はホンダに乗って友達がKTMに乗って、そういうときは他のバイクがどんな感じか気になりますよね」

白紙からやり直す年

今シーズン、ダニ・ペドロサは自分を取り巻く環境を大幅に変えている。彼は自分のレースアプローチ自体を思い切って刺激しようとしているようにも私には見えるのだ。マネジャーを替え、チーフメカを替え、メカニックも替え、アシスタントも替え、そしてセテ・ジベルノーをコースアドアイザーとして招いている。明らかにペドロサはこれまでやってきたこととは違うことをやろうとしているのだ。

「こうやっていろいろ変えた理由は…(続く)」
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続きは明日!

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MotoGPのアンチジャークはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の最後となる5回目はアンチジャークと呼ばれるシステム。スロットル開閉時のショックを軽減するやつですね。ジャーク(jerk)ってのは、ぐいっと押すとか、ぴくってなる感じです。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPのライダー支援システムの謎に迫るシリーズの最終回

はい、もう馬鹿にしたように笑うのはやめよう。神経質なプリマドンナであるMotoGPのトップライダーのためにマシンを作り上げなければならなくていらいらしているエンジニアたちを助けるために作られたこのコンピュータプログラムは確かに賢くはない。しかし統一ソフトウェアの降臨以来、実はその重要性はますます高まっているのだ。

アンチジャークはライダーが閉じたスロットルをコーナー途中で開けていく際に支援を行うシステムである。コーナー進入ではスロットルは全閉となる。そしてその時が来たらライダーはそっとスロットルを開け始める。この時バックトルクを発生していたエンジンは進行方向のトルクに移行する。ここでトランスミッションに負荷がかかりエンジン内にジャーク(突発的力)が発生するのである。この瞬間のリーンアングルは非常に深く、発生するトルクは大きい、つまり悲惨な結果が起こり得るということである。オーバーランすることになるか、自分ではどうにもできないスライドに陥ってしまうかだ。

アンチジャークは数ミリ秒の間、最大100%のトルクを削減することでこうした問題を回避するものだ。

このグラフはあるライダー(マニエッティ・マレリが秘密としているため名前は不明)がヘレスの8コーナー(130km/hで回る左コーナーでかの有名なスタジアムセクションに入っていくところ)を駆け抜ける様子である。

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いつもの通りこのデータ分析グラフではちょっと見にはわかりにくいくねった線は無視して数字と解説に集中してほしい。

(1)白い線はスロットル開度。オレンジの点線は開度ゼロ

このライダーは垂直から60°ほどのフルバンクからスロットルを開け始める最初の段階に入ろうとしている。


(2)白い線は回転数。緑の線はリアホイールで測定した速度

回転数とリアホイールで測定した速度が急激に上がっている。300回転/6km/h程度だ。エンジンがスロットルオフからスロットルオンに移行するのに合わせてトランスミッションが前に向かって駆動をかけ始める瞬間だ。これがジャークである。そしてアンチジャークはこの部分にさようするのだ。とは言えこのケースではシステムのセッティング変更が必要なようだ。ここまでショックが大きいとライダーはスロットルを開けられなくなるのだ(上記(1)参照)。


(3)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はアンチジャークが要求するトルク削減量。赤い線はリアホイールに伝わるエンジントルク

赤い線と白い線は10〜30ミリ秒ほどを除いては一致している。これはアンチジャークがジャークを感知してトルクを削減している部分だ。ここでは瞬間的に大きなトルク削減が必要となるので点火を遅らせるか点火をカットするかで対応している。通常のトラクションコントロールのようにスロットルバタフライを閉じるのではない。こうした状況ではアンチジャークはトルクをほぼ100%カットすることもある。


(3)ブラッドリー・スミスがアンチジャークについて語る

以前よりアンチジャークには頼るようになってますね。昔はトラクションコントロールがやってくれてたんです。スロットルの開け始めのところでパワーをスムーズにして使い易くするためにアンチジャークがあるんです。もし最初の開け始めのところでタイヤがスピンし始めたらどうにもできないですからね。タイヤのスピンはフルバンクからずっと続くんでトラクションを掛けている間ずっと妥協し続けることになるんですよ。もし最初の開け始めでグリップを保つことができればトラクションを掛け続けられるんです。どのコーナーでもバイク半分くらい頭に出られますね。スムーズであればあるほどうまくできるんです。でも同時にちょっとだけショックも必要なんですよ。ここでマシンの向きを変えるためにね。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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コーナーでスロットル全閉から加速に移行するのは普通のバイクでも気を遣いますよね。私はそこを気持ち良くしたくてスロットルの遊びをチマチマと調整したりしてましたが、おそらくそんな感じで電制のセッティングをしてるのかしらん。

さて、いよいよ今週末は開幕戦ですよ!!

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MotoGPのローンチコントロールはどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の4回目はローンチコントロールと呼ばれるスタート時の制御です。Motor Sport Magazineより。
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ローンチコントロールはレースのスタート時にグリッドからロケットのようにスタートするためのライダー支援システムである。今日はこれについて解説しよう。

MotoGPにおいてレース中に相手を抜くのはますます難しくなっているが、これには多くの理由がある。カーボンブレーキのおかげでブレーキング区間が短くなったという細かい話からマシンそのもののパフォーマンスが似通ってきたという大きな話まで実に様々だ。

そのせいでスタートの重要性はかつてないほど高まってきた。これがローンチコントロールが開発された理由である。ローンチコントロールのプログラムの目的はライダーがクラッチを260馬力に繋いだときに最大加速を得られるようにすることである。しかしMotoGPの他のライダー支援システムと同様、先にドルナが導入した統一ソフトウェアはMotoGPが始まって10年以上使われてきたメーカー製ソフトウェアと比較すると賢さにおいて遥かに劣るのである。

ドルナの考えはこうしたライダー支援技術をその原点に戻すことである。パフォーマンスを伸ばすことではなく安全性を改善することだ。マニエッティ・マレリは他の4つのライダー支援、トラクションコントロールウィリー制御エンジンブレーキ制御、アンチ・ジャークと同様にローンチコントロールにもドルナの考えを反映させている。

ワークス製電子制御時代のローンチコントロールは非常に効果的で、赤いスタートシグナルが消えると同時にライダーはスロットルを全開にし、クラッチもいきなり繋ぐことができた。ライダー支援システムがなければこうした動作は瞬時に最悪の事態を招くはずだ。確実に宙返りすることになる。しかしワークス製ソフトウェアは非常に賢く、常に状況を支配下に置くことができた。そしてリアタイヤに最適な大きさのパワーを供給する。おかげでライダーはフロントホイールを5cmも浮かすことなく最初のコーナーに向けて突撃していけたのだ。

