クラッチロー:ファン・デル・マルクはロッシの代役としては違うんじゃないの?

ロッシが怪我してすぐにMotoMatters.comのDavid Emmett氏に「彼は経験も無いし」とか言われたのに対して「地の果てまでも走ってやんよ!」と返して(それが奏功したかどうかは別として)アラゴンでのMotoGP初レースをゲットしたミハエル・ファン・デル・マルク。しかしクラッチローもヤマハの選択に疑問を呈しています。motorsport.comよりJamie Klein氏の記事です。
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ワールドスーパーバイクのレギュラーライダーであるファン・デル・マルクはモトクロスでのクラッシュで脚を骨折したロッシの代役としてヤマハに指名されてGP最高峰クラスでデビューを飾ることとなった。

オランダ人の彼はスペインでのレースを走るライダーの候補として同じくWSBKを走るアレックス・ロウズ、そして二人のテストライダー、中須賀克行と野左根航汰と並んでヤマハが挙げていた4人のライダーの内の一人だ。

しかしミザノでロッシの代役としてのファン・デル・マルクの資格について疑問を呈したのがクラッチローだ。彼はロウズや中須賀の方が良い選択ではないかと言っているのである。

ロウズは去年テック3ヤマハのブラッドリー・スミスの代役として既にMotoGPを走っている。そして中須賀は2011年以降7回ヤマハでの最高峰クラスでの経験を持っている。

「なんでロウズをまた乗せないのか理解できないですよ。だってもうM1に乗ったことがあるんですよ」とヤマハの選択についてたずねられたクラッチローは答えている。

「中須賀のことも良く知ってますけど、彼はいつもM1に乗ってる。中須賀にするか、じゃなきゃロウズにするかでしょ。だってロウズなら去年はアラゴンでプラクティスを走ってるんですよ。まあ決勝は走ってないですけど。
 でもファン・デル・マルクでしょ?なんでか全くわからないですね…いや、彼がダメだって言ってるんじゃないんです。でも他に二人の良い選択肢があるんですよ。ロウズと中須賀っていうね」

なぜファン・デル・マルクがロウズや中須賀と比べて良い代役ではないと思うのかと重ねて問われた彼はこう答えている。「だってめちゃ速いってわけじゃないでしょ?鈴鹿8耐でもロウズほどは速くなかったんですよ」

ヤマハM1でテストすらしたこともないにもかかわらずファン・デル・マルクはロッシの代役としてアラゴンを走るのが楽しみでしょうがないようだ。こんなチャンスをみすみす見逃すなんてできないと彼は語っている。

「当たり前ですよ。僕にとっては最高のニュースなんです!」そうファン・デル・マルクはWSBKのサイトで語っている。

「夢みたいですよね。そりゃきつい週末になるとは思ってますよ。だってGPマシンなんて乗ったことないですからね。でもラッキーなことに最高のチームに呼んでもらえて、世界最高のマシンで走れるんです。コースのことはわかってるんで、後はマシンについて学ぶだけですね。
 めっちゃ忙しくなってますよ。でもこんなチャンスにノーなんて言えないですよ。ヴァレンティーノの代役を頼まれるなんですごく名誉なことですからね」
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を、いい結果を出してほしいですね!!

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マジック・マルクの綱渡り

もうね、あんな勝ち方をされたら、抜かれたペトルッチだけじゃなくて後ろで見ていたドヴィツィオーゾも「うげっ」ってなるような完璧さ。何がすごいって、ペトルッチを抜くときに全く危なげがなかったことですよ。つまり圧倒的な力の差を見せつけたってことです。「ちょっと無理すれば抜けるから、ちょっと無理してみよう」じゃなくて、間合いを測って測って、そして測りきったところで抜いて、突き放す。完璧すぎる勝ち方でした。そのマルケスについてMat Oxley氏の記事をMotor Sport Magazineより。
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雨に見舞われたサンマリノGPの日曜。83人のライダーが出走し、80回ものクラッシュを数えることになった。いったいマルケスは(優勝したのはさておき)どうやってこんなコンディションの中を走りきることができたのだろうか。