最終的にほとんどのメーカーのローンチコントロールの効果に差がなくなってしまい、ローンチコントロールが安全性に寄与しているかどうかについても議論されるようになった。全てのライダーが同じタイミングで1コーナーに入っていくことになったからだ。

今はライダーは自分でほとんどのことをこなさなければならない。つまり誰もが考えるあるべき姿が到来したということだ。技量のあるライダーが報われるのである。

レースのスタートでは多くのライダーがリアを滑らせるのに気付いているだろう。ローンチコントロールがあるにもかかわらずだ。実はローンチコントロールはトラクションコントロールシステムを起動させないのだ。単にウィリー制御を行っているだけなのである。
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これまでと同様、データ分析グラフを見るときにはのたくる線の洪水に惑わされてはいけない。番号とこれに対応する解説をお読みいただきたい。

(1)白い四角形はローンチコントロールの発動

これはライダーが左のハンドルバーにあるボタンを押してローンチコントロールモードを発動させたことを示している。ライダーが1コーナーに向けて減速を始めるとシステムはローンチコントロールモードを解除する。またローンチコントロールはライダーがオーバーレブを心配することなくスロットルを全開にできるようレブリミッターも調整している。このおかげでライダーはスロットルとクラッチのバランスだけに集中できることになる。


(2)赤い線はスロットル開度

多くのライダーがレーススタートを告げる赤ライト消灯の前にブリッピングをするが、これには特に意味はない。神経質なライダーほどガス遊びをしたくなるようだ。


(3)白い線はマシンの速度。赤い線はリアホイールの回転から測定した速度。緑の線はフロントホイールで測定した速度

このライダーは上手くスタートしている。フロントホイールがすぐに浮くことはなく、ホイールスピンも最小に抑えている。しかしそれも長くは続かなかった。フロントホイールがわずかに浮いたためにフロントで測定している速度はすぐに落ちている。これに合わせてライダーはスロットルをわずかに戻す(最上段を参照)。ホイールは一瞬接地するがライダーが2速に入れると今度はさらにおおきくフロントが浮いている。一方赤い線は常に白い線の上方で推移している。ホイールスピンのためだ。シフトアップに応じて一瞬だけ尖った線が表れ、1コーナーに向けて減速を始めるまでスピンは継続している。ローンチコントロールにはトラクションコントロール機能はない。どんな場面でも選択できるシステム設定は少ない方が良いという考えに基づくものである。加えてストレートでのホイールスピンはそれほどMotoGPライダーを危険にさらさないということもある。自分の右手で調整すれば済むのである。


(4)白い線はライダーが要求するトルク。緑の線はエンジンが供給するトルク。赤い線は計算上のウィリーの限界

緑の線が下向きに突出しているところはウィリー制御システムが極端にエンジントルクを絞ってウィリーを減らしているところだ。ここはライダーが2速、3速、4速とシフトアップしている瞬間だ。


ブラッドリー・スミスがローンチコントロールについて語る

去年はうまくスタートするってのがいちばん難しかったですね。統一ソフトウェアが入る前の2015年は前回にしてクラッチをがつんと繋いでマシンが発進できた。ローンチコントロールが何もかも上手くまとめてくれてたんです。今はフルパワーを使えない。だから、そうですね、スタートでは75%くらいで、だからクラッチを繋いだ瞬間のトルクは少なくなってます。そのあとフルスロットルまでもってくときもクラッチを使うんです。でないとウィリー制御が入っちゃってスロットルバタフライがいきなり開いたり閉じたりするんで揺り木馬に乗ってるみたいな感じになるんです。もし誰かがパワーリフトをやってるとしてもそれは自分でコントロールしてるんであって電子制御がやってるんじゃないんです。たいへんですよ。去年の最初の2レースはスタートで完全に横を向いちゃって、だから一から慣れていかなきゃならなかったんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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ライダーの技量が出るのはとてもいいことだし、スタートも見応えがあるし、そんなんでもロン・ハスラムなら速かったんでしょうか。

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MotoGPのエンジンブレーキ制御はどのように機能しているのか

Mat Oxley氏による電子制御解説の3回目はエンブレ制御です。Motor Sport Magazineより。
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ハイパフォーマンスなMotoGPエンジンは過剰なバックトルクも生み出している。これを調整するのがエンジンブレーキ制御の役割だ。このシステムはバックトルクをどの程度リアホイールに伝えるかを決めているのだ。

もし990cc時代の初頭からMotoGPを観ているのならライダーがハードブレーキングでリアホイールを左右にうねらせながらコーナーに飛び込んでいくのを楽しく眺めたことを覚えているだろう。

エンブレ制御システムの黎明期の話だ。ハードウェアもソフトウェアも未熟で過剰なバックトルクをうまく削ることができなかった。その結果エンジンがリアホイールをロックさせたのだ。ライダーはそれに対応するために全力を尽くしていた。

その後数年でエンブレ制御ソフトが劇的に進化している。そもそもリアを左右にホッピングさせながら横向きでコーナーに入っていくのは最速のやり方ではないからだ。見応えがあったのは確かだが。どんなライダーでもコーナーに向けて減速するために多少のエンブレを必要としている。しかしどれくらいエンブレに依存しているかは完全に個人のライディングスタイルの差によって異なっている。ホルヘ・ロレンソは前後のホイールが完全にライン上にあるのが好みだが、一方でマルク・マルケスのようにリアホイールが1インチくらいラインの外側にある方が曲がりやすいというライダーもいる。しかし過剰なエンブレを要求するようなライディングスタイルのライダーなどいないのである。

エンブレ制御はシリンダー内の燃料をカットすると共にスロットルバタフライを動かしてライダーが要求する丁度良いバックトルクを生み出している。メーカー独自ソフトウェアの時代にはソフトウェアは実に精緻でひとつひとつのスロットルバタフライをコントロールしていた。しかしドルナ供給のマニエッティ・マレリ製統一ソフトウェアは基本的なことしかできないようになっている。

エンブレ制御にとって最も厳しかったのは2年ほど前だ。MotoGPのレギュレーションで使用できるガソリンの量が馬鹿馬鹿しいほど少ない20Lに制限されていた時代のことである。マシンをゴールさせるためにエンジニアはあらゆる場面で燃料を節約しなければならなかった。馬力を削るわけにはいかない。となればコーナー進入時に燃料を節約することになるのは必然だった。