日曜のレースを見ながら私はこんな様子を想像しないわけにはいかなった。マルク・マルケスの頭の中でまるでゴクリ(訳注:「指輪物語」に登場する、かつて人だった何か。映画ではゴラムでした)のようにリスクを冒そうとする彼とリスクを避けようとする(もしそんな要素があればだが)彼が言い争いを繰り広げるのだ。

しかしマルケスの中のリスクを避けようとする小さな人が28周のほとんどを支配することになった。彼は賢明にもホルヘ・ロレンソは先に行かせダニオ・ペトルッチにペースを作らせながら彼の後ろに留まることにしたのだ。その間ずっと彼の中のリスクを冒そうとする野獣は外に出ようともがいていた。

「だしておくれよお!」
「ダメだ!20ポイントの方がゼロよりましだ!」
「だしてくれよぉ、あのしとを追いかけるんだよぉ。25ポイントの方が20ポイントよりいいに決まってるよぉ」

こんな会話がレース中盤までは続いていたはずだ。マルケスには今日タイトルを確定することはできないこと、そして今日タイトルを手放す可能性はあることがよくわかっていたのだ。もしクラッシュすればアラゴンのレースはアンドレア・ドヴィツィオーゾに29ポイント差をつけられた状態で臨むことになる。

にもかかわらずマルケスの中の野獣は解き放たれることになった。それも瞬時に切り替わったのだ。彼の動きを見ればそれは明らかだった。彼のレプソル・ホンダは少しだけ暴れはじめ、ペトルッチのリードもわずかずつだが削り取られていく。マルケスは計算尽くで5ポイントを稼ぐために綱渡りをすることにしたのだ。

チャンピオン候補が直面しなければならない神経をすり減らすような状況である。リスクを冒せばクラッシするかもしれない。リスクを怖れるあまり獲れたはずの何ポイントかを逃すかもしれない。

雨が降ればリスクは大きくなる。そしてミザノではいつも以上にリスクがあった。路面はありえないほど滑りやすく決勝日としては史上最多の80回の転倒を数えている。こんなコンディションでは限界ぎりぎりで、なおかつ限界を超えないよう走るのは実に困難な仕事となる。だからこそ多くのライダーが自分がミスをしたと気付くまもなく転倒していったのだ。

当然マルケスは誰よりも多くの危ない瞬間に見舞われることになった。モンスター級のフロントエンドのスライドに見舞われたのだ。神ならぬ身であれば普通なら転倒するようなスライドだ。少なくともスロットルを緩めてチェッカーフラッグまではツーリングモードに徹することになるはずである。なのになぜマルケスはこうした警告に耳を貸さなかったのだろうか?

いや、彼は耳を貸していたのだ。当たり前だ。しかしやり方が違ったのだ。いつだってマルケスはこんな走り方をするのだ。それがドライだろうがウェットだろうが、それどころかスケートリンクの上でも変わらないだろう。ダートトラックでわずかなグリップを求めて走りまくったそのおかげである。彼にとってはマシンは暴れ回っていて欲しいのだ。そうやって彼はバイクと会話をするのである。マシンが右へ左へと降られるたびにその声が聞こえるのだ。何か大事なことを語ってくれる。たいていは「ここが限界、もうぎりぎりだ」と教えてくれる。しかしだからといって彼がスピードを緩めることはない。それどころか違う角度から試して限界を遠ざけるのである。

ライダーであれば誰でもこうした会話をマシンと交わしている。それこそがバイクに乗るということであり、バイクでレースをするということなのだ。マシンが自分の入力に反応するのを感じ、そしてその反応に対して自分が反応する。マルケスとマシンの間で行われているのも同じことである。ただしレベルは全く違う。使っている言語が違うのではないかというほどのレベルの差である。彼にはマシンの言葉がわかる。そしてそれに対して他のライダーにはとてもできないような速さで反応するのだ。それこそが彼を特別たらしめているのである。

マルケスがGPに参戦して10年になる。しかしいまだに多くの人が、コントロールを超えて暴れるマシンで彼が勝てたのは運が良かったからだと信じているようだ。前戦イギリスGPで誰かがアンドレア・ドヴィツィオーゾに正しくそのことについて尋ねている。どうやって彼はコントロールを失っても大丈夫なのか?

ドヴィツィオーゾはひとつため息をついてからその質問に答えている。間違いなく今更そんなことを説明しなければならないことに驚いていたのだ。「みなさんマルクがコントロールを失ってるっておっしゃいますけど、そうじゃない乗り方をしているのを見たことなんかないでしょ?マルクの強さのひとつがそこなんです。彼は限界を弄ぶことができる。そんなことができるライダーはそんなにはいません。確かに彼は何度も限界を超えてミスを犯しています。でもタイトルもたくさん獲っている。つまり彼は状況をコントロールできてるってことなんですよ。実際マルクは限界を弄ぶのを我慢できないんです。彼にとってはそれが普通のことで、だからこそ限界で遊べるんです」

ミザノでのマルケスはプラクティス、予選、ウォームアップで3回の転倒を喫している。誰よりも多い転倒回数だ。しかし彼はレースには勝った。プラクティスで転倒しなかった多くのライダーが転倒したレースでだ。さて、どちらがより賢いのだろうか?

もちろん転倒は危険である。しかし現代のサーキットと最新のライディングギアのおかげで以前よりかなり危険は減っている。マルケスは自分が何をしているか完璧に理解しているのだ。彼はプラクティスやウォームアップを使って限界を見極め、レースでどこまでやれるか探っているのである。彼のやり方は数字が説明してくれる。ここまでの4年間、85回のMotoGPラウンドで76回転倒しているが、33回の優勝と3度のタイトルを獲得している。そして彼はまだ24歳だ。

ミザノでの勝利は様々な意味で偉大なものだった。非常に困難なコンディションで、失うものも多く、そして最終コーナーでは前後のタイヤが身もだえしていた。ことによったら彼自身にとっても最高の勝利だったのかもしれない。

マルケスも自分がすごいことをやってのけたという自覚はあった。彼は笑ってこう言ったのだ。「ゴールしたとき、ほんとにヘルメットにマイクがなくて良かったですよ」

後から振り返ってみて「あれが鍵だったな」と思うようなことは最終戦までまだいろいろあるだろう。しかし彼がこの日曜に上げた勝利は、今シーズン最高に価値のあるものだったということになってもおかしくはないだろう。
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いやはや、どうなることやら。ますますもてぎが楽しみですね!

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公式リリース>サンマリノGP2017

ホンダヤマハドゥカティ(英語)スズキアプリリア(英語)KTM(英語)

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公式プレビュー>サンマリノGP2017

ヤマハホンダドゥカティ(英語)スズキ(英語)アプリリア(英語)、KTM(未)。

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ロッシ:ダートバイクが牙を剥くとき

エンデューロトレーニング中の事故で腓骨と脛骨を骨折。手術は成功し合併症もないとのことでですが、おそらく残りのヨーロッパラウンド2戦は欠場、うまくいけば日本GPで復帰という感じでしょうか。しかし以前もダートバイクで怪我をしているのに、なぜ懲りないのかについてMat Oxley氏がMotor Sport Magazineに書いてます。
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うむ、これで台無しだ。おそらく史上最も素晴らしいものになるはずだった最高峰クラスのタイトル争いはかなり輝きを減じてしまったのだ。ヴァレンティーノ・ロッシがダートバイクでのトレーニング中の事故でタイトル争いから脱落してしまい、争いは6戦を残して13ポイント差でひしめいているアンドレア・ドヴィツィオーゾ、マルク・マルケス、マーヴェリック・ヴィニャーレスの3人に絞られたことになる。

ロッシの事故は最悪のタイミングと言ってもいい。シルバーストンではほぼ完璧な走りを見せた。17周の間トップを走り、トップから0.7秒遅れでゴールするというこれまでで最高の結果を残したのだ。ミスはひとつもなく、チャンピオン候補とまでは言えないまでもタイトル争いの権利はまだ手放していなかった。ヤマハはシルバーストン前のテストで一つ階段を上ったのだ。そして以来めざましい進歩を見せていた。イギリスGPが終わって私はタイトル争いは2つの理由で左右されるという記事を書いた(訳注:タイトルは「ロッシが戦いの場に戻ってきた」)。マシンのセッティングとライダーの怪我だ。この数日で正しくその二つを目にすることになってしまった。