最後の一滴までも節約しようという涙ぐましい努力の結果、ほとんどのシリンダーに対してガソリン供給がカットされ、その結果リアホイールは突然ロックしライダーを地面に叩きつけることになった。多くのマシンがスクラップと化し、折れた骨も数知れない。それもこれも燃料を数cc節約するためだった。去年のMotoGPの燃料制限は24Lまで緩和された。その結果エンジニアはこれまでほど燃費を気にする必要がなくなっている。

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上図は例によってMotoGPマシンのライダー支援システムの気狂いじみた七色の線である。これが示しているのは(誰だかはわからないが)ライダーがヘレスの5コーナー(シト・ポンスコーナー)に進入している様子だ。ラップ開始後30秒のところに引かれた縦の点線はライダーがブレーキをかけ始める瞬間で同時に3速にシフトダウンしている。ここで電子制御ユニットはエンブレモードに入り、マシンの減速にもエンジンを役立てている。

これまでと同様、このカラフルでのたくった線に惑わされないようにしよう。図中に記載した数字に合わせて下の解説をお読みいただけば理解していただけるだろう。

(1)最上段:赤い線はスロットル開度。青い線はギアポジション

ライダーはスロットルを閉じシフトダウンしているのを感知してシステムがエンブレモードに入る。


(2)2段目:白い線は回転数。緑の線はマシンのリーンアングル

ライダーが4速から3速にシフトダウンすると回転数が上がり、一方で左の4コーナーから立ち上がり5コーナーに向けてのブレーキングに向けてマシンは起きていく。


(3)3段目:赤と青の線はリアの荷重。赤い点線は荷重ゼロ

ライダーがフロントブレーキに10kg重/平方センチ(1,000kPa)の圧力をかけマシンはフロントタイヤ方面に傾き、リアタイヤの荷重が劇的に減少する。リアタイヤにかかる荷重は使えるグリップの多い差を意味しており、これに合わせてエンブレ制御システムがマシン減速のためにどこまでエンブレをかけるのかを決める。

リア荷重の線が2種類あるのはそれぞれ異なる方法で測定されているからだ。ほとんどのエンジニアは大きい方を採用している。この場合は最小で30kg程度だ。他の全てのことと同様にどこまでリアに荷重を掛けたいかはライダーによって異なっている。例えばマルケスのようにホイールが浮くようなブレーキングテクニックであれば荷重はブレーキング中のある時点でゼロまで減少する。


(4)3段目:黄色い線はフロントブレーキにかかる圧力。緑の線はリアブレーキにかかる圧力

こbのライダーはかなり強くフロントブレーキをかけている一方リアブレーキは徐々に強くしている。線が細かく震えているのは振動のせいだ。このため電子制御エンジニアはそれぞれの線について平均をとったよりスムーズな曲線を使用することになる。このライダーはマシンがフルバンクに達してもフロントブレーキを使っているのが興味深い。


(5)最下段:白い線はエンブレモード

白い線は、システムがエンブレ制御モードに入った後にライダーがスロットルを開け始めるとモードが終了していることを表示している。


(6)最下段:赤い線と緑の線はそれぞれのスロットルボディのバタフライ開度

ライダーが完全にスロットルを閉じるとどちらのスロットルボディもバタフライが閉じてリアホイールへの荷重を初めとする数値から導き出されたバックトルクを生み出す。ライダーはスロットルを完全に閉じてはいるがどちらのスロットルボディのバタフライも完全には閉じていない。こうやってリアホイールを回し続けることで完全にロックするのを防いでいるのだ。ブレーキングが緩くなってリアホイールにかかる荷重が増えればさらにバタフライは閉じていき、エンブレモードの最終段階ではほぼ完全に閉じられることになる。こうした制御はすべてライダーの好みに応じてセッティングを施される。マルケスのホンダのスロットルボディはおそらくロレンソのヤマハより閉じているだろう。マルケスがバックトルクを積極的に使うためであるが、これはMoto2(エンブレ制御がない)で学んだことだろう。一方ロレンソはホイールが抵抗なく回るのが好みなのだが、これは彼が2スト250に乗っていたときのやり方である。


(7)最下段:赤いセント緑の線はスロットルボディ開度。黄色、青、オレンジ、紫は各シリンダーの燃焼効率

エンブレモードの間、4本の線の内3本はフルバンクに達するまで同じ波形である(各シリンダーの空燃比から計算した燃焼効率)。別の言い方をするならこの3つのシリンダーには燃料が供給されておらず燃焼していないということである。つまりエンジンはほぼ停止してバックトルクを生み出しているということだ。一つのシリンダーは燃焼を続けリアホイールがロックするのを防いでいる。しかしこのシリンダーの燃焼はリアホイールの加重が増えるにつれてさらなるエンブレを生み出すため薄く(弱く)なっていく。ライダーがスロットルをひねり始めると「死んでいた」3本のシリンダーは順番に目を醒ましていく。3本同時に目を醒ますとリアタイヤへのトルクが一気に増えすぎるためである。


ブラッドリー・スミスがエンブレ制御について語る

統一ソフトウェア導入前はあらゆる変数をいじれたんです。4つのバタフライを別々にセッティングできたんで、6速から2速までそれぞれのシフトダウンについて個々のバタフライをひとついひとつどう閉じるか設定できたんです。統一ソフトウェアだと2個1セットでバタフライを動かさなきゃならない。それにいじれる数字もかなり簡略になっている。だからマシンのエンブレ制御は前ほど精密ではなくなってます。まあ他のすべてと同じ感じですね。前よりライダーがマシンをコントロールしなきゃならないんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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私は割とエンブレに頼る派でしたね。コーナー進入で駆動が切れるのって怖かったので…。

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MotoGPのウィリー制御はどのように機能しているのか

前回に引き続きMat Oxley氏による電子制御解説。今回はウィリー制御です。Motor Sport Magazineより。
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MotoGPにおけるライダー支援システム解説の2回目はウィリー制御についてだ。260馬力を股の下で扱うには必須のアイテムである。

2016年シーズン、MotoGPでこれほどまでにウイングが重要になったのかその理由をご存じだろうか?ドルナが供給する統一ソフトウェアにおいてはウィリー制御プログラムが最も弱い部分だったからだ。それでウイングでダウンフォースを稼いで加速中にフロントホイールが浮かないようにしたのである。