ロッシはエンデューロマシンでクラッシュを喫し、脛骨と腓骨を骨折してしまった。彼が2010年のミザノで骨折したのと同じ骨だ。どちらの骨も位置がずれてしまった。つまりやや複雑なじょうきょうということだ。とは言え外科医がいつものとおりチタン製のピン、医学用語で言うなら釘(訳注:髄内釘と言われるやつです)できちんとダメージを修復している。脛骨の上端にドリルで穴を開け、そこから脛骨と同じ長さの釘を叩き込み折れた骨を補強するのである。実に賢いことに彼は2010年の骨折の際に入れた釘は既に抜いていた。もしそうでなければ手術はもっと複雑なものになっていただろう。脛骨・腓骨は大きな問題を引き起こすことを思い出してほしい。イアン・ハッチンソンやミック・ドゥーハンをはじめとして多くのライダーがそのことを知っている。

当然多くのファンが驚きのあまり両手を掲げてこう尋ねることになる。なんでロッシはダートバイクに乗ったりするのか。みんなダートバイクで怪我をしてるじゃないか。その視点はもっともだ。すくなくとも一見したところ当然の疑問に思える。なぜMotoGPマシンでレースをするという職務を遂行する能力を危うくするのか?なんで田舎道でバイクを飛ばしてギャップに挑戦したりジャンプを連続して飛んだりするのか?

モトクロスやダートトラックやスーパーモトやミニモトで骨折したことのないMotoGPライダーはおそらく今のグリッドにはみつからないだろう。ロッシは幼い頃からダートバイクに乗っている。MotoGPで走るのと同じようにこれは彼にとっては生きることそのものなのだ。

ロッシにダートバイクに乗るなんて危険なことをするなと頼むのはフィンセント・ファン・ゴッホに酒を控えろと言うようなものである。自分の一部を切り離すことなどできないのだ。もし望ましくない何かを手放せば、本来持っているべきものも去って行くのである。

ロッシは大金持ちになりたちとかタイトルを20回獲りたいとか、そういうことで走っている男ではない。彼は自分が楽しいから走っているのだ。楽しいことだけやる。それ以上でもそれ以下でもない。もし彼がエンデューロバイクを乗り回したければ、彼はそうするだけだ。その先に何が待っているかなんて関係ない。それこそがバイクレーサーに求められるマインドセットなのだ。だからもううるさいことを言うのはおやめなさい。彼に変わるようにお願いするなんて無意味なのだ。
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うむ。

そして、この記事の後のOxley氏のツイートも味わい深いです。

「9度のタイトルを獲得したチャンピオンがどんなトレーニングをすべきかとか、レースの準備はこうすべきだとか、どんな人生を送るべきだとか、スポンサーやファンに申し訳なくないのかとか、いろいろアドバイスをくださった皆さん、どうもありがとうございます」

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MotoGP:ヴィニャーレスとロッシがシルバーストンで使ったのは2018年型プロトタイプ

という記事をSport Riderより。Manuel Pecino氏の記事です。
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レースの現場に魔法など存在しない。驚くような結果の裏にもたいていは技術的な種明かしがあるものだ。たった2週間の間にモヴィスター・ヤマハが驚くべき変貌を遂げたのもそういうことである。レッドブルリングではマーヴェリック・ヴィニャーレスとヴァレンティーノ・ロッシはそれぞれ6位と7位。トップからは7.4秒と8.9秒差だった。そして先週の日曜、彼らは2位と3位、トップからは0.114秒と0.749秒遅れだった。

彼らはこのパフォーマンスの差について何度も質問を受けている。シルバーストンでは予選からとんでもなく戦闘力をみせつけたのだ。これに対してロッシとヴィニャーレスは、オーストリアGPとイギリスGPの間に行われたミザノでのプライベートテストでいい電子制御セッティングが見つかったからだと呪文のように繰り返すだけだった。しかし実際はそれ以上だった。

語られていない要素はヤマハワークスのピットに置かれた2台の新型マシンである。謂わば「2018年用試作マシン」だ。もちろんこれはフレームの話だ(エンジンは今シーズン用に定められた6基から変更は不可である)。このフレームはレッドブルリングでの腹が立つほど悲惨なレースの後に行われたイタリアでのテストに持ち込まれたものだ。新型フレームは明らかに一歩前進したことを証明してみせた。そこで彼らはイギリスGPに導入することにしたのである。

シルバーストンの週末、ロッシとヴィニャーレスはそれぞれが2017年型と新型の比較を行っていた。そして両者共に決勝では新型を使うことにしたのだ。

結果はご覧の通り。マシンはライダーもスタッフも頭を抱えるような2週間前のオーストリアとは全く違うパフォーマンスを発揮した。「凄く気持ち良く乗れました。特に最後の2周くらいは良かったですね」。こう語るのはシルバーストンで優勝したアンドレア・ドヴィツィオーゾの直後でゴールしたヴィニャーレスだ。「シーズン序盤と同じような感じだったんです」

ロッシはまだタイトル争いができるところまではきていないと言う。レース終盤での戦闘力が足りないということだ。しかしデータでは違う結果が出ている。彼がトップを走ることができた最後の周となる17周目、タイムは2分02秒239だった。最後の2周、19周目と20周目はヴィニャーレスより速い2分02秒291と2分02秒を記録している。レース後半では彼のベストタイムである。

ミザノでのパフォーマンスに基づきエンジニアとライダーはこの「試作品」をイギリスに持ち込み、そして素晴らしい結果を得ることができた。当然チームは新型M1がミザノ・マルコ・シモンチェリ・ワールドサーキットで開催されるサンマリノGPで最高のパフォーマンスを発揮することを期待している。行く先を見失っているように見えた時期はもう過ぎた。ヤマハは再びタイトル争いに復帰したのである。
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なんかシルバーストンでのロッシの負け方って、先行逃げ切りを図って失敗というこれまでに無い感じで、精神的にダメージが大きそうって観戦会で話していたんですが、本当のところはどうなんでしょう…。

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ドゥカティのグリップはコンピュータが作り出したのか?

ここんとこいい感じで走れているドゥカティ。ドヴィツィオーゾはイギリスGP終了時点でランキングトップに立ってます。さて、その要因は那辺にあるのか、Mat Oxley氏が解き明かしてます。イギリスGP前の記事ですがどうぞ。Motor Sport Magazineより。
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今週末(訳注:8/23の記事です)シルバーストンは大した雨も降らずに済みそうだ。しかしそれでライダーやチームが日曜に向けてのタイヤ選択に悩まずに済むというわけでは全くない。

今年、タイヤチョイスはこれまでになく勝敗を分けるものとなっている。おかげでミシュラン迷路を抜け出る知恵を得たチームだけが決勝で戦うための力を得ることができるようになってしまった。

その中でも最も成功しているのがドゥカティだ。この6戦で3勝。つまりドゥカティのエンジニアは正しいタイヤを選択し続けているということだ。しかしどうやって?

ドゥカティのレース部門には頭の良い人たちがひしめいている。偉大なるリーダー、ジジ・ダリーニャ、タイトル争いの一角アンドレア・ドヴィツィオーゾ、彼のチーフメカ、アルベルト・ジリブオーラ。彼らはピットの中でも最も明晰なライダー/エンジニアなのである。特にダリーニャは新技術を採用しライバルにこっそり先んじるのに情熱を燃やしている。だからこそドゥカティは空力面でもウイングを初めて効果的に使いこなし、オーリンスの最新型カーボンファイバー製フォークも使い、もし私たちの秘密の情報提供者が正しければマスダンパーまで使っているのだ。

こうした技術は全て改良につながっている。しかし何より重要なのはタイヤなのだ。タイヤはバイクと路面を繋ぐものだ。ライダーのすることはすべて、そしてエンジニアの施すことはすべてタイヤを通して路面に伝えられるのだ。

タイヤメーカーが一社になって以降、さらにタイヤ選択の重要性が増している。タイヤの選択肢が2〜3しかない中できちんとタイヤの力を引き出すチームを負かすのは極めて難しいのだ。

ドゥカティはこの分野で一歩前に出ているようだ。他のチームが正しいタイヤを選び損なって苦労していることもある一方で、ドヴィツィオーゾと彼のチーフメカ、ヴィークルダイナミクス(訳注:バイクの動きを制御する関係全般なので主にサスかな?)担当のリカルド・サヴィン、ソフトウェアエンジニアのガブリエーレ・コンティは間違いなく素晴らしい結果を出しているのだ。しかし彼らの陰にはメガライド社製のタイヤシミュレーションソフトがあるのだ。メガライドはナポリが本社の車両の動的解析を得意とする会社である。