MotoGPマシンのトルクはとんでもないレベルで(エンジニアはいつもトルクの話ばかりで馬力の話はほとんどしない)、何速だろうがフロントホイールが持ち上がるほどだ。そしてホイールが上がりすぎればライダーはスロットルを戻すはめになる。つまり加速が鈍るということだ。2016年になるまではワークスが自分たちのために電子制御によるウィリー制御を作っていたが、これは最先端をいっていたものだ。このプログラムはフロントホイールが浮く前にウィリー制御を発動させるのである。フロントサスのストロークの加速度を検知するセンサーに基づきからウィリーを予測するようなものだったのだ。電子制御ユニットにスロットルボディを1つか2つ閉じるように命令するのだ。ウィリー制御がうまくセッティングれきれば、激しいウィリーを防止するぎりぎりのところでトルクを削ることができ、加速をそれほど犠牲にしないのである。

ドルナはこうした状況を変えたかったのだ。ドルナの統一ソフトウェアの根本にあるのは安全性である。パフォーマンスの向上ではない。トラクションコントロールは安全性に大いに寄与するがウィリー制御についてはそれほどではない。だからこそドルナはウィリー制御を基本的なものに留めているのだ。今やライダーはウィリーとをし過ぎないよう、しかも加速を殺しすぎないようにするために自らのスロットルコントロールに頼らなければならなくなっているというわけだ。

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上図はあるMotoGPライダー(名前はトップシークレットということで我々にはわかない)がヘレスの5コーナー(シト・ポンスコーナー)から立ち上がっていくときのものだ。このコーナーは3速の右コーナーで麦ストレートにつながっている。ここでコースが急激に下っていくためウィリーが大きな問題となる場所でもある。

41秒の所に入っている縦の点線がコーナー出口であり、この時点でライダーはスロットルを全開にし、フロントホイールが浮き始めている。ウィリー制御システムが機能し始める直前である。

のたくった7色の線を理解するために、まずは1~5までふってある数字に注目してほしい。それぞれについて以下に解説しよう。

(1)上から2段目:赤い線はマシンの速度。白い線がフロントホイールで計測した速度。黄色い線がフロントサスの縮み量

マシンは強烈に加速しリアに加重が掛かると共にフロントホイールが浮き始めている。ホイールがアスファルトから離れると回転が減っていくためホイール回転数から計測した速度を表す白い線が実際のマシンの速度である赤い線を下回るようになる。同時にフロントフォークは伸びきって黄色い線は0を表示している。こうした情報が入るとウィリー制御システムはマシンがウィリーに入ったと判断する。この時点でマシンの実際の速度とフロントホイールで計測した速度は30km/h程度になっている。ウィリーが長く続く場合は速度差は100km/h近くまで達することもある。


(2)上から3段目:緑の線はマシンの前後のピッチング量。赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態、つまりマシンが前後にバランスしている状態

マシンがウィリーを始めると後ろ側に傾いていくことになる。ピッチング量とピッチング速度によりウィリー制御システムはウィリーの大きさを把握する。3°程度の傾きであれば通常は問題はないが、急激に3°まで上がるとシステムはウィリーが許容範囲を超えており何らかの介入が必要だと判断する。


(3)最下段:白い線はライダーがスロットル開度に合わせて要求しているトルク。赤い線はウィリー制御システムがウィリー量に合わせて要求しているトルク。緑の線はシステムが削ったトルク

ウィリー制御システムは基本的にトラクションコントロールシステムと同様、リアホイールに伝わるトルクを減らすものである。白い線からはライダーがフロントホイールを浮かしながらも大きくスロットルを開けていることが見て取れる。赤い線は白い線より僅かに下をいっている。これはホイールの速度とフォークの縮み量と前後のピッチング速度のそれぞれのセンサーがウィリー制御システムに対してライダーが要求するよりもトルクを減らすよう要求しているからだ。緑の線がその結果として削られたトルクの量である。

42秒から43秒にかけての3つの山で表示されるトルクの減少は再びフロントホイールが浮いたためである。2段目に表示されるフロントホイールの速度の減少と3段目で表示されるピッチの増加でもそれは明らかだ。

ウィリー制御システムはトラクションコントロールシステムと比べものにならないほどトルクを削るようにできている。これはマシンがそれほど危険な状態ではないからだ。5コーナー立ち上がりではエンジンが200馬力を出しているときにウィリー制御システムが200馬力まるごと削ってしまう場合もあり得るのだ。


(4)上から3段目:赤い線は前後のピッチング速度。点線はピッチング速度0の状態

ピッチング速度がゼロになることは決してないことにも注目したい。これはコース上のマシンは常に細かく前後にピッチングを繰り返しているからだ。


(5)最上段:白い線はマシンのスピード。緑の線はスロットル開度。赤い点線はスロットル開度100%

ライダーはホイールスピンを感じてもウィリーを感じてもスロットルを緩めることになる。つまりタイムをロスするということだ。これは電子制御担当エンジニアがシステムをうまくセッティングできなかったということでもある。そうなると次にライダーがピットに帰ってきたらチームがシステムの制御マップに新しい数字を打ち込みその辺りでのトルクを減らすようにする。そうすればライダーはスロットルを戻さなくて済むのである。


ブラッドリー・スミスがウィリー制御について語る

2015年と比較して一番性能が落ちたのがウィリー制御システムでしょうね。今ではフォークが伸びきったときしか介入しないんです。去年まではウィリー制御のタイミングを前倒しにできたんでフォークが伸びきる前に介入させられたんです。ウィリーになることを予測してくれた。そういう意味では凄く進化したシステムでしたし、おかげでいい感じでフロントを浮かすことができた。今はフォークが伸びきるまで介入しないし、介入するとバタフライを閉じて完全にパワーを切りにかかるんです。そうなると自分でスロットルを戻すことになる。でないとパワーが減り過ぎちゃうんです。で、スロットルを戻すとバタフライが開いてフロントが設置して、ってのの繰り返しですね。だから自分でスロットルをコントロールした方がいいんですよ。

ウィリー制御システムを使いこなすには自分でパワーを制限することですね。例えば3速で60%のトルクくらいから初めて4足入れて75%のトルクを出してって具合にね。そうやってフルパワーの回転数にもっていくんです。

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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へー、ウィリー制御はほぼ1-0で動いてるんですね。まあ細かくコントロールしなくても危険はないということなんでしょう。そりゃスタートたいへんだわ。ってドゥカティみたいにパワフルなマシンはどうやってるんでしょうねえ。

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MotoGPのトラクションコントロールはどのように機能しているのか?

昨年の記事なんですが、なかなか興味深い内容ですので訳出。全4回にわたって電子制御をMat Oxley氏が解説してくれてます。Motor Sport Magazineより。
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現代バイクレースの最大の謎のひとつ:どのようにトラクションコントロールは機能しているのだろうか。MotoGPに電子制御を供給するマニエッティ・マレリ社の協力を得ながら解説していこう。

昨シーズンまではMotoGPにおける電子的ライダー支援システムがどのように機能しているかは謎だった。メーカーがトップシークレット扱いとしていたからだ。しかし2016年からは統一ソフトウェアが導入されたおかげでその状況は一変することとなる。

この夏、私はマニエッティ・マレリのトラックを訪問しMotoGPにおけるトラクションコントロールやウィリー制御、エンジンブレーキ制御、そしてスタート制御がどのように機能しているかを理解するためにいくつかのデータを見せてもらった。マニエッティ・マレリのヴィンチェント・ペチュアン−ヴィラーとマウリツィオ・スリニャーリの二人が快く手伝ってくれたのだが、私は次から次へと素人臭い質問をして何時間も彼らの仕事の邪魔をしたので、その気持ちも消え失せてしまったかもしれない。

マニエッティの次はライダーの視点から見る必要があった。私が選んだのはブラッドリー・スミスだ。彼が英語を話せるというのも理由の一つだが、何より彼は自分の考えを整理して話すことが得意な、しかもそれに時間をかけることを厭わない数少ないライダーだからだ。

今回がこれら数週間にわたって連載する記事の一本目となる。一連の記事で各種のライダー支援システムがどのように機能しているかについて基礎的事項を解説する予定だ。こうした知識があればMotoGPをさらに楽しく観戦できるだろうと願っている。

下のグラフの(クリックで拡大)のたくった7色の線にパニックをおこさないでほしい。図中の数字と記事の数字を参照するだけで、その他のことは今のところ無視して構わない。それだけでも全てを理解できるはずだ。またこの図は実際に2016年のヘレスGPでのアタックラップを行った際のマニエッティ・マレリのデータだが、そのライダーが誰なのか、どのマシンなのかは教えてもらっていない。それはトップシークレットなのだ。

MotoGPの統一ソフトウェアについてまず最初に理解しておかなければならないのは2015年までのワークス電子制御と比べると遥かにローテクなものだということだ。ドルナの計画では電子制御にかかるコストを削減すると共にパフォーマンスを上げる効果も減らしたいのである。

そんなわけで以前と比べてライダーがバイクを操る部分が増えているのだ。スミスはこんな風に説明してくれた。「今では前よりたくさんのことをしなければならないですね。トラクションコントロールを使っていたときよりもスロットルでエンジンを抑えていかなければならなくなってます。統一ソフトウェアになるまでは電子制御の言うとおりにスロットルを開け閉めしてんたんですよ。自分にやらせてよ!って感じでしたね。今はちゃんとリアタイヤとつながっている感じがします。いいことですよ。電子制御ってのは安全のためのもので、そんなにパフォーマンスにかかわっちゃだめなんです」

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Jerez


ではグラフを読み取っていこう。これはヘレスの5コーナー、別名シト・ポンスコーナーだ。下りの中速右コーナーでバックストレッチにつながっている。このグラフの範囲はコースマップの黄色い部分をカバーしており、縦に引かれた点線は3速に入れた直後にやってくる130km/hのクリッピングに位置している。つまりライダーはスロットルを開けつつありホイールスピンが始まっている状態だ。次いで4速、5速とシフトアップし、ストレートを加速している。


(1)セクションA(1段目):緑の線はスロットル開度をパーセントで表示。水平の赤い点線が100%

 このライダーは段階的にスロットルを開けている:ガスをエンジンに送り込みながらリアタイヤのスピンを感じつつゆっくりと2〜10%程度ずつスロットルを開ける。タイヤがグリップを取り戻すとさらにスロットルを開け、再びゆっくりとスロットルを開ける。この繰り返しだ。去年のように進化したワークス製トラクションコントロールであればこのようなことをする必要はなかったのだが、今年はすべて自分でやっている。


(2)セクションB(2段目):赤い線は介入予定のスピン状況。黄色い線は現状のスピン。セクションCの白い線がリーンアングル

マシンがフルバンクから立ち上がっていくあたりではスピンが少なくても電子制御が介入するように設定されている:0〜2%(車体の速度より)速いあたりに設定されているが、これはライダーのパフォーマンスによって異なる。ライダーがマシンをコーナー脱出に向けて加速していくとスピンが多くならないと介入しない設定となってくる。これはリアタイヤもライダーもより多くのスピンに対応できるためである。ほとんどのライダーはコーナー出口でのトラクションコントロールの介入を12〜15%増(リアホイールの回転数が実際の車体の速度から予想されるより多い)あたりに設定している。


(3)セクションB(2段目):赤い線は介入予定のスピン状況。黄色い線は現状のスピン

リアホイールのスピンが一瞬突き出ている部分があるが、ここではライダーが思いきった加速をしてリアタイヤがライダーの想定以上にスピンしている。このような瞬間的変動にトラクションコントロールシステム(TCS)がどのように対応しているかは下記(5)(6)を参照されたい。


(4)セクションC(3段目):白い線はリーンアングル

瞬間的にホイールスピンが大きくなった結果、リーンアングルの回復が止まっているのに注目したい。スライド対応に対応するためにライダーはマシンを起こすのを一瞬だけやめているのだ。


(5)セクションD(4段目):白い線はライダーがスロットル開度に合わせて要求しているトルク。緑の線はTCSがスピンに合わせて供給しているトルク。赤い線はTCSが減らしたトルク

白い線はライダーがスロットルを通じて要求しているトルクであり、これが(3)で述べた瞬間的なスピンの増大を招いている。ここでTCSが緊急的に作動しリアタイヤにかかるトルクを減らしている。緑の線は白い線から赤い線を引いた分で、実際に供給されるトルクとなっている。ここでライダーはスロットルを閉じていないことに注目したい。既にマシンは起きておりTCSが助けてくれるのをわかっているからだ。TCSはいくつかの変数に基づき、スロットルバタフライを閉じる、点火を遅らせる、1つか複数のシリンダーの点火をカットするという3種類の方法の組み合わせでホイールスピンを減少させている。TCSが最も介入するのはリーンアングルが60〜40°の範囲にあるときだ。