ドゥカティはメガライド社と2年間の独占契約を今年から結んでいる。メガライドがドゥカティに提供するのはリアルタイムシミュレーションに基づきタイヤパフォーマンスを予測する数種類のソフトウェアだ。こうしたソフトウェアはマシンの数百にも及ぶ記録チャネル、計算チャネルからデータを収集するのだ。タイヤ温度からスリップアングルからスリップ率まで収集している。フォーミュラ1では既に同様の技術は使われている。

タイヤ選択にコンピュータの助けが得られるというのは非常に大きなことだ。勝敗はほんの些細なことで決まるのである。MotoGPにおけるタイヤ選択はソフトかミディアムかハードかという簡単な話ではなくなっているのだ。普通なら柔らかいタイヤは低い温度で機能し、硬いタイヤは高い気温で機能するはずだ。しかし賢いミシュランの化学者たちは柔らかくても高温で機能する配合を作りだしたのである。こうしたタイヤを使えば明らかに優位に立つことはできるのだが、しかし使うのには勇気が必要である。

ミシュランは各チームに異なる温度、異なるコンディションでそれぞれのタイヤがどのように機能するかのコンピュータモデルを提供している。そしてチームの仕事はこのモデルを自分たちのマシンのシミュレーションソフトウェアに取り込むことだ。最初に浮かぶ疑問はドゥカティのこれまでの成功にメガライドがどれほど貢献しているかということである。そして次に気になるのは他社も同様のソフトウェアを使っているのかということだ。

ドゥカティもライバルも数時間のプラクティスの間でタイヤについて全てを把握し、決勝用の最適な戦略を見出さなければならない。これは実に複雑な過程となる。誰もがタイヤの温度を気にするが、これは実際にその必要があるからだ。タイヤの層ごとにそれぞれ違う温度となる。そしてそのすべてがタイヤパフォーマンスと保ちに影響するのだ。コースの場所毎に荷重が異なり、そのせいで表面の温度は常に変化する。タイヤの内部の温度はタイヤエンジニアがプローブを差して測定する。そしてさらに深い層の温度はタイヤの柔軟性に影響を及ぼす。

メガライドのソフトウェアはエンジニアが死命を制する数多の要素を検討するのに役立っている。タイヤと路面の接する部分の摩擦に関するマップを作成し、熱による変性と摩耗を区別し、熱伝導とタイヤ全体の熱分布を予測する。

こうした情報の全てがドゥカティの役に立っている。しかし科学に溺れ、その力を過信してしまうというのも良くある話だ。レース技術というのは巨大なジグソーパズルである。メガライドがもたらしたソフトウェアはほぼ間違いなくそのパズルのピースの一つである。しかし他の多くの新たなコンピュータ技術と同様、そのピースがいったいどこにはまるのかはまだ未知数だ。

とは言えドヴィツィオーゾがウッドコート(訳注:シルバーストンの8コーナー)のアスファルトに黒い線を刻みつけるのを見たときに思いだして欲しい。あなたや私がMotoGPで目にするものはテクノロジーという巨大な氷山の一角にすぎないことを。
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かっこいいなあ。ライダーもかっこいいけど技術もかっこいい。これぞモータースポーツの醍醐味!

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公式リリース>イギリスGP2017

ヤマハホンダドゥカティ(英語)スズキ、アプリリア(英語)KTM(英語)

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公式プレビュー>イギリスGP2017

ヤマハホンダドゥカティ(英語)アプリリア(英語)スズキ(英語)、KTM(未)。

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ストーブリーグ表2018(2017.08.20時点)

中上のLCR入りとかいろいろ公式発表を受けて更新しました。
そしてさすがにイアンノーネも残留で確定させたよ…。

Stove_2018_170820_2

「stove_2018_170820.pdf」をダウンロード

「stove_2018_170820.xlsx」をダウンロード


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«MotoGP史上初のホンダとドゥカティによるタイトル争い