(6)セクションD(5段目):白い線は一方のスロットルバタフライ。緑の線はもう一方のスロットルバタフライ

ライダーが4速にシフトアップし2秒後に5速に上げている。回転数はシフトアップに応じて僅かに下がっている。


ブラッドリー・スミスがTCSについて語る

「今年のTCSは去年より基本的な部分に限定されていて、デフォルト設定値や決められてしまっている変数が増えてるんです。ですからTCSをコーナー毎介入度合いを変えるといったピンポイントの設定ができなくなりましたね。例えば去年だったらスロットルの最初の開け始めのところでいろいろできたんです。TCSの介入を5m遅らせることでスロットルを開けた瞬間リアタイヤを軸にマシンを曲げたりできたんですよ。今のTCSではそういう細かい設定ができないんです。スロットル開度30%〜全開という前の段階でTCSがすごく良くできていたんでいろんな問題を解決できてたってことです。今はもし全開にして最大トルクを引き出したりしたら横滑りしてしまう。TCSはやりすぎたときにだけ介入して転倒から救ってくれるんです。だからこのグラフのスロットルの線を見ればわかるようにライダーがトルクを引き出して、タイヤがスピンして、そこでスロットルを保持して、グリップが戻ってきたことを感じたらまたスロットルを開けるとなってるんです。つまり今はライダーがコントロールしていて、自分の技量でやってるんです。だからTCSは主に安全のために機能していて、パフォーマンスのためじゃないんですね」

グラフ作成:ダン・ヒリャール
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スミスって、時々速いけど主に中盤のライダーなんですよ。その彼にして解説の中にあるようなスロットルコントロールをやってるんです。そしてグラフのライダーもものすごい細かい、でも瞬時の反応をしていて、まあ天上の戦いですなあ。

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MotoGP:なぜドゥカティのカウルはルール違反では(たぶん)ないのか?

なりふり構わない感がさいこー!なドゥカティのエアロカウル。これも含めて2017年のカウル規定(変更は1回だけ、外部に付けられたウイングは禁止)について、判定を任されたただ一人であるテクニカル・ディレクターのダニー・アルドリッジ氏へのインタビューです。CRASH.netより。
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カタールテストではドゥカティがこれまでで最も過激な新世代カウルを導入している。外部に取り付けたウイング禁止という規定を受けてのことだ。

MotoGPのテクニカル・ディレクター、ダニー・アルドリッジは新型カウルがOKかどうかを判定するただ一人の人物だ。

「規定上では新型カウルを事前に見せる必要はないんです。カタールGPのときでOKなんですよ」とアルドリッジは以前語っている。「でも各メーカーには事前に見せてくれるように強く推奨してますよ。だってもしカタールで初めて見せてもらって、それを私がルール違反だと判断したらメーカーとしてはたいへんでしょ」

アルドリッジは今回のテストで登場したドゥカティのカウルを事前に見せられてはいなかった。その上彼はMoto2/Moto3公式テストのためにヘレスにいたのでカタールテストも不在だった。というわけでまだ最終的な判断はできない状況だ。しかしこれまでの情報から彼はドゥカティについても「特に問題はない」と考えている。

ドゥカティのカウルについて話してもらう前に2017年の新ルールでは何種類のカウルを使えるのかについてアルドリッジにたずねてみた。

CRASH.net:ダニー、カタールテストではホンダがカウルの横にウイングを内蔵してカウルと面一になるような後付けカバーを導入しました。その後付けカバーがなければ普通のカウルに見えますけど、レースではどちらも使っていいんですか?

ダニー・アルドリッジ:少しだけ時間を巻き戻しましょう。どのメーカーでもヴァレンシアでは2016年型カウルを登録して良かったんです。ウイング無しですけどね。その場合はGP用に装着されたウイングを除いて完全に同じものでないといけません。このルールはKTMには適用されません。新規加入メーカーなので2017年中のカウルの改良は制限なくできるんです。
 カタールでは木曜午後5時にテクニカル・コントロールが締め切られます。それまでに全メーカーは2017年型カウルを登録しなければなりません。メインのカウルとフロントフェンダーですね。
 フロントフェンダーは一体成形となりますがメインカウルはすきなだけ細かいパーツで構成することができます。ルールではカウルからパーツをはずすのは可能なので、一旦カウルを登録しても、そこからパーツをはずしたり、はずしたパーツを装着したりは自由なんです。

MotoGP技術規定:「登録した空力カウルから一部をはずすことは可能とする(例:雨天専用のハンドガード等)…その他の部品も空力カウルからはずすことが可能である(例:トリム、穴開け等)。この場合再登録は不要である。ただし新たなパーツの装着は禁止する。

 つまり2017年型カウルを取り外し可能なパーツ込みで構成していれば状況に応じて装着するかどうか決めることができるんです。同じことがハンドガード等の通常のパーツにも適用されます。
 例えばホンダがカタールでテストした中にウイングが入っている新型空力パーツはカウルの両側にボルト留めされてますよね。あれは簡単にはずせそうに見えます。


CRASH.net:ここまで導入された5種類のウイング内蔵カウルですけど、ホンダ以外に「後付け」で外せるものはありますか?スズキとヤマハはどうでしょう?

ダニー・アルドリッジ:私が見る限りですし、カタールの木曜午後5時まではどのカウルにするか決める必要がないのでまだ変更はあるという前提ですけど、ヤマハのカウルは一体に見えますね。ウイングが入ってる部分をはずせるとは思えないです。でも内側のウイングの形状も数も好きに変更できるんです。私が関与するのは外形だけですから。
 スズキについてはあの部分をどうやって取り付けているかによりますね。もし一体成形ならはずせない。カタールでは各メーカーにカウルのサンプルか設計図を提出してもらうことになります。それと写真も撮ることになります。
 なのでもし私がヤマハやスズキのピットに行って、カウルがカーボンファイバーの一体成形であることを確認したら、後からカウルにジョイントをつけて外せるようにしてもだめです。外形が全く同じでもね。カタールの段階で接着されている場合でも同じです。それをボルトオンにするのは無しです。
 カタールで「このパーツははずせる、こちらははずせない」となったら、そのままそれでシーズンを通してもらうことになりますね。


CRASH.net:来週木曜までは何も公式には決まってないということはさておき、現時点でどのメーカーのカウルがレギュレーションにあってるんでしょうか?

ダニー・アルドリッジ:ヤマハはもう確認しましたしスズキも確認済みです…、残念ながらMoto2、Moto3の最初のテストがヘレスであってそれがカタールのMotoGPテストと重なっちゃったんですよ。各クラスの初テストには行くようにしてるんです。そこでチームがいろいろ質問してくるんでね。
 ドゥカティのカウルはカタールが初めてだったんでまだ確認していません。以降ドゥカティとは連絡を取っていますし、先方も詳細を送ってくれてます。でもまだ公式にはOKを出していません。ここまで見てきたところは問題があるとは思いませんけどね。マイク・ウェッブ(レースディレクターで元テクニカル・ディレクター)にもカタールで確認してもらうよう頼んでありましたし。かなり話し合いは重ねているんです。
 今のところの私の認識ですが、ドゥカティのカウルを切り欠き部分も含めて見ても単に大きな膨らんだカウルにしか見えませんね。上側がかなり外側に膨らんでますけどまあカウルというのは手をカバーするために上の方で膨らんでるものですしね。単に普通より四角いってだけです。
 ですからドゥカティについても心配していません。問題はないと思ってますよ。そうはいってもかなり設計を変えてきましたね。ヤマハみたいにウイングを内蔵できなかったんですね。ことによったらホンダのように空力パーツを必要に応じて付けたりはずしたりするのかもしれません。ドゥカティのカウルは一体成形っぽいですけど。


CRASH.net:一般論として新型カウルについて判断する場合は、空隙とかは無視して面一の表面として見るんですか?

ダニー・アルドリッジ:ええ、ルールの文言でも「スクリーンを除く外形」についてしか判断しないことになっていますから。ですからテクニカル・ディレクターとしてはダクトや穴については制限できないわけです。ドゥカティのカウルの写真を見ても、黒いマジックでダクトを塗っちゃえば全然普通に見えますよね。私はそういう感じで確認してるんです。

MotoGP技術規定:「スクリーンを除く外形のみが本規定の対象となる。よって以下のパーツについては空力カウルの一部には含まれない:スクリーン、冷却用ダクト、カウルサポート、その他外形に覆われているすべてのパーツ」

CRASH.net:カタールでは2017年型カウルを使わないサテライトライダーもいるんですか?

ダニー・アルドリッジ:一番台数を出しているんでドゥカティを例に挙げますけど、2017年型カウルをワークスと例えばプラマック用に登録することもできます。その他のサテライトは2016年型カウルで開幕戦を戦って、カタール以降2017年型カウルを使うのであればそれは改良版と見なされることになります。2017年型を最初使っていなくてもね。
 ワークスチームについてはカタールでは2016年型と2017年型を出すんだと思っています。理論的にはメーカー毎ではなくライダー毎に判断するものなので、2017年型もペドロサ用とマルケス用とクラッチロー用に別のものを登録することも可能ですけど、まあ私はそんなことになるとは思っていませんね。


CRASH.net:ありがとう、ダニー。

以上のことを心にとどめつつ、シーズン途中で改良版カウルを導入したら各メーカーは(2016年型カウルを使わないことを前提とすれば)2017年型を2種類使うことができるのだが、その後はどんなことになるだろうか?

おそらくチームはドゥカティ風のダウンフォースが大きいカウルに移行していくことになるだろう。それまでは空力パーツをはずすことができるがダウンフォースが少ないホンダ/スズキ/ヤマハタイプを使うことになりそうだ。
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なかなか興味深いですね。いやぁ、へんなカウルがたくさん登場すると楽しいなあ。

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マイク・ウェッブ:ライダーからMotoGPレースディレクターへ

いろんなところでインタビューを受けているマイク・ウェッブ氏。レースディレクターってのはレースの運営に全責任を持っている人で、誰かにペナルティを科すとかってあたりはともかく、レースの中止まで責任を持っているわけで、つまりは世界中に中継されるテレビ放映のスポンサー料やら視聴者やら、現場の観客への払い戻しの保証やらにも全責任を持ななければならないような、とんでもなく痺れる仕事をしている人なのです。おそらく1レースあたり何億だか何十億円だかをどぶに捨てるかどうかの判断を任されている人ということ。そんな彼にCRASH.netがインタビューしています。
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どんな風にしてレースディレクターになったんですか?

2012年からその職に就いているマイク・ウェッブの場合は、まずニュージーランドでのレーサー時代から始まる。GPにはワイルドカードで参戦し、WCM時代にはウェイン・レイニーのヤマハチームのために働き、1シーズンをワールドスーパーバイクで過ごした後、GPで10年間テクニカルディレクターを勤めている。

CRASH.net:モータースポーツにかかわるようになったのはどうしてなんでしょうか?そしてどうやって今の仕事に就いたんでしょうか?

マイク・ウェッブ:30年前のことですが、ニュージーランドの国内クラブレースが最初ですね。あっちこっちで爆音をとどろかせて楽しかったですよ!あとバイク屋もやってましたね。
 ニュージーランドの国内チャンピオンを2回獲ってます。GP250クラスでチャンピオンになった年はバイクが壊れて1レースを落としただけで後は全部優勝しました。だから思ったんです。「おお、俺うまくやれるじゃん!」ってね。それで1989年のオーストラリアGPにワイルドカードで参戦したんです。フィリップアイランドは初めてでした。マシンはスタンダードの250でね…。だんとつでビリでしたよ!残り2周というところでマシンが壊れちゃったんです!
 そのころがもう終わりかけだったんですね。もういい年でしたし。でもまだすごく楽しめてはいたんです。だから「このまま続けていけるよな、まだいい走りができてるんだし」とも思ってたんです。でもわかったんですよ。ニュージーランドの国内レベルと世界GPでは月とすっぽんくらい違うってね。
 ワイルドカードで参戦できたのはすごく良い経験でしたけど、年齢のこともあったし、そもそも25歳まではバイクにのめり込んでいたわけじゃなかったし、当時もう35歳近かったしで、特に誘いもなかったので辞めることにしたんです。
 まあ今でもそう思ってるんですけど、大好きなレースでいい時代を過ごすことができて、でもその歳で世界チャンピオンになれるわけがなかった。だからレースから離れることにしたんです。
 で、1992年にピーター・クリフォードがチームを作ったんです。ドルナがGPを運営した最初の年ですね。ドルナが運営を始めるとすぐにレーシングチームの運営ができるようになったんです。商業的な意味でね。それまではとてもそんなことはできなかったんですよ。
 だからドルナが運営を始めてピーター・クリフォードとボブ・マクラーレンがWCMを立ち上げて、その時、ニュージーランドのレースのオフシーズンに僕は引退を決めた。
 最後のレースを終えて家に帰る途中でピーター・クリフォードに会いに行って言ったんです。「こんちは」ってね。お茶を飲みながら彼が「レースチームを始めるんだよ!ヨーロッパに来て手伝ってよ!」って。それで即座に「いいよ!」って答えたんです。
 そうやってヤマハの500ccチームのチーフメカを10年やったってわけなんです。


CRASH.net:すぐにチーフメカになったんですか?

マイク・ウェッブ:ええ。まあメカニックも2人しかいなかったんですけどね。だからあらゆる仕事を一緒にやっていたんです。でも誰かが僕にクリップボードを持つように言ったんですよ!(訳注:こういうやつを持ってるとチーフメカっぽく見えるってことかしらん?)プライベートチームではずいぶん楽しみましたね。
 2年ほどピーターとボブのWCMで過ごした後はスーパーバイクをやってました。親友のサイモン・クラファーがカワサキのワークスに入ったんです。「マイク、お願いだから助けに来てよ」って言ってもらったんです。だから1年だけ手伝ってすぐにGPに戻って、幸運なことにウェイン・レイニーのチームと契約できました。
 ウェインは怪我から立ち直ってヤマハのチームを運営していた。その最初からチーム・レイニーに加入して500ccの最後の年までつきあいました、ワークス・ヤマハのチーフメカもやったんです。


CRASH.net:ヤマハの時のライダーは誰だったんですか?

マイク・ウェッブ:ウェインのチームに入った時は阿部ノリックですね。その後ウェインがチームをヤマハに売り渡して地元に帰ってからはマルボロ・ヤマハになってヤマハの本社が運営するようになって、そこからはカルロス・チェカでした。だからワークスチームでは2人のライダーと働いたことになります。


CRASH.net:阿部、チェカ、レイニーとはどんな思い出がありますか?

マイク・ウェッブ:最初はウェインから始めましょうか。彼みたいな人と一緒にやれるのは本当に誇らしかったですね。伝説的なライダーで3度もチャンピオンになっていて知識もスキルもすごかってだけじゃなくて、本当にいい人でユーモアのセンスも凄かったんですよ。
 彼みたいな人がピットにいるとほんとにライダーの助けになるし、チームのみんなも気持ちが上向きになるんです。チームスピリットも素晴らしかったですよ。まだ彼とはやりとりしていますよ。彼は米国の国内選手権のモトアメリカを運営しているんです。相変わらずレースへの情熱を失っていないし、あらゆることをちゃんとこなそうとしていますね。
 ノリックはたぶん私が会ったバイクレーサーの中でいちばんいい人ですね。ほんとうにいい奴でしたよ。才能も信じられないほどだったんです。文字通り天才でしたよ、信じられないほどでした。でもいらいらすることもありましたね。すごい天才だってのにマシンを気持ち良く乗りこなせないこともよくありましたから。
 カルロスもやっぱりとんでもなくいい人でした。でも闘士の表情を見せることもあった。謂わば闘牛士ですね。トレーニングもハードにやってましたし、レースにも真剣に取り組んでいた。クラッシュしたくらいでアクセルを緩めることはなかった。マシンもうまく乗りこなしていたしコンディションが悪いときはいつでも最速ライダーの一人だった。ハーフウェットの難しいコンディションとかね。自分の才能を存分に引き出して自信を持って走っていたんです。
 彼が満足するマシンを作るのはたいへんでしたよ。でもいつでも彼は100%で走っていました。すべてがぴたりとはまったら最高でしたね。


CRASH.net:ヤマハを離れてからは?

マイク・ウェッブ:2002年に500ccがMotoGPになってヤマハのスタッフがかなり入れ替わったんです。マシンも新しくなったし何もかも変わったんです。それでヤマハが新しい一歩を踏みだしたと感じてたんです。そんな時にジャック・フィンドレイがテクニカル・ディレクターを辞めたんで、その後釜に納まりました。
 テクニカルディレクターを10年やって、そしてポール・バトラーがレース・ディレクターを辞めるときに、「次はマイク、君がレース・ディレクターだ」って言ったんですよ。


CRASH.net:これまでの経験やレーサーと魂が今の仕事に役立ってると思いますか?

マイク・ウェッブ:すごく役立ってますね。コースでライダーがどんな気持ちでいるかとか何をしようとしているかとか想像できますからね。でも私がレースをやっていたのは凄く昔なんでレース・コントロールではMotoGPのライディングについてロリス・カピロッシにかなり頼ってます。「あのライダーがこんなことをして次はこうやって」みたいなのが、わざとなのかそれとも自然な反応なのかとかですね。私にも考えはありますけど、ロリスがこう言うこともあるんです。「違うね、あの場所にいたらスロットルを戻さなきゃならないんだよ」って感じでね。
 実際に起こっていることに関してはロリスの詳細な解説が凄く助かっています。でもまあコースで起こっていることを大まかに把握したりレーサーが何をしようとしているのかについていは自分も経験してますからね。それにいろんなチームでの経験も役立ってます。運営側ではなかったですけど、パドックのほとんどの人と知り合いになれましたからね。
 みんな僕のことを知ってるし、僕もみんなのことを知ってる。お互いに尊敬し合っていて、それでかなり助かってるんです。


CRASH.net:チームがどんな情報を必要としているかわかってるんですね。で、チームがそれを必要としてる場合は…

マイク・ウェッブ:その通りです。チーフメカとしていつも思ってましたから。「レースコントロールのバカ共たちは何を考えてるんだ!」ってね。だから起こっていることについてはとにかく明解に、そしてきちんと説明できるようにしてるんです。例えばレースを中断させてリスタートするような時ですね。


CRASH.net:今でもバイクに乗ることはあるんですか?MotoGPのサーキット間を移動したりとか。

マイク・ウェッブ:うーん、ここんとこほとんど乗れてないですねぇ。レースはもちろんやってないですけど、たまにオフロードを走ったりしてますよ。僕の原点なんです。アンドラにある自分の家にトライアルバイクを持ってるんですけど、岩登りとか山登りとかができる最高の場所なんです。うちのすぐ近くにいいコースもあるんですよ。あとKTMのアドベンチャーバイクも持ってるんで山道とかヨーロッパ中の田舎道を走ったりもしますね。
 ニュージーランドにいる家族や友達に会いに行くと、友達がいつも夏にはオフロードアドベンチャーツアーを企画してくれるんです。次のシーズンに向けて頭を空っぽにするには最高ですね。実はロードはそれほど走らないんです。でも70年代の日本車を結構持っていて、レストアしてるんです。だからそういうのにも乗ってますよ。そうやってあの頃のマシンがどんなにひどかったか思い出すんです!


CRASH.net:ありがとうマイク。

マイク・ウェッブ:どういたしまして。
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レース愛あってこそ!

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